保健室の白く硬いベッドに眠る頭のわきで、私のカバンときちんとたたまれていないコートを抱きしめて塩谷がこちたを見ていた。
「大丈夫だよ」
もう平気、と目をつむっていうと、あっそ、と塩谷はいった。
うちの学校は白い。
建ててから何年も経つというけれど、大きな校舎は真新しく、病院を思わせるような白さをもっていて、
きっと今日のように空気が冷たく澄んだ冬の青い空にはよく映えるのではないかと思う。私はいまだに、そんな余裕をもって客観的にこの建物を見たことはないけれど。
自分のことを何の愛着も憎しみも持たずにみれたなら、案外美しくまっとうな人間に思えるのかもしれない。
いつか、そんなときが来ればいい
学校であればタ単純に卒業。、なんかを境にして。
塩谷は中学からの友達だ。小学校も同じだったけれど話したことはなくて、お互いの話をするようになったのは中学も終わりに近づいたころ友達の友達、という感覚で遊ぶようになってからだ。
塩谷はサッカー部だったのに色白で、見た目や女子の視線を気にするほかの部員の中で調和をとりながらも、どこかひょうひょうとして飾らず、少し毛色がちがっていた。聞くとお姉ちゃんと妹がいて、周りが騒ぐほど女子に対して興奮も興味も幻想もわかないらしい。そういうものか、と思うけれど、彼は案外ミーハーで、化粧品のCMにでてくる女優のファンで熱心にドラマを見ているあたり、事実どうなのかはわからない。
ただ、面倒見の良さはさすが女姉妹にかこまれているとあって抜群で、程よい距離感と心遣いが、悩み多き年頃の私にはとてもありがたかった。
こうして、教室にもどるのがおっくうになるころにカバンとコートをもって、理由も聞かず私を起こしに来てくれる。
「帰るか」
「うん。帰るか」
むっくり起き上がって、パンツが見えないようにスカートをおさえながら足を蒲団から引き抜く。
「パンツ、花柄」
「見えてないでしょ、ばか」
「じゃあ、何柄?」
「くま柄」
塩谷がにやにやしながらベッドをしきるカーテンを開けた。ストーブで暖まった部屋に顔を出すこの瞬間はいつもなんだか照れる。
おかえりでーす、という塩谷の声に、机に向かっていた恭子先生が振り向いて、いつものように厭味っぽく笑ってこっちを見ている。
「おかえりですか、お嬢様。よく眠れましたか」
「おかげさまで」
おかげさまで。またお世話になります、と心の中で言って保健室をでた。