大人の鼻をあかしたかったら、本を読め

大人の鼻をあかしたかったら、本を読め

東野圭吾、道尾秀介をはじめ、ミステリー大好きatomuの読書日記

大人の鼻をあかしたかったら、本を読め
by 東野圭吾


児玉清さんと東野圭吾さんの対談の中で、
児玉さんの「本を読まない子供にアドバイスを」という問いかけに対する東野さんの答え。
「いい言葉だなぁ」と思ったので、ブログのタイトルに拝借しました。

本『児玉清の「あの作家に会いたい」人と作品をめくまる25の対話』(PHP)より


「大人の鼻をあかしたかったら、本を読め」にお越し下さいましてありがとうございます。
ここは、ミステリー大好きatomuの読書感想を書いているブログです。
ごゆっくりどうぞ。

最近読んだ本
本高野和明『13階段』
本道尾秀介『球体の蛇』
本大門剛明『雪冤(せつえん)』
本薬丸岳『悪党』
本道尾秀介「花と流れ星」
本東野圭吾「新参者」
本道尾秀介「鬼の跫音(あしおと)」
本東野圭吾「赤い指」

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13階段/高野 和明

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13階段 (講談社文庫)/高野 和明

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高野和明『13階段』(講談社)

第47回江戸川乱歩賞受賞作。

『13階段』は、そのタイトルに惹かれながらも、なかなか手にする機会がありませんでした。
正月休みに読む本を図書館で探していて、この本が目に入り、2010年の“読み始め”に選んでみました。
これまで多くの人に読まれてきたことでしょう。だいぶん痛んでました。

物語を簡単に紹介すると、
犯行時刻の記憶を失ったまま死刑判決を受けた死刑囚。事件には冤罪の可能性が。
手掛りは、死刑囚が思い出した“わすかな記憶”だけ。
刑務官の南郷と、前科のある三上が、冤罪を晴らすための証拠を求めて奔走する。
死刑執行へのカウントダウンが始まる中、二人は無実かもしれない男の命を救うことができるのか?
タイムリミットは、わずか3ヶ月!

タイトルは、死刑台に至る階段の段数のことだとばかり思っていました。
しかし、読んでみて、なるほど…こういう意味があったとは…!!(驚)

“死刑囚の冤罪を晴らすための証拠探し”をメインにしっかりと据え、サイドストーリーとして描かれる“人間ドラマ”が、いい味を出しています。
メインとサイドがうまく絡み合い、重厚な物語を織りなします。

証拠探しに奔走する二人のキャラが際立ってましたね。
死刑執行の経験を持つ刑務官・南郷を通じて、死刑制度の矛盾や危険性といった問題提起がなされます。

また、南郷と共に行動する三上は、かつて人を殺め、傷害致死罪により服役していました。
加害者である三上を登場させることにより、実際に与えられる刑罰と、被害者遺族の望む処罰との隔たりが描かれます。

脛に傷を持つ者たちを探偵役に配することで、彼らの抱える苦悩が浮き彫りになっていきます。
これが功を奏していたのではないでしょうか。

また、彼らが証拠探しに乗り出す動機。決して慈善事業のためではなく、高額の報酬が約束されていたからでした。
「とにかく金が欲しい」、「その金で人生をやり直したい」そんな切実な願いがリアルに響きました。
このシンプルにして身も蓋も無い動機づけが、抜群の説得力を伴い、読ませます。

いやぁ、噂に違わぬ出来でした!!
良質なミステリーの見本といった感じでしたね。
あれもこれも、色んなものを詰め込み過ぎてないところに好感が持てました。
何でこんな面白い本を今まで読まなかったのか…。
“ミステリー通”を名乗るにはまだまだですね(笑)

新人作家の場合、多少割り引いて見てあげなきゃいけなかったりしますが。
高野さんの場合はそんな必要もないくらい、デビュー作にして完成されている印象を受けました。
読んでて映像が浮かんでくるんですよね!

ちょっとしたお宝を掘り当てた気分です(笑)
今後も、新刊だけじゃなく、こういった掘り出し物を見つけていきたいですね。それこそ南郷と三上が執念で証拠を探し当てたように(笑)

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球体の蛇/道尾 秀介

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『球体の蛇』道尾秀介(角川書店)

『鬼の跫音』、『龍神の雨』、『花と流れ星』に次ぐ今年4作目となる『球体の蛇』の登場です。
こうして4作を並べてみても作風のかぶるものがありません。
一人の作家が一年間に書いたとは思えない、多彩な作品が揃いました。

今回紹介する『球体の蛇』は、“非ミステリー”という触れこみとなっています。
しかし、広義では“ミステリー”と言えるのではないでしょうか。
“大量に散りばめられた伏線”、“大掛りな仕掛け”といった道尾作品おなじみの“売り”は封印されています。
にもかかわらず、どんでん返しの瞬間を「今か! 今か!」と心待ちにしながら読んでしまいました(笑)
トリックに頼らず、物語一本で勝負。そんな意気込みからは道尾さんの自信がうかがえます。

物語は、ある人物の葬儀に向かう主人公(友彦)が、16年前を回想するという形で綴られます。
17歳だった友彦は、年上の女性、智子に強烈に惹かれていきます。
友彦が“ある真実”を告げず、智子が“誤解”したことから二人は急接近することになります。それは恋とは呼べないものだったのかもしれません。
智子のことは忘れえぬ想いとして、友彦の記憶に刻まれることになります。

「呑み込んだ嘘は、一生吐き出すことは出来ない。」
…帯のコピーにあるように、さまざまな“嘘”が出てきます。ずるい嘘、優しい嘘、偽善…。
伝えるべき言葉を呑み込んだことで、真実が見えなくなり、結果として誰かの人生が狂ってしまうとしたら…。嘘を重ねながらも生きていかなければならない悲哀。多くを語らないことが美徳とされつつも、敢えて告げなかったことが、悲劇を生むとしたら…。
そんな静かな“怖さ”が丁寧に描かれています。

道尾さんと僕は同い年(昭和50年生まれ)。
登場人物も同じくらいの年齢が多いです。
“青春真っ只中”よりも“青春時代の終わり”が描かれたものが好きです。他に『ラットマン』なんかもそうでしたね。
道尾さんが描く青春時代の終焉はたまらんものがあります。最近センチメンタルで嫌になります(笑)

球体のガラスに雪景色のジオラマを閉じ込めた“スノードーム”、
サン・テグジュペリの『星の王子さま』からの引用
『ラットマン』で心理学を巧く応用したように、道尾さんは、引用力や応用力のある作家だと思います。
これらのアイテムが絶妙のタイミングで使われています。物語を美しく、そして哀しく彩ります。

今作は“十二支シリーズ”にあたります。
(子)ラットマン→(丑)鬼の跫音→(寅)鬼の跫音→(卯)●
→(辰)龍神の雨→(巳)球体の蛇(※)→(午)●→(未)●
→(申)片眼の猿→(酉)カラスの親指→(戌)ソロモンの犬→(亥)●
残り4つ、どんな作品になるんでしょうね?

『球体の蛇』とは変わったタイトルですが。
ラストでタイトルの意味が明らかになります。読了後、改めて表紙の装丁を眺めてみて下さい。凝ってますよ~(笑)

2009年、大きく飛躍した道尾さん。
来年も“非ミステリー”での挑戦は続くとか!?
読み始めに最適な一冊です。ぜひ、新しい年の一冊目にどうぞ!!

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『雪冤(せつえん)』(角川書店)
大門剛明・著(だいもん たけあき)

第29回横溝正史ミステリ賞&テレビ東京賞W受賞作!

タイトルにもなっている“雪冤(せつえん)”とは、“無実の罪を晴らす”という意味です。
僕も今回初めて知りました。

簡単にストーリーを紹介すると、
平成5年に京都で起こった残虐な殺人事件。容疑者は逮捕され、死刑が確定。
時効を間近に控え、獄中の死刑囚が発表した手記が契機となり、息子の無罪を訴える父親のもとに掛ってきた一本の電話。
「あなたの息子は無罪です」
いま、15年の時を経て、事件の真相が大きく動き出す!!

死刑制度や冤罪の問題に一石を投じる社会派エンターテイメントです。

松本清張と同じく、ことし生誕100年を迎えた太宰治。
作者はそこに目を付けたのでしょうか? 太宰の“誰もが知る名作中の名作”がモチーフとなっています。

死刑執行へのカウントダウンがはじまる中、事件関係者のもとへ自分こそが真犯人であるとの電話が掛ってきます。
被害者遺族の妹と加害者家族の父親、そして担当弁護士が協力し合って真犯人を追跡していくというのが何とも斬新でした。

あれもこれも詰め込み過ぎたんじゃないかという気がします。
さらに、物語中盤、中だるみしてしまいました。
しかし、ラストで怒濤のごとく繰り返されるドンデン返しには舌を巻きました。
中盤の中だるみは、嵐の前の静けさだったのかも知れません。

死刑囚となった息子は、なぜか父親との面会を拒否し続けています。二人の間には何があったのでしょうか?
このあたりの父子の物語はなかなか読ませるものがありました。

また、弁護士・石和洋次という人物が出てきます。
ホームレスを経験したこともあり、8回目の挑戦で司法試験に受かったという苦労人です。
人の心のわかる人物として描かれています。ぜひその後の活躍をシリーズものとして読んでみたいと思いました。

また、京都が舞台ということで、登場人物たちは京都弁を話します。
大阪弁とはまた違った、京都弁ならではの味を楽しんで下さい。

横溝正史ミステリ賞受賞は伊達じゃないと思わせる、読み応えのある作品でした。
こういうの、好きです。改めて再読してみようと思います。
大門さんの次回作にも期待しています。

“テレビ東京賞”とは、テレビ東京が映像化を前提として選出する賞だそうで、すでにドラマ化が決定しているとか!? こちらも楽しみです。

雪冤

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映画『ゼロの焦点』を観に行ってきました。

“原作 松本清張”、“主題歌 中島みゆき”という、僕からしたら夢のようなコラボ。
これは見過ごすわけにはいきません!!

観に行ったのは、東大阪・布施駅前の映画館「布施ラインシネマ」。
そう、東野圭吾の最高傑作と名高い『白夜行』の舞台となった地です。
(←小説は「近鉄布施駅を出て…」という出だしから始まります。)
ズバリ地元というわけじゃないんですが、昔からなじみのある場所なんですよ。去年、映画『容疑者Xの献身』もここで観ました。
駅前の喧騒を忘れ、ゆったり鑑賞できる穴場的な映画館といったところです。

映画『ゼロの焦点』は、ぶっちゃけて言えば“金のかかった2時間ドラマ”でした。
それはそれは、細部に至るまで贅を尽くしていましたね。
昭和30年代の原風景を求め、ロケは韓国にまで及んだとか!?

“安っぽい”、“ワンパターン”が“売り”の2時間ドラマ。
言うなれば“B級グルメ”といったところでしょうか。安い食材でもそこそこ美味しく仕上がります。
でもそこは“松本清張生誕100年”の今年。
敢えて、高級食材を使ってB級グルメの味を再現してみました、てな印象。
高級食材(2時間ドラマ臭の薄い役者陣、凝った演出)のおかけで、だいぶん底上げされていますが、そもそもはB級グルメ、2時間ドラマ向きの題材という感は否めません。

現在の2時間ドラマの黄金パターンを確立した記念碑的作品と言っても過言でない『ゼロの焦点』。
2時間ドラマの先祖ともいうべき作品なんです!
刑事や私立探偵以外の一般人(しかも女性)が探偵役を努めるというのも本作が初。当時、画期的なことだったそうです。
さらに、真犯人に辿り着く前に、読者(視聴者)を誤導するために怪しい人物を投入するという技を編み出したり。テレビの前に居ながらちょっとした旅行気分を味わえたり。
そして“断崖絶壁での罪の告白”。これはもう説明要らずでしょう(笑)これも本作が初なんですよ!
今の感覚で観ると、正直、古臭いですが、一度観てみるのも良いかも知れません。

僕は『ゼロの焦点』は、“女優を観る”映画だと思います。
広末涼子、中谷美紀、木村多江というタイプの違う3女優の共演(競演?)が素晴らしかったです!

広末は、東野圭吾原作の映画『秘密』を観て以来、「巧いなぁ~」って思っていました。
今回は、結婚一週間で夫が失踪、冬の北陸を訪ね歩く新妻という役柄。
火サスか何かで真野あずささんが演じているのを観たのが最初だっと思います。そのため、しっとりとした大人の女性が演じる役という印象がありました。
その後、NHKで、斉藤由貴が演じていたのを観た時、「斉藤由貴もこういう大人の役を演るようになったかぁ~」としみじみしたものです。「スケバン刑事」をリアルタイムで観ていた身としては、着々と演技派への道を歩んでいる姿が微笑ましくもありました。
果たして、広末にしっとりした役が出来るのか、って思っていたのですが。
でも、さすがは広末。持ち前の演技力で難無くこなしていましたね。
ただ、時折、顔が“加護ちゃん”と重なるのが気になりました(笑)

以前、ある雑誌の「不幸な役が似合う女優」ランキング1位という栄誉(?)に輝いていた木村多江。
(←ちなみに、僕の中で「不幸な役が似合う女優」は断然、桜井幸子です(笑))
今回の役は、そんな木村多江の集大成というか、十八番ともいうべきものでした。劇中では、なんとも悲しい笑顔を披露されています。
地味ながらも、着実に飛躍していってる女優さんですね。無理なく昭和30年代の雰囲気に溶け込んでました。

そして、特筆すべきは、中谷美紀です!
巧いのは周知の事実ですが、それにしてもいつからこんな肝の据わった女優になったんでしょうか? すっかり映画女優の貫禄でした。各映画賞を総ナメにしそうです。
綺麗に見せるだけが女優じゃないと思います。それならモデルでもいいわけですから。最近は、その境界が曖昧になってきてるような気がします。名ばかりの女優が幅をきかせる中、中谷美紀は、明らかに“女優”でした。髪の毛振り乱しての怪演には、久々に本物の女優を見た気がしました。これを観るだけでも観に行った甲斐はあったというもんです。

ラスト、たたみかけるように流れる中島みゆきの「愛だけを残せ」。
これ、めちゃめちゃ良い曲です。聴けば聴くほど味が出てくるという感じです。
余韻に浸りながら聴いていたかったのに。周りでガサガサ帰り支度を始める人たちが。さすが大阪のオバチャン。落ち着きも風情もあったもんじゃありません(笑)
まぁ久々の映画で、良い時間を過ごせました。
iPodで「愛だけ残せ」を聴きながら帰路に着きました。晩秋の冷たい夜風に中島みゆきの歌声は合いますね。

ゼロの焦点 (新潮文庫)/松本 清張

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薬丸岳『悪党』(角川書店)

2005年に『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞した薬丸岳(やくまる がく)の最新刊。
デビュー以来一貫して“被害者とその遺族”に焦点を当てた作品を描き続けている薬丸氏。今後ますますの活躍が期待される作家さんです。

元警官であり、現在は探偵の佐伯修一。
彼を主人公に、犯罪者と犯罪被害者遺族の心の葛藤を描いた社会派ミステリー。連作短篇の形で綴られています。

佐伯が働くホープ探偵事務所では、犯罪の被害に遭った人のために“加害者の追跡調査”というものを行っており、さまざまな依頼人がやって来ます。

十一年前、高校生だった一人息子を殺された初老の夫婦。
犯人は、息子の同級生。逮捕され、少年院に入ったが、その後の消息を知りたいという。

十六年前、母親に、アパートの一室に置き去りにされた幼い兄弟。弟は衰弱死し、兄はかろうじて生き延びた。兄は、弟を殺した母親を探し出して欲しいという。

かつて強姦事件の弁護を担当した弁護士が、元被告人がちゃんと更正しているかを知りたいという。

この他にもさまざまな依頼が舞い込みます。

そして、調査を行う佐伯もまた犯罪被害者遺族だったのです!
気乗りしないながらも、犯罪被害者や遺族、さらには加害者と関わることになった佐伯。
彼自身の抱える闇があぶり出されていきます。
そして、姉を殺した三人の男たちの行方を追っていくことになるのですが…。
“悪党”と対峙した佐伯は、何をもって罪を赦(ゆる)すことができるのでしょうか。犯人と同じような“悪党”にならざるを得ないのでしょうか。

遺族に加害者の所在を知らせたら、大変な事態を招くのでは?
復讐の連鎖を生むことになるのでは?
どうしてもそんな心配が頭をかすめますが。
「被害者、遺族は、やり場の無い怒りにどのように折り合いをつけていくのか」が最大の“読み所”だと思います。
重いテーマを扱いながらも、読後感は決して悪くありませんでした。

悪党/薬丸 岳

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『相棒』Season8 第2話〈さよなら、バードランド〉

大学を卒業して20年のジャズ研のメンバーたち。
3年に一度、同窓会旅行を続けています。

そして起こった殺人事件。
図らずも第一容疑者のアリバイ証人になってしまった特命係の二人。
腑に落ちない様子の右京さん。独自の捜査を開始します。
果たして鉄壁のアリバイを見破ることができるでしょうか?

卒業して20年も経つと、順風満帆な者と、行き詰まりを感じてる者との差が顕著になっていました。
第一容疑者は、学生時代、仲間うちでは最も優秀で、優しい人物でした。
しかし、彼の現状は、後者でした。
社会に出ると、きれいごとだけでは世の中を渡って行けないことを知ります。
結果、自分の欲望のために友人を利用にすることに罪悪感を抱かなくなるかのよう。
世知辛い世の中で、学生時代の友人とは損得抜きで付き合いたいもんだと思います。いつまでもあの頃のまま、というのは難しいんでしょうかねぇ…。
なかなか考えさせられる内容でした。

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『相棒』Season8 第1話〈カナリアの娘〉

今回からドラマ『相棒シーズン8』各話のレビューを書いていこうと思います。
どうぞよろしくお付き合い下さい。

僕が、ドラマ『相棒』を好きな理由のひとつに“良く出来た脚本”というのがあります。
毎回練りに練ったストーリーで、良質なミステリー短編を一本読んだ後ような充実した気分になれるんですよね。
目の肥えたミステリーマニアの鑑賞にも充分耐え得る内容なんじゃないかと思います。

さて、今回の話は。
“警視庁の警察官が他県で取り締まりをするはずがない”という、些細な違和感に目をつけた右京さん。
この人にかかったらひとたまりもありません。
ここから芋づる式に事件を手繰り寄せます。
この辺の話の持って行き方、上手いなぁって思います。
“赤いカナリア”なる革命家集団、国際的に指名手配を受けている人物、新たなるテロ計画、とスケールの大きな話へと展開していきます。
赤いカナリアの幹部と、その娘との、かなりひねりの効いた父娘の物語が見どころです。

テロリストだった過去を持つ父親という難役を演じるのは、古谷一行さん。
さすがです!!貫禄充分の演技で見せます。
「生物学的な意味合いでしかない父親」と言い捨てる娘役を内山理名さん。
一瞬ゾクッとするほどの美しさでした。心境地開拓ですね。
ゲストお二人の好演もあり、初回を飾るに相応しい、見応えのある2時間でした。
幸先の良いスタートだったのではないでしょうか。

寺脇さん卒業、右京さんひとりの『相棒』を経て、本格的に始動した新『相棒』。
今後及川さん演じる神戸とどんな相棒っぷりにを見せてくれるのか、見届けたいと思います。
まず注目したいのは、どのタイミングで呼び名が“杉下さん”から“右京さん”に変わるか、ですかね(笑)

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道尾秀介『花と流れ星』(幻冬舎)

このところ精力的に新刊を発表している道尾さん。
『鬼の蛩音』、『龍神の雨』に次ぐ今年3作目となるのが、この『花と流れ星』です。

真備庄介(まきび しょうすけ)シリーズにあたる今作。
『背の眼』、『骸の爪』という長篇を経て、シリーズ初となる短篇集の登場です。五篇が収められています。

“霊現象探求所”なる一風変わった事務所を営む真備庄介。
その助手の北見凜。
真備の友人で、売れないホラー作家の道尾。
この3人が、傷ついた心を持った人たちのために奮闘する姿が描かれています。
訊くところによると、前2作の長篇では、真備は“とにかく優秀な探偵”として描かれているとか!?
しかし、今作の真備は…。優秀な探偵というのはそのままに、適度にユーモアがあり、人間味溢れる人物として描かれています。

さらに、最後に収録された〈花と氷〉で、各話に登場する人たちが心に負った傷と、真備が抱えるものとが重なるのが分かるという構成になっています。

『背の眼』→『骸の爪』→『花と流れ星』と刊行順に読んでいくに越したことはないんでしょうが。
僕は前2作は未読のまま、今回初めて『花と流れ星』を手に取りました。
それでも十分楽しむことができます。
優秀なだけじゃない、人の心の分かる人物像に触れ、今では逆に読んで良かったと思います。
今後、遡って長篇を読んでいくのが楽しみになりました。

『花と流れ星』刊行のインタビューで、道尾さんは以下のように語っています。

「この本でもかわいそうな目に遭っている登場人物もいますよね。
小説家って、それを軽い気持ちで書いてはいけないと思うんです。
ミステリーには多いと思いますが、人の死ではなく死体が書かれている小説というのは、僕は面白くないと思う。
生きている人間に対してこういう運命を背負ってもらうんだという気持ちで書いているので、作家がそれを実行するための唯一の免罪符は、そのキャラクターに感情移入して、好きになって、想いを共有することだと思うんです」


このインタビューを踏まえて読んでみると、道尾さんの優しさ、小説に込めた想いがより伝わってくるのではないかと思います。

花と流れ星/道尾 秀介

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東野圭吾 待望の最新刊『新参者』を読みました。

(本の帯より)
日本橋――江戸の匂いも残るこの町の一角で、ひとり暮らしの40代の女性の絞殺死体が発見された。
「どうしてあんないい人が…」周囲がこう声を重ねる彼女の身に、いったい何が起きていたのか。
着任したばかりの刑事・加賀恭一郎は、事件の謎を解き明かすため、未知の土地を歩き回る。

『新参者』は、小説現代に5年(!!)にわたり不定期連載していました。

九篇収録されていて、全体を通じてひとつの事件が描かれています。
いわゆる“連作短編集”というやつです。

         すべてに連なるテーマは“人情”

そのためか、人情モノの時代小説を読んでるような印象を受けました。
タイトルも、それっぽいですしね(笑)

ミステリー色はやや弱いものの、人間ドラマとして読ませます。
いずれも佳作以上の出来だと思います。
年老いた母に対する息子の思いやりが沁みる《煎餅屋の娘》、
折り合いの悪い嫁姑ながらも最後はホロッとさせる《瀬戸物屋の嫁》、
殺害された母親の、息子への愛情溢れる《洋菓子屋の店員》、
妻を幸せにできなかった元夫の苦悩と家族再生への希望に満ちた《清掃屋の社長》、
これらは読んでいて温かい気持ちにさせてくれました。
そして、最終章《日本橋の刑事》。
「かわいがることと大切にすることの違い」について、教わりました。
もう目から鱗がボロボロ落ちました。
愛するがゆえに心を鬼にしなきゃいけない場合ってあるんですよね。
これは先日文庫化された『赤い指』の前原父子にも通じるところがあります。
あわせて読んでみるのも一興ではないでしょうか。
ラストを飾るに相応しい作品でした。

人は誰でも最初は“新参者”です。
今回の加賀刑事のように、街に馴染み、人と出会い、少しずつ根を張るかのように自分の居場所を作っていくんですね。
もうひとりの“新参者”峯子さんも、その最中だったんですが…。
あの勘違いも、事件さえ起こらなければ、後で笑い話になっていたでしょうに…残念です。
三井家の人たちのこれからに光が見えた気がしたのが救いです。

全体的に“薄味”ですが、ひとつひとつの話には旨味が凝縮されています。
一冊で九度おいしい。
まさに“人情”づくしの懐石料理!!
贅沢な一冊を堪能しました。

この本にはさまざまなかたちの“人情”が詰まっています。
これからも読み返していきたい一冊になりました。

秋の夜長、とびっきりの“人情噺”に浸って下さいね!!


新参者/東野圭吾

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道尾秀介 初の短編集『鬼の跫音(あしおと)』(角川書店)。

ここ最近の道尾作品とはだいぶん趣が違います。
初期の頃にはホラー色の強いミステリーを発表していた道尾さん。
ホラー系もいける作家だということを忘れていました。
今回は道尾さんの原点回帰といったところでしょうか!?

六篇収録されていて、それぞれ独立していますが、以下の3つの共通点を持っています。

◆“鴉(からす)”が、凶々しさの象徴として、妖しく物語を彩ります。

◆各話には“”なる人物が登場します。
年齢も、時代も、場所も越えて、主人公を翻弄し、物語を面白くします。

◆各話の主人公は、“鬼の跫音(あしおと)”を耳にしています。
これが何を意味するかは、ぜひ読んで確かめてください。

それぞれの作品を簡単に紹介しますと…。

<鈴虫>
松本清張が書きそうな話という印象を受けるも、道尾さんらしい“ひねり”が効いた作品。

<犭(ケモノ)>
2作目にして早くも読む者の心臓をえぐるかのような作品が登場。
浪人生の“自分探し”の物語と思いきや…叫び

<よいぎつね>
過去と現在、虚と実が入り混じった幻想的な世界が展開する。
20年前に犯した罪に復讐される男の話。

<箱詰めの文字>
奇妙な訪問者の出現により、作家の“秘密”が明らかになっていく話。もちろん一筋縄ではいきません。
ラスト3行がいまいち分かりませんでした。ご存じの方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えて下さい(笑)

<冬の鬼>
日本の“ある名作”を彷彿とさせる作品。三味線の撥(ばち)も出てくるし(笑)
少し前の純愛ブームに「待った」をかけるような、“一途な想いの怖さ”を描いた作品。
日記形式なんですが、1/8から1日ずつ遡っていくという、一風変わった手法が用いられています。これが怖さを引き立てています。

<悪意の顔>
何でも封じ込めることができる不思議なキャンバス(油絵を描くのに用いる画布)にまつわる物語。
“裏・ドラえもん”ともいうべき作品(笑)
この道具を悪用してジャイアンをやっつけようと考えたのび太。
のび太、ジャイアンの運命や、いかに!!
そして、ドラえもんは…!!

“ミステリー”とひとくくりにはできない多彩な貌(かお)を持った作品が収められています。
悪夢にうなされた後のような“目覚めの悪さ”が残ること必至!!
いや~な気分を味わうために本を読むというのもたまにはイイですね!!
道尾版「世にも奇妙な物語」を楽しんで下さい。ドクロ

鬼の跫音/道尾 秀介

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