茶色いワンコが義兄の家の裏に回り込むのが見えた。
きなこちゃん?
なんかびっこで歩いている。
えっまた何かやられた?
義兄の家の裏に回ってみると縁の下にうずくまっている。
右の後ろ脚が足首あたりから欠損している。
うわーきなちゃん、どうした〜!
顔つきもすっかり変わって、違う犬みたいだ。
怯えている。
出血は止まっているようだ。きなちゃん、痛かったねぇ。大丈夫か?
そのとき、雷鳴が轟いた。
きなちゃんは縁の下を出て道路へ向かっていった。
きなちゃんは雷が怖いのだ。
婆さんの食事準備があるので、また戻って来るだろうと、そのままにした。
車に轢かれたのだろうか?
嗚呼、守ってあげられなくてごめんね!
婆さんの食事が終わって、小太郎の散歩に出た。
いつもならきなちゃんがしゃべりながら近づいてきて、一緒に散歩に出るのだが。
今日はきなちゃんは来ない。
小太郎もきなちゃんを待っているようだ。
コタ、今日はきなちゃんは来ないと思うよ。
小太郎と散歩に出ようと家の前のゆるい坂道を下り始めたら、道路と田んぼをはさんだ向かいの家の奥さんがこちらへ歩いてくる。
小太郎が警戒して吠えかかろうとする。
奥さんが
「うちに茶色い犬がいるんですけど、お宅の犬じゃないかと思って、見に来ていただけますか?」
「はい、わかりました。」
奥さんのあとをついてお宅へうかがった。
古いほうの家の縁側前に茶色い犬がうずくまっている。
ああ〜きなちゃんだ!
「うちの犬です。車に轢かれたか何かで後ろ脚がちぎれちゃったみたいです。落ち着いたらうちに帰ってくると思うのでそのままにしておいてもらえますか?
」
「はい、わかりました。」
きなちゃんをそのままにして小太郎の散歩に出発した。
いつもの夕方散歩のコースを終えて、きなちゃんのいるお宅に戻ってきた。
きなちゃんは縁側前にうずくまっている。
小太郎に
「きなちゃん、脚怪我しちゃたんだよ。」
小太郎はきなちゃんに近寄ろうともしない。庭の芝生の匂いを嗅いでいる。
お前、薄情な奴だな!
小太郎を連れて家に帰ると、家人が仕事から帰っていた。
「きなこの後ろ脚がちぎれてないんだよ。今みやんけの家にいる。」
「え〜きなちゃん、何されたの!」
すじ肉を下茹でしている手を止めて
「すぐ迎えに行こう。」
きなちゃんがいるお宅に向かった。
家人がきなちゃんに近づいて懐中電灯で照らす。
「きなちゃん、お家に帰ろう。」
きなちゃんに近づくと家の裏に逃げていった。。
家人はきなちゃんを追いかけて家の裏を回って行く。
僕は家の反対側に回った。
きなちゃんは悲しそうな目をしながら土手の上を見ている。逃げる場所を探しているみたいだ。
「ぼーっと突っ立ってないで捕まえてよ!」
「はい」
きなちゃんに近づいて身体を抑えようとしたら、身体を反転させて逃げられてしまった。
お宅の玄関を出ていった。
家のほうに追い立てようとしたが、田んぼの中に逃げていく。
しばらく膠着状態が続き、家人は
「埒が明かない。ほっといたら帰ってくるかもしれないから帰ろう。」
きなちゃんを残して家に帰った。
後編へ続く。