東野圭吾「赤い指」 | 大人の鼻をあかしたかったら、本を読め

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東野圭吾、道尾秀介をはじめ、ミステリー大好きatomuの読書日記

「赤い指」の文庫本が発売されたので再読してみました。

「容疑者Xの献身」以降、いい意味でシンプルになったなぁ、なんて思っていました。
「赤い指」は、その傾向が顕著にあらわれた作品です。
地味めで、目新しさは無く、どちらかといえば短編向きの題材といった印象を受けました。

それもそのはず、でした。
これは後で知ったことなんですが、「赤い指」は“短編”として雑誌に掲載されたことがあったそうです!!
しかも、短編集「嘘をもうひとつだけ」に“6つ目の作品”として収録予定だったとか。
(その“幻の短編”を読んでみたい気もします…)

ありふれた食材でも東野シェフの手にかかると、味わいのある料理に生まれ変わります。
読ませる長編として膨らませ、感動の物語にまで高められています。

嫌でも注目される直木賞受賞後第一作に、この「赤い指」を持ってきたことに、東野さんの自信を感じます。

「赤い指」は、東野作品でおなじみの“刑事・加賀恭一郎シリーズ”です。

入院中の父、隆正の見舞いに現れない恭一郎。
従弟で、同じく刑事の松宮脩平は、恭一郎に対し、怒りさえ感じていました。
「卒業」(講談社文庫)では、現役の刑事だった父(隆正)と大学生だった息子(恭一郎)との無器用だけど温かいコミュニケーションが描かれていたのですが…。
加賀父子の間に何があったのでしょうか?

前原家は、内に様々な問題を抱えていました。
それを見て見ぬ振りしてきた結果、大変な事件を引き起こしてしまいます。
自分のしでかした事の重大さを分かっていない息子。
息子を溺愛し、世間体ばかり気にする母親。
息子可愛さのあまり、隠蔽工作に手を染める父親。
そして、痴呆の気がある祖母…。
加賀刑事は、ただ事件を暴くだけでなく、“家族の真実”に目を向けさせようとします。

我が子が犯した罪を隠蔽しょうとする父親に、恭一郎と松宮が挑んでいく本編、
加賀父子の間に横たわるわだかまり(?)が描かれるサイドストーリー、
これらが密接に絡み合い、感動のラストを迎えます。
ページをめくる手は止まりませんでした。一気読みになること必至です!!

恭一郎が松宮に、
「……大事なことは、理解できなくても尊重することだと俺は思う」
と語ります。
すごくいい言葉です。
難しいけど「こうありたい」と思います。
東野作品にはグッとくる言葉がたくさん出てきます。
いつでも読み返せるように、名言と思ったものをケータイメールに打ち込んで保存してあります。
僕にとっては、下手な啓発本より東野本です(笑)

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