癒されるって、こういうことさ。 ー 「あなたになら言える秘密のこと」 | ​ 観るチカラを、生きる糧に。 ー SCREEN(私設)研究所

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観る映画が、あなたの、わたしの、人生のヒントになる。
ここは、SCREEN(私設)研究所。

潜在数秘術×映画で
「観る」ことと心の関係を
映画を通して読み解いていきます。

2005年のスペイン映画

「あなたになら言える秘密のこと The Secret Life of Words

観るたび

癒されるって こういうことなんだよな。

と感じる映画です。



★★★★



とある街で ひとり暮らすハンナは

職場でも家でも 誰とも口をきかない

上司から半ば強引に 休暇を取らされ

港町までやってきたが やることがない



看護師を探す男を見て 手助けを申し出る

場所は遥か海上の油田掘削所

患者は 骨折と火傷を負った男ジョゼフ



目が見えない彼は

好奇心からか 次々問いかけてくる

答えず 名前すら告げず

淡々と仕事をするハンナ



だけど “海の孤島”の 風変わりな住人たちと暮らすうちに

彼女は 少しずつ心を開いてく



★★★★



「名前は コーラじゃない?」

なんて言われて

「(はいそーです)コーラでいいわ」

と返すあたりが

おねーさん、仕事終われば帰る気満々ですw



傷つき 悩む人はそう

もとより 傷も悩みも 晒す気などない

話したところで どうなるもんでもないと思ってるし

傷の深さの分だけ 思い出したくもない


けど いつもいつも目の前に それはある

(だから「悩んでます」と誰かに言えるのは

実はかなり前進)



ハンナは 人の話には付き合っても

自分の、となると逃げる

他人に理解などされるものじゃないと

わかっているから


それでも 本の話のついでのように 話し始めたのは

《わかってほしい》と願う心の現れ



自宅と 会社を往復する日々から離れて

違う人に会い

人の話を聞き

人が作った食事を平らげ

人のジョークに笑う

…そんな下準備ともいえる

小さな変化があって


さらにジョゼフの秘密の告白」が後押しをした

だから 彼女の口をついて出たのね



その“ジョゼフになら言える秘密のこと”は

かなりの衝撃で

さらさらと 淡々と 話していく彼女に思わず

だっ、大丈夫かい?と声をかけそうに

いや、そんな隙もなく

独白は続き。



「友だちの名は?」と聞かれて

泣きながら「ハンナ」と告げる声

・・・死んだ友の名を 名乗り生きてるのか?と、これまたビビる

(本編は解説なし。事の真意は明かされず)



どちらにも取れますね

生き残った者の 恥じる気持ちが

親友の名を名乗らせる


親友を辱めたくない思いが

自身の名を名乗らせる


ご覧になった皆さまは

どちらと受け取るかしら?




いずれにせよ 目も見えず ベッドに縛り付けられ

自分が 世話をしなきゃ

ご飯もトイレも何もできない男が相手だったから 言えたのだなぁと

ジョゼフの手をとり

胸もとの傷痕に指をなぞらせる仕草を観て

じましたT^T



ジョゼフも

視界を塞がれ 暗闇の中でそれを聞き

ハンナの涙に 傷に触れた


だから カウンセラーから

「ロマンティックね」と一蹴される行動にも 出られたわけね♪



秘密の告白が 衝撃的すぎて

エンドロールまであっさりすぎて

観てるこっちは 色々追いつかず

…魔法かお伽話でも観ているような 気持ちになるけど



いつもと 違う場所へ行き

いつもと 違う人に会い

いつもと 違うものを食べ

いつもと 違う音を聞き

いつもと 違うものに触れる

いつもと 違うことを話す

ハンナの場合は

頭の中のひとり会話を離れ

ジョゼフと話したこと



それから 相手の秘密を知ったこと

親友の女を愛したこと、父から受けた仕打ち



だから、自身の“秘密のこと”を口にできた

自身の外に出して

一緒に眺めてもらった

見えない彼には 触れてもらうことでね



ラストシーンの彼女は

ニコニコ笑いでもなく

テンションUPさぁ行くぞー!でもない


ただ只 静かな時間の中にいる


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癒される時って

映画を観ての感情の上がり下がりとは

違うところ、なのよ。


もっとずっと、静かなの。

びっくりするくらい静か。

深海のようにね。



それも、数の仕合わせ。


★★★☆☆


《かずの葉の庭》主宰

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