
上靴なわたし

先日、ボーッと自分の人生を振り返っていた。
そう、まだ私が夢多き小学生だった頃…
スポーツ全般大好きだったが特に水泳には自信があった。市内大会では、男子よりタイムが早く、私の“優勝”を飾る表彰状には…
男子と書いた所に二重線が引かれ、“女子”と書き直されていた

新しい賞状無かったんかいっ

はぁまぁ、ちっぽけな町ですから

そして、“井の中の蛙”な私は本気でオリンピック選手を目指す為、スイミングスクールに行きたいと親に申し出た

両親は
『そんなん、無理やろ
』と子供の夢を壊すでもなく、承諾してくれた
まあ、自分の目で外の世界を確かめて来いと言う考えなのか…
いやまさか…娘と同レベルでオリンピック選手になれると思ってたとしたら…
全くめでたい親子である

その時の親の思いは未だに確認してません
…話を戻します

今でこそ近くにもスイミングスクールがあり、送迎
もあるのだが、何せ、ウン十年前の事、家から
に乗り
に乗り換え…大阪は…“十三”と言う
歓楽街(歌舞伎町みたいな)を抜けた所まで通っていた
今なら考えられない

私の娘がそんな所に通うなら毎回付いて行くよ

練習が終わると夜になり、エロチックなネオンが付いたり消えたり

でも、可愛い小学生の私はな~んの危惧もなく、帰り道にある駄菓子屋にしか興味がなかった
(当たり前やろ
)で、そのスイミングスクールの育成選手コースに入り初めて自分の実力を知り、オリンピックへの夢は早くも散ったのである

上には上が、いっくらでもいてはります

夢破れながらも、毎日キツイ練習をこなしていたある日、コーチが…
『テレビに出るぞ
』と言った
えっ
何
ドキュメンタリー番組

って事は…
厳しい練習風景を撮影し…“磨けば光る金の玉
”とか…“未知数ながら進化中”とか…
(まだ夢捨てとらんのかいっ
)と、思いきや…
夕方放送のローカルなクイズ番組

近くのもう一つのスイミングスクールと対抗戦らしい

まぁそんなもんやわね

しかし、テレビである

髪型は……服は……
帰って親に報告

『テレビ出んねんでぇ
すごいやろ
』と大騒ぎ
収録の日、母は髪をくくり清楚なリボンを付けてくれ、一張羅を着せてくれた
靴は…当時…アグネスチャンが
おっかの上~ひっなげしの花でぇ~
と歌ってた時、履いてた…コルクの厚底の…軍艦みたいな靴
分かります
アグネスチャン
分からんかぁ
ウェッジソールかな…
その靴をはいて、めかし込んで行った



スクールに着くと

えっ
皆、そんでいいん
初テレビやで
あかんやろ、そんな普段着
と思うくらい、皆、学校帰りチックだった

と、コーチが…
『今から、スクールのジャージに着替えてスタジオまで歩いて行くからな
』と言った

な、なんて
ないない、聞いてない
スクールのジャージ
って、いつからあったん
知らんって
この服は
ヒラヒラ~の…んで、この清楚なリボンは
アグネスチャンの軍艦シューズにジャージはアカンって







私の頭の中がグルグルグルグル…

リボンをはずし…
思いっきりサイズオカシイやろ
って言うジャージに身を包み…小さなアグネスチャンは一層小さくなっていた



『あっ、○○その靴アカンな……これに履き替えろ
』ゲェーーーッ

う、うわぐつ

あの…分かります
オーソドックスな、シンプルなデザインの…白い上靴

帰っていいっスか

って言いたかった

アグネスはもはやアグネスでも何でも無くなりました

ただ、だらしなくジャージを着て“上靴”を履き…
こともあろうに…
徒歩で…
MBS毎日放送まで行ったのである

恥ずかしくて泣きたくて…
でも、収録は何事も無かったかの様に滞りなく終わったのである

本来なら、クラスメイトに宣伝しまくり、華やかなテレビデビューを果たす所だが…
あの上靴のお陰で、極秘になってしまった

家庭にビデオが普及してなくてよかった

と、かなり後になって思った

収穫は…クイズで獲得した“ラジオ”だけだった

オリンピックの夢破れ、テレビデビューも闇に葬られ、現実の厳しさを思い知ったのであった
