『故 星野道夫に捧ぐ』
撮影を予定していた人が突然いなくなったことを告げて、映画は始まる。
ザワザワと心を波立たせられて、これ以上この話を聞いていたらオロオロしそうなタイミングで、
カメラはフリーマン・ダイソンを追ってカナダ・ハンソン島へ飛ぶ。
初めて観た時には分からなかったこの構成が、今ならよくわかる気がするから不思議だ。
・・・フリーマンとジョージのことは、さらっと触れただけで終わってしまうけど
ここから、「宇宙船とカヌー」につながったからね。
改めて解説を聞いていると
ミチオとジョージとナイノアは同年代なのよね・・・
フリーマンの、深いけど、どこか楽観的にも聞こえる言葉は
未来を信じているんだな、と思わせてくれる。
そう、フリーマンの言葉にホッとしたのもつかの間
また、さっきの心のざわつきに戻ってしまうんだ。
ここにいない“ミチオ”を追う旅・・・
彼が心惹かれたアラスカの人々をカメラは捉え、皆それぞれに彼を語る
そこに、悲しむ気持ちはあるけれど、誰もが、彼を近くに感じているようで
・・・軽くうらやむ気持ちさえ持ってしまうから不思議。
自分が、何に対して泣いているのか、わからなくなってくる。
2003年からシンクロしていた、東京プロフェッショナルズ主催の上映会
あの頃はただただ、ボロ泣きしてただけだったような記憶しかないけど
KNOBさんのディジュリドゥとのシンクロは、第三番だけじゃないからもう数えきれないくらいで…
ただあの時は、ある意味現実逃避もあったなーと、今は思う。
母が逝って、受け止めきれなくて
父と、兄とも向かい合う勇気も持てずにいて。
その、泣くのに忙しくて素通りしていた部分が
あるシーンだったり、ある言葉だったり、するすると入ってくる感じ。
この映画を初めて観た頃
私には「死」は遠いもので、近く感じるような出来事もなかった
今は、ボブ・サムのくだりやウィリー・ジャクソンの言葉が
遠い遠いアラスカの誰かの言葉、ではなくて
ずっとずっと、確実に、近い。
『魂を語ることを怖るるなかれ』
どこにいても、どことでもつながっているって考えられるなら
ずっとずっと、楽に「ココに」居られる。
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