推薦図書「最強の系譜 プロレス史 百花繚乱」 | パラエストラ吉祥寺&パラエストラ渋谷    

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格闘技史研究家として知られる那嵯涼介氏により、今月上梓されたばかりの一冊。

カール・ゴッチやビリー・ロビンソンといったランカシャースタイル(キャッチ・アズ・キャッチ・キャン)の継承者たちの事績を軸に、プロレスリングの枠に止まらない屈指のコラム集である。

 

ランカシャースタイル「中興の祖」とも呼ぶべきビリー・ライレーのジムについて、これだけ調査を重ねた文献を、筆者(高谷)は知らない。

かつてブラウン管の中でゴッチやロビンソン、さらにはピート・ロバーツやスティーブ・ライトらが垣間見せていたサブミッション・レスリングの所作は、現代の「グラップリング」試合よりも遙かに芸術性があったと長いこと感じていたが、然りと思わせる説得力がある。

また、現代MMAの黎明期にロビンソンがインタビューで語っていたことがある「オールインワン」。

その実像も、同書によって詳らかにされている。

それはヴァ―リトウードのように原始的な闘いであったのか、はたまた現代MMAのように洗練されていたのか、幻想と興味は尽きないところだ。

 

プロレスラーとしての木村政彦の知られざる海外での活躍についても明らかにされている。

「増田史観」を否定するわけではないが、プロレスラー木村政彦も決して人生の汚点ではなかったのではないだろうかと思わせてくれた。

時には「キナ臭い」相手との闘い(シュートマッチ?)もあったのではないかと言われる木村。

今後、海外にて映像などが発掘されることも期待される。

 

同書の第四章は「JIU-JITSUは果たして敵なのか-日本柔術とキャッチ・アズ・キャッチ・キャンの遭遇-」。

前田光世や谷幸雄ら海外雄飛を果たした明治日本の柔術家たちが、レスラーと交差することは必然であった。

その対戦や交流は、単なる物語としても血沸き肉躍るものである。

そして同章の締めには、著者の友人である研究者の「英国のキャッチ・アズ・キャッチ・キャンと日本の柔術は、どちらか片方が一方的に与え続ける親子という関係ではない。お互いの優れたものを分かち合う、いわば兄弟のような関係なんだ。」といった言葉が紹介されているのだ。

さて、筆者はブラジリアン柔術家を自認している。

文中の「柔術」は講道館や天神真楊流といった流派を表しているのはもちろんであるが、現代においては「ブラジリアン柔術」を当てはめることも出来るはずだ。

ブラジリアン柔術家として「IBJJFルール」や「ノーギ」などといった枠に拘らず多くのものを取り入れることが肝要だと、あらためて思わされた。

 

興味としての読みごたえはもちろん、実践者として大いに感化された一冊。

著者に敬意を表しつつ、ぜひ多くの人に一読してほしいと思う次第である。