時代小説というと、
昔は、司馬遼太郎の歴史物、
山本周五郎の人情物、
数年前テレビや映画でちょっとしたブームだった藤沢周平、
やっぱり池波正太郎、などなどが
ポピュラーなところ?
最近だと山本一力とか。
結構、好きなんですよ。




藤沢周平も読みつくしたかな・・・他にないかな・・・
時代劇といっても、あんまり軽いヒーロー物は嫌だな・・・
というとき、故郷の福岡を舞台にした
「秋月記」を見つけました。


葉室麟の作品を、私はまだ二つしか読んでいません。
「秋月記」と「銀漢の賦」です。


どちらの作品も信念と覚悟を持って、自分の仕事に取組む大人の話です。
そして過酷な人生や権力闘争を生き抜いた挙句、
報われるどころか、憎まれることも恨まれることも。
それでも恐れず、自分の人生を彼らなりに全うする人間たちが、数多く出てきます。
それは主人公の側にも、悪役の側にも、です。
黒としか見えていなかったものと、真っ白と思っていたものとの差の
ほんのわずかなこと。


作家は作品世界の神様ですから、この作者の物の見方が
実社会でも正しい、などということはもちろん言えませんが、
こんな風に人間を見る作家、人生を描く作家を、私はとても好ましく思いました。



構成も複雑で面白いです。
「銀漢の賦」は松本清張賞をとっただけあって、
ミステリアスな展開です。
現在から過去を少しづつ振り返りながら、
さらに現在の事件も進行していきます。
過去への興味(○○は何故死んだのか、というような)をちりばめて読み手を引きつけ、
答えを示しては、すぐまた次の謎なり期待なりを投げかけていく、という風です。
一気に読んでしまいました。

昨年、直木賞をとった「蜩の記」もまだ読んでいませんし、
これからしばらくは駅の本屋で何を買うか、悩まずにすみそうです。
そう、私は本を持たずに乗り物に乗らない人間なんです。