生まれて初めて。

幼い頃、当たり屋がいると聞いたことがあるが
今の時代にも
存在していたなんて

私は後部座席に乗っていた。

ガンというような音がしたので
運転していた方に
「なんの音でしょう。
 助手席のお荷物が落ちたんでしょうか。」
なんて悠長に聞いていた。

運転をしていた方は
スーッと車を止めた。

男2人と女1人

車が時計にぶつかった
時計が壊れた
1万円くれ
警察に言うなら言ってもいいぞ

そんなことを
ひたすら相手は繰り返していた。

ちなみに車は横断歩道の手前で
ほぼ走っていないに等しいスピード
というか停止していたかいないかくらいのタイミングです。

突如
「今5000円しかないんです。
それで勘弁してください。」

なんて

なに言ってるんですか。

「警察を呼ぶなり、どなたかに連絡を取るなり
しなくてよろしいんですか。」

思わず口を挟んだ私に
小声で「あたりや」
と
ささやきだけが
聞こえてきた。

「1番いい解決法ではなかったかもしれない。
 でも、費やす時間、労力を考えたら致し方ない。
 厄落とし。
 ああやって生活している人もいるのだ。」

その人たちが立ち去ったあと
車を運転していた方は
落ち着いた口調でそうおっしゃった。

なぜか納得した。