里見の城を歩く④  安房国 稲村城  登城日2014.12.06
 
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  城郭構造    連郭式平山城
  築城主     里見義実
  築城年           文明18年(1486年)
 主な城主       里見義実、義通、義豊
  廃城年           天文2年(1533年)
  遺構              曲輪、堀切、土塁、切通し、虎口、横穴墓、井戸等
  指定文化財     国史跡
 所在地    千葉県館山市稲付
 
 次は滝田城から真っすぐ南下して、稲村城跡を訪ねます。
おそらく、里見の歴史と里見の城の特徴がギッシリ詰まった、今回のツアーのハイライトになる城…と、期待して向かいます。
 
 稲村城は初代の義実が築き、白浜城から移った…と言われ、以後2代:義通、3代:義豊と3代で約50年にわたり里見氏の本拠地でした。
 
 義実から義通の頃の記録が無く、この辺の所はハッキリしないのですが、稲村城を実際に歩いて見ると、時間を掛けて整備した城である事が判るので、築城年も妥当な所でしょう。
 
 天文2年(1533年)稲村城で大事件が勃発します。
3代当主:義豊が叔父の実堯とその腹心の正木通綱を呼んで殺害してしまったのです。
実堯は2代:義通の弟で、義通の戦いに於いては常に先陣を務め、正木氏や岡本氏を配下に組み込めたのも実堯の功績が大きかった様です。
 
 義通が亡くなり、当主に子の義豊が就きますが、安房の国人の人望は実堯に行き、それを面白く思わなかった故の犯行か、或いは実堯自身に下剋上の意志があったのかは定かではありません。
 
 これに反発して実堯の子の義堯が義豊を攻める“天文の内訌”が始まるのですが、結果からして、より多くの国人が義堯に付き、義堯にもその用意が有ったと見るべきでしょうね。
 天文の内訌の集結を以て、稲村城は廃城になったそうです。
 
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駐車場から見る城址
 
  
 
稲村城を歩く
 クルマを転がして、安房に入って少し気になっていましたが、こちらの運転のマナー凄く良いです。
キチンと車間を取って整然と走るし、右折待ちで停まってると殆どの場合譲ってくれます。
 
  東京近郊を走ってると、老若男女を問わず他のドライバーを“自分の権利を侵す奴”みたいにやたら敵視する人に遭いますが、ここでは皆無です。
観光が主要な産業のひとつだから優しいのか?  いや、やはり人柄土地柄なんだと思います。
自分も含め日本中がこうありたいですね。
 
 稲村城も少し難しい城で、国の史跡ながら自治体が“観光地”として積極的にPRしてないから、アプローチから駐車場から遺構の在処まで、参考資料が無いんですよね。
 それでも色んな人のブログ記事を読み漁って、ちゃんと駐車場もある事や決して排他的な土地柄ではない事を知りました。
 
 “安房グリーンライン”という農道を南下して、そのまま内房線の踏切を越えて、稲村城には東からアプローチします。
農道から道の要所に小さいながらも指差しの看板が有って、最初を見落とさなければ楽に駐車場に辿り着けます。
 
 駐車場があるのは『東の水往来』と呼ばれる切通し通路の始点で、道端に広場があり、特に『稲村城駐車場』的な看板は有りませんが、雰囲気でそれと判ります。
ここにクルマを停め、集落に入って行く形で登城します。
 
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最初からこれ!
登り始めの水往来の道 石畳に排水路があり、切通しの壁は…
  
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これ、石垣なんです!
 
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尾根も除草が行き届き、歩きやすく見やすいです
 
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斜面には郭が重なり、果樹園に利用されています
  
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里見の城名物“削崖”
 
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土塁で囲まれた本丸は広さもあり、本拠の城らしさを感じます
 
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横穴墓もありましたが、前の倒木を早く処分して欲しいですね
 
  
 稲村城も尾根筋に広がる城郭で、谷間に郭を段々に構築して根小屋とした城です。 
その根小屋跡の麓には今も多数の民家が城に抱かれるように建ち、郭はみかん畑となって生活しています。
 
 ひと目見て『こりゃ保存管理が難しいだろうな…』と思いましたが、この城が国の史跡になり、保全が事業化されたのは近年の事で、地元の先人の遺産を守ろう!と立ち上がったのは、この住民の方々だったそうです。
住民が里見氏の子孫かどうかはともかく、今に残る遺構をそうした想いで480年の間守って来られたのに違いはありません。
 
 お陰で里見の城の代表的な遺構を綺麗な状態で見せてもらいましたが、やはり古いモノですから構造は脆くとてもデリケートです。
『竹田城の轍は踏まない』 そんな思いで敢えてPRしないのかも知れませんが、これから訪れる人達にも是非そうした事を踏まえて見学して欲しいものです。
 
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眼下に広がるのは豊かな穀倉地帯です