公平で規律ある二重債務対策が必要だ
2011/5/30付 日本経済新聞
東日本大震災で被災した個人や企業が新たな借金を背負う「二重ローン」問題は深刻だ。政府・与党は思い切った救済策を検討する必要がある。だが一定の規律と公平性を保つための配慮は欠かせない。
岩手、宮城、福島3県の沿岸部などでは、個人や企業の借金が1.2兆~2.8兆円に上るという。住宅や工場の再建に必要な資金を借りれば、震災前の「旧債務」と震災後の「新債務」という2つの負担を抱え込む。こうした問題が復旧・復興の障害になりかねない。
政府・与党は6月に救済策の概要を固める。旧債務の元本返済の猶予や新旧債務の利子補給などを検討中だ。官民で立ち上げる再生ファンドが企業向けの債権を金融機関から買い取り、旧債務の返済を実質的に免除する構想も浮上している。
1995年の阪神大震災後には、地元の自治体が利子補給を実施した。ただ債務免除などの抜本的な救済策を見送った経緯がある。
今回は住宅や工場を津波で流され、別の土地で出直さなければならない個人や企業が多い。収入を絶たれ、資金の調達や返済が困難なケースも目立つ。阪神大震災よりも状況は厳しいと言わざるを得ない。当時を上回る救済策を講じても、国民の理解を得られるのではないか。
問題はどこまで踏み込むかだ。被災地の経済を立て直すため、中小企業や農林水産業者の旧債務を減免することはあり得る。しかし減額はともかく、免除には慎重な判断が求められる。新規の借り入れを優遇するのなら、事業再生の可能性を十分に吟味しなければならない。
公平で規律ある救済策が求められるのは、個人の場合も同じである。住宅ローンや地震保険の利用状況が違うため、やり方次第では不平等感が広がりかねない。過去の災害で二重ローンを抱え、自力で返済している人たちもいる。バランスのとれた具体案を練ってもらいたい。
個人や企業の債務事情は様々で、柔軟な対応を迫られるのは間違いない。まずは金融機関と債務者が話し合い、最善の方法を探るのが望ましいだろう。新規の貸し出しなどを巡って公的金融の出番が増えるのは避けられないが、民業の補完という原則は忘れるべきではない。
被災地の資金需要に応えるには、金融機関の経営基盤を安定させる必要もある。政府は公的資金による資本注入制度を使いやすくするため、27日の閣議で金融機能強化法の改正案を決定した。与野党は今国会での成立に全力を挙げてほしい。
***社説終わり***
消費税10%をはじめ、個人を取り巻く経済環境は変化しています。
ローンや負債等、個人として最低限の経済知識を身につけて、自己防衛力を高めてほしいと思います。
今回はちょっと難しいお話でした。
パスカル進学教室(茂原)