久しぶりにドラマのレビューです。

今回ご紹介するのはNetflixのシガレットガール。

インドネシアのドラマシリーズ全5回です。面白かったです。久々にはまったドラマでした。主演の女優さんが凛とした雰囲気で美しいです。あまりドラマの中では笑わないんですが、一回だけ微笑むシーンがあってそれもなかなかかわいいですね。あと着てる服とブローチのコーデがいいです。紺とか濃緑の服につや消しゴールドのブローチで「いい家のお嬢さん」という感じでした。これが後半になると銀のブローチに変わるんですが、こんなところにも境遇の変化が表されています。でも気位だけは保ってるんですよね。

あらすじについてはアチコチに出てますのでここでは省略。知りたい人は検索すればすぐにヒットします。

で、感想ですが、最初は古い女性差別の習慣にしばれられてかなえたい夢を実現できない女性が困難を乗り越えてついに・・・みたいな、ハイハイよくあるフェミニズムドラマね、と思って見てたんですが、実は恋愛ドラマでした。確かに女性差別やそれでも夢に向かってみたいな部分はありますが、それらはすべて味付けみたいなもんです。核になるのは60年代の、ダシアというたばこ製造家内工業の娘(敬称でジェンヤとも呼ばれる)と、たまたま市場で暴漢に襲われていたのをダシアの父に助けられたラジャという流れ者の男のラブストーリーです。それと並行して現代の若者二人がジェンヤとは誰か?今どこにいるのかを探す過程が描かれています。若者の男の方は大手たばこメーカーDRの御曹司で重病の父親が突然「ジェンヤ!」と叫びジェンヤを探してくれと頼まれたことでこの件にかかわります。その手掛かりを求めて訪れたM市のたばこ博物館で「寄贈者」と言うことで現れた若い女医と、主に残された手紙を元に当時の様子を探ります。

この部分がミステリー的要素もあって、毎回明かされる真相についつい次の回を見てしまいます。この女医さん、煙草を毛嫌いしてるんですがドラマの最後にすべてが分かった時、ダシアの作った香りのたばこを吸って涙を流すんですよね。そこが実にいい。

で、このドラマでは煙草の香りが小道具として重要な役目を果たしているんですが、インドネシアのたばこは日本のたばことはちょっと違うようです。煙草にクローブ(丁子)を香料として加えたクレテックと言うものが当時は主流だったそうです。何も加えないものはホワイトシガレットとして別に流通してました。でクレテックの方はのちに道具を使って円筒形に巻くようになりましたが、初期には手で撚(よ)るように巻いたので円錐形になるのが普通だったようです。ドラマの中でもダシアが父親やラジャに自分で巻いたタバコを贈るシーンがありますが、それは円錐形になってました。量産品はおばさんたちが道具を使って円筒形に巻いてます。

これを予備知識として知っておくとダシアが作った香りがいかに画期的だったのか、あるいはその発想自体がいかに斬新だったのか分かると思います。そしてその香りは現在のDRと言う会社に受け継がれ、DR繁栄の礎になっているのですが、それには・・・。と言うことで、そこは見てのお楽しみ。

あと予備知識として知っておいた方がいいのは65年のクーデターとかその後の共産党狩りとかもストーリーに大きくかかわってきます。ラジャもダシアの婚約者から元は季節労働者だったことが指摘されますが、そんなことから共産主義者と縁ができたのかもしれません。事業発展のためとはいえ組んだ相手が悪かったんですね。

余談ですが。原題のGadis Kretekはクレテックの少女と言う意味で英語訳すればcigarette girlですが、前述したようにクレテックはいわゆるシガレットとはちょっと違いうものです。

あと最後に雑感ですが、ストーリー上では共産主義者のリストにダシアの父の名前を乗せたのは商売上のライバルのソエという男と言うことになってます。しかし結果としてソエの娘のプルワンティがラジャに片思いだったのが結ばれたわけです。もしかしてすべての黒幕はプルワンティ?・・・ってことはないですよね。だとしたらこの女、かわいい顔して相当闇が深い・・・。しかも、ドラマではダシアと婚約者の男とラジャの三角関係に焦点を当てつつも、実はもう一つ目立たない三角関係がほのめかされています。それがラジャをめぐるダシアとプルワンティの関係。ダシアを貶めればラジャは私の物、そう考えたとしたら?考えすぎですかね。