スパコン世界一 技術者の士気を持続させたい(6月23日付・読売社説)
日本の科学技術力を世界に示す、久々に明るいニュースだ。
高速計算機「スーパーコンピューター(スパコン)」の計算速度を競う世界ランキングで、理化学研究所と富士通が共同開発している「京(けい)」が1位となった。
日本勢は、このランキングで2002年から3年連続1位だったが、以降は、米国や中国にトップの座を明け渡していた。
産官学の協力による、7年ぶりの返り咲きは見事だ。
「京」は、総予算1120億円の国家プロジェクトとして06年に開発が始まった。神戸市内で、来年6月の完成を目指している。
名称の「京」は、目標とする毎秒1京回(京は1兆の1万倍)の計算速度にちなむ。今回は毎秒8162兆回を達成し、前回1位で今回2位の中国のスパコンを、3倍以上も上回った。
東日本大震災では、福島、宮城両県内にある中核部品メーカーが被災し、一時は、「京」の開発が大幅に遅れる恐れも出ていた。だが、すぐに立ち直り、日本の製造現場の底力を示した。
自動車や航空機の設計、新薬開発など幅広い分野で利用されているスパコンは、その国の科学技術力を反映する、と言われる。
それだけに、「京」が完成して活用が始まれば、国内の産業界はもちろん、多彩な研究・開発の現場に、一層の活気をもたらすことが期待されている。
防災面でも、最速スパコンを大いに生かしてもらいたい。
超高速の計算能力を上手に使えば、気象のほか、津波などの被害も、従来より、きめ細かく予測できるようになる。防災力の向上に貢献できるだろう。
その他、活用アイデアを広く各方面から募集するのもいい。
思い起こされるのは、一昨年秋の事業仕分けだ。蓮舫行政刷新相の「2位じゃだめなのか」発言で開発は「凍結」とされた。
民主党政権は近視眼的にすぐに成果を求め過ぎる、との批判が巻き起こり、凍結は免れたが、予算は一部削減された。発奮した技術者が意地を見せたのだろう。
スパコン開発は、激しい国際競争にさらされている。政府は、今後、さらなる中長期的な開発計画も検討すべきである。
「やはり科学技術はトップを目指さないといけない。科学技術こそが日本の生きる力だ」
理化学研究所の理事長で、ノーベル化学賞受賞者の野依良治さんも、そう言っている。
***社説終わり***
明るいニュースに思わずガッツポーズ(古いですか?)でした。
蓮舫行政刷新相の「2位じゃだめなのか」発言の時に、「1位の大切さ」を考えた方はたくさんいると思います。
「日本で一番高い山は?」と聞かれ「富士山」と答えられる人はたくさんいますが、「それでは、2番目に高い山は?」と聞かれて答えられる人はあまりいないでしょう。
つまり、それだけ1位と2位には差があるのです。
(ちなみに、答えは北岳(3,192m)です)
日本は「知」で生きていく国です。
これからの日本の「知」の成長に力を注ぎたいと思います。
パスカル進学教室(茂原市)