家庭を顧みなかった元校長の老人と、母親の虐待で傷つく5才の少女の物語です。あるきっ

かけから、老人はかつて家族と旅した場所を目指して、少女と「青い空と、わた飴みたいな

雲と、白い鳥」を求めて旅立ちます。老人にとっては家族への懺悔の旅であり、少女にとっ

ては虐待の傷を癒す旅でもありました。

 心を閉ざしていた少女が、旅の宿で老人の布団にもぐり込んで訊ねます。「おじいちゃん、

サチのこと好き」 老人は嗚咽で言葉にすることができません。少女が初めて心を開いた瞬間

であり、老人が過去の重荷から開放された瞬間だったのです。

 旅を終え、老人は少女を誘拐した罪で服役します。刑を終えた老人を待っていたのは、少女

でもなく、どこまでも、どこまでも長く続く道でした。エンドロールに流れる「UA」の歌声が、

ピュアになった心に響いてきます。

 少女は映画の冒頭から終わりまで、天使の羽根をつけています。それは傷ついた羽根を持った、

私たち一人一人を象徴しているのかもしれません。