8月22日18:30開演
東京文化会館
昨日行ってきました。大変良かったです。当初のお目当てはルグリとゲラン、ヌニェスとムンタギロフ、スミルノワとチュージンでしたが、実際に見ると新しい発見もありました。
まず最初の「海賊」のオダリスクで急遽出演が決まった芝本梨花子さん。彼女、よかったぁ。
技術的に細かいところは分かりませんが彼女の踊りは何か一味違うんですよ。日本人らしいといえばそうなんですが、決して身長が高いわけでもなく指が長いわけでもなく(むしろ短いくらい)一緒に踊った外人ダンサーと比べると少し子供体型にも見えるんですが、そこをむしろ個性として取り込んでいるかのような踊りで、やわらかいやさしい感じ。角の取れた丸い踊りは見ていて心地よかったです。こういう人が海外で活躍していることは、同じ日本人としてうれしいです。
あと"I have been kissed by you..."を踊ったマルティンとバナ。マルティンはスペインの人らしいですが、ゆっくりとした動きとポーズ、それに迫力のある顔の表情でストーリーを語っていました。バナの踊りもどこか前衛的な雰囲気があり、二人のかもし出す独特の世界観は見ごたえがありました。この二人の"Medea"もすごかったです。何か激しい感情のようなものが伝わってきて、それが愛なのか憎しみなのか、結局そのふたつはベクトルの方向が違うだけで本質的には同じものかもしれない、そんなことを表現しているんでしょうか。しかもそのベクトルは意外と簡単に変わったりするんですよね。
次の"...Inside the Labirynce of Solitude"を踊ったウィックも良かったです。ちょっと尺が長い上に伴奏の音楽が同じメロデイーの繰り返しなので、少し中だるみする感じもありましたが、踊りはいかにも迷宮の中でもがき苦しんでいる様子が出ていて、人生の苦悩のようなものを表現しているように見えました。この音楽、どこかでよく聴いたような気がするんですが思い出せない・・・。
おなじみのダンサーたちも期待を裏切ることはありませんでした。ヌニェスもムンタギロフもさすがという踊りでしたし。スミルノワとチュージンはジャンプやスピンで拍手喝采でした。
そしてやはりルグリとゲランですよ。この二人の「フェアウェル・ワルツ」はプログラムにもそんなことが書いてありましたが、この歳だから表現できるものがあるんだなと思わせるものがありました。多分若い時の二人の踊りも良かったと思うんですが、今の年齢で踊るとストーリー上の二人の関係の濃密さが伝わってくるようです。実際ふたりには長い歴史がありますからね。その上でタイトルのフェアウェルの意味を考えると感慨深いものがあります。若い時の別れはまだ人生の一過程で、そこからやり直しができますが、年取るともうほんとにお別れなんですよね。いろんな意味で。
そしてフィナーレがルグリの"Momennto"です。熟達したダンサーの真骨頂を見た感じです。時に激しく、時にゆっくりと間を取って踊るルグリには神々しささえ感じます。特にこの演目ではピアノが「伴奏」ではなく、パフォーマンスのパートナーになっているようです。ダンサーとピアノ、あるいはピアニストとの掛け合いが演目の特徴のひとつかもしれません。
全体の印象としてはコンテは感情表現、クラシックは高い技術が見せ場というところでしょうか?新しい発見も数多くあり、さすがルグリが選抜しただけはあるなぁと思いました。
次はBプロ見てきます。