最近よく問い合わせや取材依頼が来ます。
『放射能によい食べ物について。』
正直、こういう質問はこれまで受けた事なかったですし、
第一、放射能とはあまり関係ない生活を送ってきたゆえ、
なんだか、慣れておりませんね(笑)
昆布のヨウ素がいいからと、今、昆布が飛ぶように売れ、
カリフォルニア州では福島原発事故を受け、
一部のドラッグストアで甲状腺への放射性ヨウ素による害を防ぐとされる
ヨウ化カリウムが売り切れとのことです。
取り込まれた放射性ヨウ素の多くが、甲状腺に集まり取り込まれ有機化すると、
甲状腺内にある期間貯留し、体内で放射線を浴びるという、
いわゆる『内部被曝』が起こります。
確かに非放射性ヨウ素を大量摂取することは、
事前に甲状腺をヨウ素で飽和させて放射能汚染を防御するということであり、
ヨウ素を摂取すると、放射性ヨウ素の甲状腺への取り込みが減り、
甲状腺に集積・貯留、内部被曝するの防ぐことができるということです。
この考え自体が間違っているわけではありませんが、
むしろ過剰摂取による、甲状腺機能更新症などを引き起こす場合もあるので要注意!
(特に妊婦さんなど摂り過ぎ注意!)
それに、被曝する前から常食してなければ意味がありません。
しかし、ほうれん草など、お気の毒に言われていますね。
そもそも、放射性ヨウ素の半減期は8日で、放っておいてもさらに8日経つとさらに半分、
また8日経つとその半分と減って行きます。
最初の頃に放出された放射性ヨウ素が付着したと考えるなら、
今、ほうれんそうに着いているものは、半減期を過ぎています。
今回のほうれんそうはちょっと出荷を待って良く洗って食べれば、
危険性は少ないとも言われていますが、やはり気になる人は気になっちゃうかな?
正直、私もいくら洗っても気になります(笑)
中国の農薬野菜と放射能汚染された野菜・・
どちらも消費者にとって、まだまだかなりの難題がありますね。
では、参考までに、茨城県薬剤師会の資料を転載しておきます。
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この度の原子力施設事故では、ヨウ素剤について多数のご質問が
寄せられました。ヨウ素剤については、すでに動燃アスファルト固化処理施設事故の時に、
会報48号(97年4月)薬事情報だより(P7)に掲載いたしましたが、
一部改編し再度お知らせいたします。
薬事情報室
Q:原子力施設での臨界事故があった場合、どうしてヨウ素剤を服用するのか
A:先月、東海村の原子力施設において臨界事故が発生し問題となったが、
臨界事故が発生した場合、ヨウ素、キセノン、クリプトン等、種々の放射性物質が
放出されると言われている。この中で、放射性ヨウ素(131I)は、
放出される割合の最も高い放射性物質であり、施設を破壊してしまうほどの事故の場合、
気化して大気中に広範囲に拡散しやすい上、呼吸や飲食により体内に吸収されやすいため、
内部被曝を起こす物質として特に注目されている。
しかし今回の事故では施設が破壊されなかったことや、ウランの量が少なかったことなどから、
放射性ヨウ素は発生したが大気中に放出されたのは極僅かであった。
10月5日にJCO周辺の雑草から131Iが最大0.037Bq/g検出されたが、
これを食べると仮定しても実効線量当量は0.00036mSv(0.036ミリレム)となり、
人の年間線量限度1mSvの約3000分の1ほどであった。
本来、ヨウ素は、甲状腺ホルモンの構成成分として生体に必須の微量元素であり、
体内には約25mgが存在する。また、海草に多く含まれ、1日の摂取量は成人で約1.5mgと
されている。一方、甲状腺は、ヨウ素を取り込み蓄積するという機能があるため、
原子力施設の事故で環境中に放出された131Iが体内に吸収されると、
甲状腺で即座に甲状腺ホルモンに合成され、甲状腺組織の中で放射能を放出し続ける。
その結果、放射能による甲状腺障害が起こり、晩発性の障害として甲状腺腫や
甲状腺機能低下症を引き起こすとされている。
これらの障害を防ぐためには、被曝する前に放射能をもたないヨウ素を服用し、
甲状腺をヨウ素で飽和しておく必要がある。こうすることにより、
131Iにより内部被爆しても甲状腺には取り込まれず予防的効果が期待できる。
その際、ヨウ素剤の効果は投与する時期に大きく依存するとされており、
以下に示すとおり被曝直前に摂取した時に効果が最大で、時間が経過するとその効果は薄くなる。
100mgのKIを投与したときの131I摂取防止率
投与時期 131I摂取防止率
被曝24時間前投与
約70%
被曝12時間前投与 約90%
被曝直前投与 約97%
被曝3時間後 約50%
被曝6時間後 防止できない
また、ヨウ素の吸収は、食後で30分後、空腹時で5分後から始まるとされ、
一旦甲状腺ホルモンに取り込まれ有機化されると、体内に長期間貯留するため、
放射性ヨウ素に被爆する前に、ヨウ素剤を服用することが重要である。
予防投与量としては、1日1回服用し成人でヨウ化カリウム130mg(ヨウ素として100mg)、
1歳以下の乳幼児でヨウ化カリウム65mg(ヨウ素として50mg)とされ、
服用期間としては、事故の影響度にもよるが、3~7日程度と考えられる。
なお、ヨウ化カリウムの入手が困難である場合は、市販のルゴール液
(ヨウ化カリウムとヨードを2対1の割合で水に溶かしたもの)や、
ヨウ素レシチン、または、試薬のヨウ化カリウム等を使うことも可能である。
ヨウ素の副作用としては、甲状腺障害(腺腫、機能失調)、ヨウ素アレルギー
(発熱、関節痛、蕁麻疹等)、耳下腺炎等の報告があるが、
一般には1回130mgのヨウ化カリウムの経口投与では、
たいした副作用は発生しないとされている。
しかし、食物からの摂取量が通常1日1.5mgであることからすると、
被曝線量が5レム以下の場合は使用しないほうが良いとされ、
逆に50レム以上の場合は積極的に使用することが望まれている。
現在、茨城県では、下記自治体施設や保健所に、夜間人口の1日分(244,000人×2錠)と
原子力医療センターに6日分のヨウ化カリウム錠を分散配置している。
★保管場所
保管数量(50mg錠)
東海村役場
64,000
ひたちなか市生涯保健センター
120,000
ひたちなか保健所
10,000
日立市南部支所防災倉庫
60,000
日立保健所
104,000
常陸太田保健サービスセンター
24,000
那珂町役場
24,000
大洗町消防本部防災倉庫
42,000
水戸市常澄保健センター
12,000
鉾田保健所
18,000
茨城町役場(薬品室)
10,000
小 計
488,000
原子力医療センター(国立水戸病院内)
2,928,000
合 計
3,416,000
[参考]
1) 学術 放射能汚染 ヨウ素を:高橋保志、道薬誌3 (6) 11 (1986)
2) 放射能とヨウ素:ドラッグビュー(山口県 薬) (23) 6 (1986)
3) チェルノブイリ被曝のヨード剤による予防:石井淳、日本医事新報№3496 136 (1991)
4) 原子力事故緊急時医療活動マニュアル(その5):菅野商会医薬品情報 (17) 42 (1988)
5) 原子力事故緊急時医療活動マニュアル(その6):菅野商会医薬品情報 (20) 57 (1988)



