自分用の覚書なので

勝手なことを書きます。

ネタバレあり。





3時間ひたすら

車の運転と、

多言語による難解なチェーホフ劇と、

合間に挟まる告白のような台詞と、

それらの繰り返し。

でも、全然飽きません。


無駄のない3時間。

凄い。




久しぶりに見たちゃんとした映画。

要素がたくさんあって、

あれはこれを象徴してるとか

これとこれが関連してるとか

この演出の意図がとか

いくらでも語って、きっともっと

理解が深まる…


あ、こういうところが

「細かすぎて伝わらないかも

知れない」ってこと?


カンヌっぽい。





好きなところ。


演劇主催側の、女性の棒読みと

男性の優しげな韓国訛り。


車の中でタバコを吸うところ。

タバコを持って車の屋根に

差し上げられた2つの手。


タバコはラスト近くにも使われる。

意味がある喫煙設定だったんだ…。


全くの無音で

白い雪の中を赤い車が

真横に走るところ。

このままずっと走っていてと

思いました。


韓国女優の手話の雄弁さ。

優しい優しいソーニャだった。

解釈的には優しすぎるくらい。


この人の出たところは全部良かった。

同様に台湾女優の出るところも

緊張感があって良かった。

ふたりともとても綺麗です。


車の中で妻のことを語るときの

間男(岡田将生)の眼。

動かない眼だけの演技。


静かで落ち着いて考えられる場所、

と聞かれて、コンコンと

車を叩いてみせる彼女。


ドライブ映画(?)なのに

車窓の景色は意外と重要では無い

ように思う。


夜のフェリーの荒い波。

雪の中の街の遠景。

瀬戸内の宿から見る海も、

もちろん良い。

これ全部、車の風景じゃなくて

西島秀俊の背景だ。


赤い車を見せるために

景色にあまり色が無いの?



広島の風景を見せるのに

平和公園でも原爆ドームでも無くて

その2つを繋ぐ道を塞ぐことなく

海へと開く場所(近代的なゴミ処理場)

なのは良い。

広島なのに、原爆を無視するのも

ありきたりに映すのもつまらないから。





主要な役の三人は…


西島秀俊は凄く魅力的な人だと思う。

だから、好きな俳優だけど

演技的にはどうだろう?

この主役には合ってるけど、

ワーニャ伯父さんのとき

それで良いの?感がちょっとある…。

あの演劇のラストシーンはとても

重要なので…。

ほんのり微笑んでなかった?

苦笑なのかな。それで良いのか?

よく分からないな。

私はワーニャ伯父さんを読んだことは

あるけど、観たことは無いので。


ワーニャ伯父さんの劇も

観たくなっちゃった。

私の解釈(大昔の記憶)の方が

間違ってるかも知れないし。


西島秀俊は

いつもとても良い人に見えるので

主人公が間男を主役にしたとき

別の人なら何か企んでいるのか、と

疑いながら観るけど

この人、本当に良い人だからなと

思ってしまう。

その通り、間男を手助けしたりして。


で、逆に絡まれたりして。

叱って、叱って。

いや、叱らないよ。って感じ。


で、結局、間男は自滅する。





妻役の霧島れいかも

とっても綺麗な人だけど、

この人はそんなに好きじゃない。

肝心の声(重要なファクター)も嫌。

顔も声もどこか無駄に力が

入ってるような(勝手なことを)…。

そこまで綺麗じゃなくても

もっと魅力のある人がいそう…。

私の好みなので

映画の出来とは関係無いけど。




評判の良い三浦透子。

(田畑智子に似てる)

確かに雰囲気はある。

彼女が、というか

彼女の後半の長台詞のいくつかに

違和感があったけど、

(何で今、そんなこと言い出した?)

ぶっきらぼうで、無口な

ところは良かった。


彼女の長台詞は全部が嫌なのでは

なくて


愛し合っていた妻の中に

自分には理解出来ない

ドロドロした暗い渦が…という

夫に対して


裏も表も無い。

奥さんはそういう人だった。

あなたを本当に愛していたし

同時に他の男性たちを求めてもいた。

そんな人だったと丸ごと彼女を

受け入れられないか(うろ覚え)


みたいな台詞は刺さりました。


あ、そうか。

それで、多言語演劇だったのか…。

人は皆、他人に理解出来ない存在で

ありながら、同じ場所で話を

紡いでいくという…。

理解できないまま、丸ごと受け入れて

いくしかないんだ。


岡田将生の

「出来るのは自分を見つめることだけ」

という台詞も

そういう意図の上だと思うけど

でもそっちは、お前が言うな感が

先にきちゃった。


岡田将生は悪くないです。





好きじゃないところ。


ラブシーンが多くて長いのは

村上春樹だからな。

仕方ないな。

それで表現されてるし。




今の所、覚えているところまで。






結論


とても良い映画。


でも、私は村上春樹より

チェーホフの方が好きみたい。



ラストシーンは…そういうこと?

二人の関係が続いた?

あるいは進展した?


それとも、愛車を彼女に託し

彼女は新しい人生に踏み出した?

韓国慣れてそうだった。

…それは無いか。





追記


エンディングについて


ネットでちょっと見てみたら


彼女が赤い車を譲られて

一人で旅立っているはあり…らしい。


北海道から旅してきた彼女が

広島で留まったのは

車が壊れたから。


主人公に車を譲られて

旅の続きを始めて…韓国まで?


もしそうなら主人公は?

目が悪化したのか、

妻のカセットを聞く時間を

手放したくなったのか、

ただ譲ったのか。


娘と同じ年の彼女は

譲るのに相応しい若さだけど。


それも良いな。


エンドタイトルのドライブマイカーは

今度は彼女のこと?


二人の関係が続いているより

そっちの解釈の方が好き。