ロックバンド・安全地帯が約6年ぶりに音楽活動を再開しました。3月にシングル「蒼いバラ/ワインレッドの心(2010ヴァージョン)」を発売、5月にはテレビ主題歌に決まった「オレンジ/恋の予感(2010ヴァージョン)」を発表する予定です。

 昔はよくカラオケで「恋の予感」とか「ワインレッドの心」を歌ったものです。私と同じ50代のメンバーが、どんな楽曲を提供してくれるのか楽しみにしています。年を重ねたせいか、最近はアップテンポな曲よりも、「あの頃へ」「Friend」のようなバラードを聴く方が多くなりました。

 玉置浩二の哀愁を帯びた歌声、そして歌唱力に魅了された私ですが、休止期間中にメディアで取り上げられたゴシップで、彼の別の人間性を知りました。特に驚いたのは、女優へのDV(家庭内暴力)です。人に勇気や希望、癒しを与えてくれる音楽と、作り手の人間性は一致しないのでしょうか?

 最近、映画「アマデウス」を観ました。ウィーンの宮廷楽長・サリエリが、モーツァルトの才能に嫉妬して、彼を死に追いやる物語です。映画の中のモーツァルトは、従来の人間像から掛け離れ、浪費癖があり、野卑な性格の持ち主として描かれています。「天上の音楽」と称えられた彼の楽曲と、人間性のギャップを痛感する内容でした。

 若い頃に読んだ、五木寛之の短編「海を見ていたジョニー」も同じテーマを扱っています。ベトナム戦争から帰還したジャズピアニストのジョニーは、「良い演奏は良い人間性から生まれる」と信じています。敵兵を殺した罪悪感から、彼はピアノ演奏に自信を失くしていました。ある日、ピアノを弾く機会があり演奏しますが、彼の信念とは反対に演奏を絶賛されるのです。思いがけない評価に絶望して、ジョニーは自殺してしまいます。

 アーティストはよく「ミューズが舞い降りた」という言葉を使います。作り手の人間性とは関係なく、芸術の女神はインスピレーションを与えてくれるのでしょうか? そう思うと、芸術にたずさわる人々はただの媒介者なのかもしれませんね。ちなみに、音楽(music)はミューズ(Muse)が語源だそうです。