相続税調査については、以前に『「申告漏れ」8割超 やっぱり怖い相続税調査の実態』で紹介しました。その中で、相続税調査は毎年8割を超える高い確率で「アウト」となる怖い調査だとお伝えしました。もちろん8割超でも十分にインパクトのある数字だと思います。しかし、贈与税調査はさらに厳しい精度で迫る「もっと恐ろしい」手続きの可能性があります。
ここ10年ほど、国税庁から年末ごろ発表される相続税調査のとりまとめの中には、特に贈与税調査に力点を置いたリポート項目はありませんでした。むろん調 査を行っていないわけではないでしょうが、わざわざ報道資料で強調して周知させる「重点項目」とは考えられていなかったのかもしれません。
ところが一昨年発表された11年事務年度(11年7月~12年6月)分の相続税調査リポートから、「贈与税に係る調査実績」の項が新登場しました。昨年発表された13年6月までの調査実績をまとめた最新リポートにも、この贈与税の調査状況が引き続き報告されています。
こうしたリポートを読むと、現行の贈与税の実地調査に関する「特徴」がよく分かると思います。具体的に最新リポートから際立った数字を拾ってみましょう。
■贈与税の申告漏れ、「そもそも申告せず」が多数
まずは「82.0%」という数字です。これは贈与税の実地調査で「申告漏れ」があった事案のうち、そもそも「無申告」だった割合です。実は贈与税調査につ いては、「ちゃんと申告したけれど解釈の違いで部分的に申告漏れになってしまった」ケースはあまり多くありません。「そもそも申告しなかった」状況が圧倒 的多数を占めています。
この点は相続税調査と比べてかなり異なると思います。相続税の実地調査は、「取り急ぎ申告を済ませるには済ませたけれど、改めて調査が入った結果、漏れていた財産が出てきた」ということが少なくありません。
しかし、贈与税の場合は「とりあえず必要な申告自体を行っていない」ケースが大半です。贈与税調査が「無申告の案件を狙い撃ち」した側面は強いでしょうが、ともあれ「無申告の割合が非常に高い」という事実は、贈与税に際立つ特色だといえるでしょう。
| 現金・ 預貯金等 | 有価 証券 | 土地 | 家屋 | その他 | |
| 相 続 税 | 37.2% | 13.0% | 16.9% | 2.0% | 31.0% |
| 贈 与 税 | 62.0% | 13.6% | 6.6% | 1.1% | 16.6% |
これを見ると現金や預貯金、有価証券などの「金融資産」の割合が、相続税調査では「50%前後」であるのに対し、贈与税調査では優に「75%」を超えています。もし贈与税の申告漏れが見つかったとすれば、実に「4分の3以上」が金融資産で占められているわけです。
こうした数字から、贈与税調査で対象となりがちな「わかりやすい典型例」が明らかになると思います。それは「現預金や証券などの金融資産が贈与されているのに無申告のまま」というケースです。
■「これぐらいなら申告しなくても大丈夫」に要注意
妻や子、孫にまとまった額の金融資産を移動させたにも関わらず、「これぐらいなら申告しなくても大丈夫だろう」と高をくくっていたものが、調査の格好の獲物という実態が浮かび上がります。
純粋に贈与だけに焦点を絞った実地調査もあるでしょうが、相続税調査の過程であぶり出されるものが少なからず存在しているはずです。例えば相続税調査の過
程で「祖父が孫名義で預金を積み立てていた」ような、いわゆる「名義預金」の疑いのある財産が発見される場合があります。
遺族の側からすれば「いや、これは確かにおじいちゃんが孫にあげたもので、遺産なんかじゃないですよ」「ほら、入出金の記録を見たら、ちゃんと孫にあげたことが分かるでしょう」といった反論があるかもしれません。
しかし、それならそれで「なるほど、ではその際にちゃんと贈与税の申告は済まされたんですね?」という話になります。もし遺族の話の通りなら、確かに相続 税の対象にならない可能性はあるでしょう。しかし、その代わり贈与税の対象じゃないか……となり、結局は「飛んで火に入る夏の虫」で、残念ながら贈与税の 申告漏れとみなされてしまうケースが出てきます。
■「積極的に贈与税の調査を実施」と強化宣言
実際に国税庁のリポートの中で、こうした点に関する強い意気込みが示された箇所があります。まさに現在、13年7月~14年6月の期間について「相続税調 査等、あらゆる機会を通じて財産移転の把握に努めており、無申告事案を中心に、平成25事務年度も積極的に贈与税の調査を実施します」と、強化宣言が高ら かに唱えられています。
15年1月から相続増税が決まっています。そうした昨今の時勢から、様々な対策を検討している読者もいるでしょう。そのなかで「生前贈与を活用して、遺産額をできる限り小さくしたい」といった動きが活発になっていても不思議ではありません。
しかし、その過程で少なからぬ額の金融資産が移動した場合、適正な申告をしなければ、いずれは贈与税の実地調査の対象となる余地が生じます。くれぐれも 「この程度なら調べに来ないだろう」と思い込まず、資産贈与に明るい税理士などのアドバイスを得ながら、後顧の憂いがない形での贈与を検討すべきなのでは ないでしょうか。

川原田慶太(かわらだ・けいた)
1976年大阪生まれ。司法書士・宅地建物取引主任者。2001年3月、京都大学法学部卒。在学中に司法書士試験合格。02年10月、かわらだ司法書士事
務所開設。05年5月、司法書士法人おおさか法務事務所代表社員就任。資産運用や資産相続などのセミナー講師を多数歴任。
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