かつて日本全国に「河童(かっぱ)伝説」があった。名前は地方によってさまざまだが、川に棲(す)む童子の姿をした妖怪が、子供たちや馬を深みに引きずり込むというのが基本型である。ときには邪気のない「いたずら者」として登場することもあった。
▼日本の川や池は子供たちにとって楽しい遊び場だ。だが、どこに深みが待つか分からない危険な場所でもある。全国の河童は、そんな子供らに警告を発する役割も担っていた。南九州の「ガラッパどん」など、山にも棲み森の怖さも併せて教えてくれていたという。
▼自然が生み出した「危機管理」術といえる。だがその河童たちも今や観光の「顔」や人気者となり、凄(すご)みを失ってきた。人々の意識から川や山に対する恐れが消えつつある。先日兵庫県のため池で小学生3人が水死するなどした水の事故も、そんな社会が生み出す悲劇のような気がする。
▼事故と政界を一緒くたに論じるのは不謹慎かもしれないが、政治の世界も危険だらけである。深みや落とし穴がいくつも待ちかまえる。過去、そんな危険に気がつかなかったおかげで、自らの政治生命ばかりか国益を損なった政治家は数えきれない。
▼10日たらずで震災復興相のイスを棒に振った松本龍氏にもその危機意識が欠けていた。自らの発言がいかに被災地の人々を傷つけ、震災復興を妨げるかにあまりに無頓着だったからだ。「九州の人間でB型だから」で済むようなことではなかろう。
▼任命者の菅直人首相はもっとひどい。自らの延命のため思いつきの人事ばかりやってきたことで、震災から復興の道はどんどん遠のいてしまった。国民みんなが深みに引きずりこまれる前に、気がついてもらうしかない。
***社説終わり***
河童伝説と言えば、遠野物語でしょうか。
震災復興相の件に関しては、言葉遣いには違和感を感じましたが、「来客を待たせるな」については実は同感しています。
時間に対して少し早く着こうと、来客を待たせることは良いことではないと思います。
国と県の関係性を考えると、ますますそういった『礼儀』も大切だと思うのですが、知事となると感覚が違うのでしょうか。
いずれにしても、方向性がぶれずに、一日も早く被災者の方達に笑顔が戻りますように。