劇団の稽古に出向いた。
演出家虎本くんが、わざわざ稽古場の地図を送ってくれたにも関わらず、駅からおそらくこっちだろうという道を進んだ。
その結果、
道に迷った。
降りしきる紫外線と激しい市街戦を繰り広げながら、先の見えない旅に疲れたオレは、とうとう自力での稽古場捜索を諦め、孫らしきちびっことキャッチボールしていた初老の男性に声をかけた。
虫でも採りにきたかのような半パンにサンダル姿で、ナイアガラの滝のように汗をかきながら道をたずねてきたオレをみた老人は、これはただ事ではないと悟ったらしく、すこぶる丁寧に道を教えてくれた。
(老)「そこを左に曲がって、まーーーーーっすぐ行かれると、酒屋があります!」
(P)(ふむふむ)
(老)「そこをですね、さらにまーーーーーっすぐ行かれて…」
(P)(酒屋関係ないやんけ)
(老)「今度はおーーーーーきな十字路があります!ちょうど道がクロスした形の道路です!」
(P)(それを十字路言うんや)
(老)「そこをですね、左にまーーーーーっすぐいかれると…」
(P)(ふむふむ)
(老)「おーーーーーきな神社があります!!」
(P)(ほんでほんで)
(老)「その正面です!!」
(P)「ありがとう!老人!この恩は一生忘れねえ!」
老人のお陰で息を吹き替えしたオレは、言われた通りにまーーーーーっすぐオレ進んだ。
しかし、酒屋らしきものは待てど暮らせど現れない。
ちっさい十字路はたくさんあるが、おっきな十字路はない。
「えっ…まだまっすぐ行くんかよ…遠すぎる…」
すまぬ老人、あなたを疑ってる訳ではないが、これ以上の直進は危険と判断した。
一瞬で心が折れたオレは、最悪タクでも拾うつもりで、目の前の普通の交差点を左に曲がった。
すると…
すぐ左手に中くらいの神社があり、その向かいに見事に稽古場があった。
丁寧な説明はありがたいが、老人よ、説明に気持ち入りすぎ。
あのまままっすぐ歩いたら、やがてオレは京都まで辿り着いただろう。
でもなんやかんやであなたのお陰で無事着きました。
ありがとうございました。