予算や手法、従来の規格、メンバーが企業人か一般の素人かなど、細かい条件は問われません。ゴールだけが設定されていて、最初に到達した1位のチームだけが、1000万~2000万ドル(約10億7000万~21億4000万円)もの優勝賞金を獲得できるのです。
なぜ、これだけ多額の優勝賞金が出るのか。それはコンテストのテーマが、米国政府が想定している次世代の成長産業に関連しており、優秀な成果はすぐに実用化され、市場へと投入されるシステムが完成しているからです。
従来、米国政府は日本政府と同様に、幅広い業界の多くの事業者に補助金をバラまいてきました。しかし、財源には限りがあります。景気が低迷すれば予算が確 保できなくなるのはどこの国でも同じこと。そこで米国政府は、バラまきに代わる新しい財源の使い道を模索しました。その解答のひとつが、財源を1位のプ レーヤーに集約させるXプライズだったのです。
Xプライズの成果はまだ検証段階ですが、広く薄く財源をバラまいていた時代よりも革新的なアイデアが生まれやすく、主要産業の成長にも寄与しているようです。近年の米国株式市場が、史上最高値を連日更新するほど急成長している要因にXプライズも無関係ではないでしょう。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO78791800T21C14A0X12000/
1位を優遇するシステムは、思わぬ副産物も生み出しています。
ひとつは地域の活性化です。ゴールにたどり着くための手段や資格を問 わないということは、田舎に住む小学生にも、町工場の受託エンジニアにも門戸が開かれているということです。アイデアさえあれば、すべての人間が対等。今 後は、インターネットや3D(3次元)プリンターといった「地域の不利」を払拭する文明の利器の活用によって、地域から1位を獲得する例も増えていくで しょう。

斉藤ウィリアム浩幸
もうひとつは、事業者間や産業間の交流が促進されることです。通常「大きな仕事」は会社単位、事業部単位の信頼をベースとするのが一般的です。ですがコン テストに参加資格はありません。腕の立つエンジニアやデザイナーが所属の垣根を越えて一時的にチームを組み、1位というゴールを目指す過程では、従来なら ば交わることのなかった技術や知識が交流し、イノベーションが生まれやすい風土が育まれています。
バラまきは公平なようでいて、財源を分 配する対象をあらかじめ限定する制度です。新規参入や少数精鋭の短期集中型チームには恩恵が行き渡らない側面もあります。また、手厚く守られているかに見 える既得権益を持つ組織に対しても、広く薄く分配される助成金では効果が薄く焼け石に水でしかありません。しかも企業や研究者たちが助成金をもらうことに 慣れ、本業よりも「より多くの助成金を行政から引き出す」ことのエキスパートになってしまっているありさまは、本末転倒としか言いようがありません。
私が今、画策しているのは日本版Xプライズ、すなわちJプライズの創設です。硬直した日本の経済、産業を大きく前進させる求心力になるに違いありません。
(インテカー社長 斉藤ウィリアム浩幸〈ツイッターアカウント @whsaito〉)
〔日経産業新聞2014年10月24日付〕
