結局かなわなかった記事ですが、記録のために転載いたします!
元の情報はこちらです
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120910/236600/

英ヴァージン・アトランティック航空が、2014年に拡大される羽田空港の国際線発着枠の獲得に向けて動き出したことが本誌の取材で明らかとなった。現在 の成田―ロンドン便を羽田発着に移管し、提携先である全日本空輸の国内線への乗り継ぎを容易にする。新路線には2014年に納入される最新鋭航空機「ボー イング787-9」を投入し、機内のサービスも拡充する。2014年はヴァージンが日本に就航してから25周年となる節目にあたる。同社のスティーブ・ リッジウェイCEO(最高経営責任者)に話を聞いた。(聞き手は、ロンドン支局 大竹剛)

2014年に羽田空港の国際線発着枠が拡大する。英ヴァージン・アトランティック航空は発着枠の獲得に乗り出すのか。

リッジウェイ:私たちは、 2014年夏ごろの羽田就航を目指すことにした。これからの交渉の行方にもよるが、羽田空港の国際線発着枠の拡大に合わせて、現在の成田空港―ロンドン・ ヒースロー空港便を羽田発着に移し、お客様が利用しやすい昼間の時間帯にロンドン便を毎日飛ばす計画だ。既に、発着枠の申請に向けて動き出しており、 ヴァージンは欧州の航空会社の中では、2014年に拡大する羽田空港の発着枠を正式に申請する最初の会社となるだろう。

英ヴァージンアトランティック航空のスティーブ・リッジウェイCEO(最高経営責任者)は、「2014年夏から羽田空港に就航したい」と語る(写真:永川智子)

 羽田空港からは提携先である全日本空輸の国内線との乗り継ぎが容易になるため、全日空との協力関係はこれまで以上に拡大していきたい。そして、2014 年は最新鋭機「ボーイング787-9」の納入が始まる時期と一致する。私たちは、羽田空港にボーイング787-9をいち早く飛ばしたいと考えている。ボー イング787-9を使ってどのようなサービスを提供するか、その詳細はまだ言えないが、羽田―ロンドン便はヴァージンの新たな商品やサービスをお披露目す る“ショーケース”となるはずだ。

 偶然にも、2014年はヴァージンが日本市場に参入してから25周年の節目にあたる。日本市場は私たちにとって、とても感情的に特別な意味を持つ。 ヴァージンは1984年に米国向けに運航を始めたが、日本への運航開始は89年であり米国以外の国では最も早かった。そのため、ヴァージンは日本に極めて 強い絆を感じている。2014年の羽田就航と新型機の導入は、ヴァージンと日本市場の密接な関係を示す象徴的な出来事となる。

英ブリティッシュ・エアウェイズに短距離路線でも戦いを挑む

既に、羽田空港には早朝の発着でブリティッシュ・エアウェイズ(BA)が乗り入れている。ヴァージンのライバル、BAとの競争が今以上に激しくなりそうだ。

リッジウェイ:ヴァージンが羽田空港に就航することで、ヴァージンもBAと同様の選択肢をお客様に提供できるようになる。BAは日本航空と密接に協力し合っており、BAもヴァージン同様に2014年以降は昼間の発着枠に移行したいと思っているはずだ。

 ヴァージンとBAは、お互いに英国の航空会社として長距離路線で競争してきた。しかし今年、BAの親会社インターナショナル・エアライン・グループ (IAG)が、独ルフトハンザ航空傘下で英国の国内線を手掛けていたブリティッシュ・ミッドランド航空(BMI)を買収した。これにより、BAとの競争が 新たな段階に突入した。

 長距離路線のヴァージンはこれまで、短距離路線のBMIと提携して、BMIと一緒にBAに対して戦いを挑んできた。しかし、BMIというパートナーを 失ったことで、私たちは自ら、英国内の短距離路線に参入する決意を固めた。IAGのBMI買収によって、BA陣営はロンドン・ヒースロー空港で独占的地位 に立ったことから、ヒースロー空港の発着枠を一定数、手放すことを求められた。私たちはその発着枠を獲得して、まずはマンチェスター、そしてスコットラン ドのエジンバラとアバディーンにも就航する計画だ。実現には11月末までに下される欧州委員会による決定を待つ必要があるが、発着枠獲得に向けて今後3カ 月、全力を尽くす。

英国内の短距離路線も自ら手掛けることで、ヴァージンのブランドでサービス品質や運賃などの面で競争力を発揮できるようになる。ヴァージンとBAと いう2つの強力なブランドが正面からぶつかり合って競争することは、消費者にとって大きなメリットとなる。マンチェスターは製造業、アバディーンは石油産 業が盛んで、英国を訪れる日本のビジネスマンにとっても利便性が増すだろう。

“航空連合”への参加、「絶対にないわけではない」

世界の航空業界には再編の波が訪れている。BMIが買収されたのはその流れの1つで、最近ではオーストラリアのカンタス航空が中東ドバイのエミレーツ航空との提携を発表した。ヴァージンは、この波にどう対応するのか。

リッジウェイ:まず、航空業界には古臭い規制が数多くあり、企業合併は容易ではない。そのために、比較的容易な提携によって、路線を拡大するなどの動きが広がっている。ヴァージンも、航空会社108社と乗り継ぎで協力関係を築いているほか、たくさんの共同運航便を飛ばしている。

 全日空と親密な関係を築いてきたように、これまではそれぞれの航空会社と個別に協力関係を構築してきた。そのため、スターアライアンスやワンワールドと いった航空連合に加盟する必要性はなく、独立した立場でうまくやってきた。だが、今後はこうした航空連合に加盟することが、絶対にないとは言えない。

LCCの台頭は日本市場の活性化にプラス

日本では最近、格安航空会社(LCC)が相次いで参入し、ブームになっている。LCCとの協業もありえるか。

リッジウェイ:日本の航空業界は、長らく変わってこなかった。LCCの参入によって競争が活性化するのは良いことだ。

 長距離路線の航空会社にとって、ヴァージンが国内線に強い全日空と協業しているように、短距離路線のLCCと協業する可能性は常にある。例えば、 (LCCの一種である)オーストラリアのヴァージン・オーストラリア(旧ヴァージン・ブルー)は、長距離路線からの乗り継ぎ客をうまく取り込んでいる。 LCCのビジネスモデルも変化しているのだ。

 全日空が立ち上げた2つのLCCと協業する可能性があるかについて話すのは、時期尚早だ。もちろん、全日空との密接な関係はより強化していくが、全日空系のLCCについてはまだ何も話せない。

イノベーションの余地はまだまだある

サービスを削ぎ落して低価格化を追求するLCCが台頭するのは、航空業界が成熟し、新たなサービスを開発して顧客を魅了する余地が減ってきているからではないか。

リッジウェイ:そんなことはな い。ヴァージンはこれまで、サービスのイノベーションで先頭を走ってきた。今では多くの航空会社が真似しているが、いわゆる「プレミアム・エコノミー」を 開発したのはヴァージンだったし、エンターテインメント・システムをすべての座席に導入したのもヴァージンが最初だった。これらのサービスは、常に進化し ている。

環境分野の取り組みでも、ヴァージンは2007年からバイオ燃料を使って航空機を飛ばす試みを始めており、これは業界で最も早かった。イノベーションはどんなところでも必ず起きる。

ロンドン線は回復基調、来年に期待膨らむ

航空業界を取り巻く環境は厳しい。欧州危機などによる景気低迷と燃料価格の高騰、LCCの台頭による価格競争という三重苦の状況にある。こうした中で、ヴァージンの日本事業の状況を教えてほしい。

「東京-ロンドン線は回復基調にある」というリッジウェイCEO(写真:永川智子)

リッジウェイ:おっしゃる通り、 欧州も米国も経済状況は明らかに良くない。英国経済もユーロ危機の影響を受けているし、燃料価格の高騰の問題もある。今年は航空業界を取り巻く市場環境は 昨年よりも多少は改善するだろうが、航空業界は搭乗客の収容能力拡大については非常に慎重になっている。市場が回復するという確信が持てずに、誰もが神経 質になっている。

 しかし、その一方で、東京―ロンドンの路線については、ヴァージンは今年、収容能力を昨年と比べて23%増やす。東日本大震災の後、乗客数は大幅に減った。そのため、便数を減らしたり小さな機体に変更したりして、収容能力を減らした。しかし、現在は回復してきている。

 東京―ロンドンの乗客数が回復してきているのは、ロンドン五輪の効果だけではなく、消費者心理の回復によるところが大きいだろう。日本のツアー会社は、 実は今年はロンドンをあまり宣伝していない。ロンドンの宿泊費高騰が原因で、むしろオーストラリアや他の欧州各国へのツアーに力を注いでいる。しかし、五 輪効果でロンドンには新しいホテルやレストランが増え、交通機関などのインフラも改善した。日本のツアー会社は来年には、英国にたくさんの観光客を送って くれるはずだと私は期待している。