いつまでもたくさんー「モンド Mondo」 | ​ 観るチカラを、生きる糧に。 ー SCREEN(私設)研究所

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観る映画が、あなたの、わたしの、人生のヒントになる。
ここは、SCREEN(私設)研究所。

潜在数秘術×映画で
「観る」ことと心の関係を
映画を通して読み解いていきます。


・・・彼は、気に入った大人にこう聞く
 「僕を養子にしてくれる?」
大人は皆一様にいぶかしむ。
 「年はいくつ?」
 「家はどこ?」
・・・そんな問いよりも先に、彼は姿を消してる。



・・・彼の友達は皆、彼の笑顔に笑みを返す人。
ホームレス、釣師、パン屋、大道芸人、郵便夫・・・
いつの間にかこの町の住人となっていたモンド。

廃屋だろうか、人気のない庭で彼が昼寝をするシーンが好きだ。
気配を感じたロシアンブルーが耳をすます。
庭のあちこちに置かれた石像の顔と、誰かの囁く声。



友人がくれたこの映画の感想を読んだ時、ああそうか、そう見る人もいるのかとひどく納得した。
モンドという身寄りのない子供がいつかどこかで幸せになってくれたらいいな・・・
なんてことを、私は露ほども思わなかったから。
それよりも、この南仏ニースの町を歩き回る彼を見逃したくなかった。



・・・読み書きのできない彼に釣師は石を削りアルファベットを教える
  Mは山のかたち
  Oは暗い空に出る満月
  Nはノン(名前のない) 手をあげて挨拶をする
  Dは半月のかたちをしてる
  Oは暗い空に出る満月
モンドは自分の名前が刻まれた石をポケットにしまい、繰り返しつぶやいて初めて字を覚える。



モンドが笑みをなくし野良犬のように拾われてこの町を去った後、彼の身を案じていた老女は庭にモンドが字を刻んだ石をみつける。
  「いつまでも たくさん」
・・・あぁ、逃したくなかったのはこれか、と思い至る。



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やっとこさDVD化のもよう。
↓この機会にぜひ。







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原作はル・クレジオ
「海をみたことがなかった少年 モンドほか子供たちの物語」



後からこの原作を読んだ時、トニー・ガトリフという監督はこのお話を見事に映像にしてくれたんだな、と感じました。
主な登場人物がジプシー、大道芸人、路上生活者とみな役者じゃない、というところもいい。観るべし。