
え゛…、ここ?
「純手打」というのが、いかにもっぽく、
ほんとに、お蕎麦が手打かなのさえ、何だか怪しい。
志木 「純手打 伊勢源」
不安に感じている間もなく、すたすた入口を開く彼に、
しぶしぶついて入ってみれば…
思った通りの、年季の入った、昔ながらの蕎麦屋の店内。

厨房上には、木板品書きが一列に並び、

使い込まれた、簡素なテーブルに椅子が置かれ、
奥にはゆったりとしたお座敷があり、意外に広い店内。

すぐに白作務衣のおじいちゃんが、すすっとお茶を出してくれ…
テーブルに品書きはなく、木板の品書きだけのよう。
周りは皆さん、慣れた感じの常連のようで、
見れば、ほとんどの人がお蕎麦を頼んでいるのに、
もしかしたら…、とすがるような気持ちで、
私は「とろろ蕎麦」、彼は「親子丼」を選んで注文。
会話もなく、ぼんやりと周りを見ていると…
以前は、このおじちゃんが昔は店主だったんだろう、
厨房には息子さんらしい青年が入り、
お孫さんなのか、奥様らしい女性が赤ちゃんをあやしてる
。
来るお客さん、来るお客さん、親しげに話している様子に、
長い間、ここで営み地域に密着している、
その温かさが感じられ、何だか微笑ましく、感じ始めてると…

程なく、「とろろそば」が目の前に。

全くもって期待していなかったお蕎麦だが…
おっ、これは、ちょっと美味しそうじゃないっ?

手繰り口にすれば、香り風味は強くはないが、
しゃんっとした腰があり、きちんと穀物感ある手打のお蕎麦だっ

とろろ汁に汁を注ぎ、浸してみると…
とろりとしてふわふわのとろろ汁。
んっ、これはっ…!
山芋と卵白を丁寧に混ぜ作られた、淡雪風の汁だっ
。

途端にテンションぐーんっと上がり、
ぽっこり真ん中に浮かぶ卵黄とかき混ぜ、

蕎麦を絡めて食べれば、こ、これは美味しいっ
さらっとしてふわとろとろ~り。
空気感あるとろろに黄身が混ざり、地味溢れつつすっきり。
さらほろりのとろろ汁は、どっぷり浸し絡めると、
まるで、冷かけとろろのようで、手繰る手が止まらない
。

一方、続いて置かれた彼の「親子丼」(800円)も、
なかなかどうして美味しそう。

ところどころ、半熟加減が残る艶やかな玉子に、
さっとかかった青海苔から香ばしい香りがふわ~り。

「ちょっと…、食べてみる?」
と、又しても、おずおず話しかけてきた彼に、
しぶしぶ装って食べて見れば…、
味の染みたしゃっくり玉葱が甘くたっぷり、鶏肉はしっとり柔らか。
甘辛加減もよく、うんうん、これも美味しいな
。

頃合いみて出された、熱々蕎麦湯を注ぎ入れれば、
ぱっと玉子が煮え立ち、これも美味しいとろろ蕎麦湯
。
思いがけずに入ったお店だけれど、
食べている間にも、次々にお客さんが入ってくる、
地元で愛されているお店なんだなあ、と改めて…。

落ち着いて帰りに見たら、気付かなかった打ち場もきちんとあり、
疑っちゃったりしてごめんなさい
。
気どっただけのお店よりも、きちんと美味しいお蕎麦に、
期待していなかっただけに、すっかり満足。
ご馳走様でした~
私も近所だったら、ちょこちょこと訪れているかもいれないな、
などと感じながら、
街蕎麦屋も、いいもんだなあ…
。
