2014年の新規株式公開(IPO)が26日、すべて出そろった。新規上場企業数は77社と、07年の121社以来の多さだった。26日にマザーズ に上場したMRT(6034)は終日買い気配が続き、取引が成立しなかった。初値を付けた76社のうち58社の初値が公募・売り出し価格(公開価格)を上 回った。勝率は76%で、13年の96%を下回り、3年ぶりの低水準だった。12月は28社が上場し、好調な初値が続くなど足元のIPO市場は盛り上がり をみせる。ただ、初値を付けた後の値動きは鈍いものも目立つ。来年のIPO市場はさらに活気づくのか。今年を振り返りつつ、来年のIPOを展望する。

■14年は大型上場目立つ、物色は小型株に集中

  14年のIPO市場は、大型の上場が相次いだことが特徴だった。筆頭は東証1部に上場したリクルート(6098)。上場時の時価総額は2兆円に迫る水準 で、国内では今年最大のIPOだった。日立マクセル(6810)や西武HD(9024)の「再登場組」やJディスプレ(6740)も上場した。年末にはス マートフォン(スマホ)向けのゲームを手掛けるgumi(3903)といった大型ルーキーの登場も市場をにぎわした。

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 77社が公募で調達した資金は約3500億円。売り出しを含めた資金吸収額は約1兆500億円で、第一生命(1部、8750)が上場した10年(約1兆3000億円)以来の規模となった。大型の上場が増えたことが吸収額を押し上げた格好だ。

  初値や上場後の「売買の盛り上がり」という面では小型株に軍配が上がる。例えば11月にマザーズに上場した音声・映像処理ソフトを手掛ける CRI(3698)。初値の公開価格に対する上昇率は5.6倍と、06年12月にヘラクレス(当時)に上場したeBASE(3835、6.4倍)以来の水 準を記録した。公開価格付近で初値を付けたリクルートやgumiに比べ、個人投資家の買いが集中しやすかった。「資金吸収額の少ない銘柄に買いが集まる傾 向が鮮明に表れた」(みずほ証券の白石徹公開引受統括部長)という。

 もっとも、初値の公開価格に対する14年の平均上昇率は約1.9倍と、初値が公開価格を続けて上回る「連勝記録」を52にまで伸ばした13年の2.2倍には及んでいない。初値を付けてからは利益確定売りがかさみ、急落する銘柄も少なくなかった。

■続く大型上場、IT企業の上場が増える公算

  15年も大型企業の上場が注目を集めそうだ。無料対話アプリのLINE(東京・渋谷)のほか、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを運営するユー・エス・ ジェイ(大阪市)の上場も取り沙汰される。目玉は、来年9月をめどに上場する日本郵政だ。同社は金融子会社のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険と合わせて3社 同時上場を目指す。上場時の時価総額は、7兆円を上回ったNTTドコモ(9437、98年上場)に匹敵する規模となる。政府は幹事団に中堅証券も含めるな ど、幅広く貯金者などの取り込みにも力を入れており、「投資家の裾野拡大にも寄与する可能性がある」(みずほ証券の白石氏)という。一方で上場に伴って大 量に放出される株式を市場が吸収しきれず、需給の悪化を招くとの懸念も強い。

 証券会社の引受部門などに15年のIPO市場 の見通しを聞くと、新規上場社数は90~100社と、5年連続で増加した14年の77社をさらに上回るとの見方が多い。もっとも「100社程度を見込む」 (野村証券の倉本敬治公開引受部次長)との声から、三菱UFJモルガン・スタンレー証券や大和証券のように80社台と慎重な見通しを示す証券会社もあるな ど、ややばらつきがある。それぞれの証券会社は、市場環境の見通しと個々の企業の業績や事業環境、各証券会社の引受体制を総合して予想を立てており、それ らの強弱が社数の差となって表れているようだ。

 業態別では「IT(情報技術)関連企業の上場が増える」との見方が多い。 「ビッグデータやネット広告、クラウド技術を活用した企業の上場が見込まれる」(大和証券の久田信也公開引受部長)という。「ニュースやオークションアプ リなど、ヤフー(1部、4689)が手掛ける事業を細分化してスマホ向けに配信するベンチャー企業が増えている」(トーマツベンチャーサポートの斎藤祐馬 事業開発部長)との声もある。「利益の絶対額が少なく、創業間もない企業の上場が増えそう」(SBI証券の上野亨コーポレート部部長)との指摘もある。 ファンドの売り出し案件や、サイバダイン(マザーズ、7779)のような種類株の仕組みを活用した上場もありそうだ。

 上場社数や値動きはその時々の相場の地合いに左右される面も強い。来年の日本株も堅調な値動きを予想する市場参加者は多いが、IPO市場が盛り上がる中でも、投資先をしっかりと見極める選別眼は引き続き求められそうだ。

2014年の新規株式公開(IPO)が26日、すべて出そろった。上場社数は外国企業を含め77社。きょう上場のMRT(6034)は、終日買い気 配が続き売買が成立しなかった。MRTを除いた76社での初値の公開価格に対する騰落率ランキングと、全77社でみた市場からの資金吸収額ランキングを掲 載する。

【初値の公開価格に対する上昇率上位】
銘柄(コード)公開価格初値上昇率
CRI(マザーズ、3698)2400円1万3500円5.6倍
ビーロット(同、3452)2010円1万 500円5.2倍
SHIFT(同、3697)1300円6000円4.6倍
イグニス(同、3689)1900円8400円4.4倍
エクストリム(同、6033)1400円5550円4.0倍

【初値の公開価格に対する下落率上位】
銘柄(コード)公開価格初値下落率
リボミック(マザーズ、4591)2300円1830円20%
SFP(2部、3198)1940円1620円16%
Jディスプレ(1部、6740) 900円769円15%
TOREX(JQ、6616)5000円4480円10%
丸和運機関(2部、9090)3400円3100円9%

【市場からの資金吸収額上位】
銘柄(コード)公開価格資金吸収額
Jディスプレ(1部、6740)900円3340億円
リクルート(同、6098)3100円2130億円
日立マクセル(同、6810)2070円760億円
すかいらーく(同、3197)1200円750億円
テクノプロH(同、6028)1950円530億円

※資金吸収額は公募株数と売り出し(オーバーアロットメント含む)株数、公開価格で計算。海外での調達も含む。

〔日経QUICKニュース(NQN) 川上純平、三島大地〕

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