若い人の金銭感覚って、今になれば理解できるが、当時の私には分からなかった。
保険のCMで「よ~く考えよう、お金は大事だよ」というフレーズがあった。
最近でも、5億円以上の年収がある人に「お金は大切だから」と言われ、ショックを受けた。
一般的にお金を持っている人から、そんな平凡なアドバイスをもらうとはっ、予測できなかった。
お金は大切だと、誰もが知っている。
お金は有限だとバイトを始めてから気づいたが、ゲームセンターやカラオケが楽しく、友達と食事に行ったり、合コンも楽しい。
15万円のアルバイト代は、わずか1週間でなくなってしまう。
私は父に言った。
「どうしても、お金を使ってしまうのよ。 とてもじゃないけど、生活なんて出来そうにない。 どうしたら良いと思う?」
すると父は私の生活を考え、アドバイスをしてくれた。
「収入と支出、バランスが大事。 一般的には、収入の2割しか貯金できない。 自分が貯金できないのは、どこか浪費しているんだ。 何が必要で、何が無駄か、よく考えろ」
私は良く考えた。
「カラオケも合コンも、ショッピングも削りたくない。 お金は稼いだだけは浪費してしまうものよ。
どうせ支出をセーブできないなら、収入をあげましょう」
私は店長に訊いた。
「私、今の自給(700円)では生活できません。 自給を手っ取り早くあげる方法ってありませんか?」
すると店長は「ガソリン関連商品を売ってくれ。 たくさん売ると、自給はあがる」と言った。
「それから、現金会員を増やすと良い。 必ず自給はあがるよ」と付け加えた。
私はその日から、一生懸命現金会員を増やすため奔走した。
毎日、知ったお客さんも知らないお客さんも、手当たり次第に声をかけた。
オイル交換をするため、ボンネットを開けさせるトークや、関連商品の知識を頭に詰め込み、出来る限り短時間で交渉することを覚えた。
しばらくして、ENEOSのスーパースタッフレースというのがあり、私がバイトしている店舗が3県でトップ2に入ったという知らせを受け、社長や部長が私の顔を見に来た。
新しく入ったバイトが、商品売り上げを伸ばし、正社員や店長の売り上げを追い抜いて、最高自給の1100円をもらっているらしい。
時間があれば清掃をし、商品を整理し、まだ在庫があるのに「店長、私は今日これを全部売りますから、注文よろしく!」などと、ふざけたことを言う。
ところが、そのバイトはセリフ通りの結果を出す。
いったいどんな人なんだ???
社長や部長は、私がどんな人間か興味津々だった。
その頃の私は、どうにか支出に見合った収入を叩き出した。
20万円以上のバイト代をもらい、毎日のバイトが楽しい。
幸せだと感じていたそんなある日、店長に呼ばれた。
「正社員にならないか?」
私は考えた。
将来のことを考えれば、年金とか保険とか必要なのは分かっている。
ただし、正社員になって手取りはいくらなのか?
3年後、5年後、私はどうなっていたいのか?
ガソリンスタンドは楽しいが、楽しいだけで終わってしまう。
一生この仕事を続けるつもりはない。
私は留学を終えてから、やりたいことも見つからない。
何かを見つけたくてバイトをしているだけなのだ。
「お断りします。」
私の答えに店長は「なぜ?」と返した。
「将来性を感じません。
もし私が店長になったとしても、給料は知れてますよね。
とてもそんな給料では満足できません。
好きだから長続きする、というのは一理あると思いますが、私はもっと自分の可能性を信じたいです」
私はそれから英語を再度、勉強することにした。
毎日、毎日、バイトで疲れて帰宅したら寝る。
何もしないのでは、時間があっても意味がない。
時間はみんな、平等に24時間与えられている。
人よりもっと、と望むのならそれなりの努力が必要だ。
そして私の出した結論は・・・バイトを辞める!
私が当時一番悩んでいたことは、時間が有限だということを知っていたからだ。
もちろん、みんな知っていることだと思う。
お金は増やすことができるが、時間は減っていくだけ。
絶対に取り戻すことができない。
私の若さはいつまでも持続しない。
若い頃の1年は本当に大切だ。
その貴重な時期に、どうして私はこんなバイト(単純作業)をしているんだ?
時間を切り売りして、給料をもらう。
すごく当たり前のことが、とても嫌だった。
私は自分にしかできない仕事がしたい。
やりがいのある仕事で、自分が好きな仕事で、さらに収入が他人より高ければ言うことはない。
私は英語を使った職業を探しに、職安へ行った。
そこで、事務員募集という求人を見つけ、さっそく応募した。
私は夢を追いかけ、英語を使った職場に飛び込んだ。
12人の面接で私が採用になったのは、ガソリンスタンドでバイトを始めて2年が経過したときだった。
