【19話】『ある豪勢なお屋敷で』【web小説】 | 浅田瑠璃佳@物書きブログ✡✡言の葉の楽園✡✡

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菜月(なつき)が和雄(かずお)に想いを伝えてからも、二人は時折、また以前のように、屋敷の中庭で落ち合っていた。


菜月はそんな穏やかな日々が、いつまでも続くものだと思っていた。


しかし、恐ろしいほどに。

恋というものは時に、人を狂わせてしまう。


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夏の暑さが嘘のように過ぎ去り、秋の涼しさに変わりつつあった、ある夜。



和雄の部屋に、菜月はいた。

彼女は窓の外の、激しい雨の様子を眺めていた。


和雄は部屋のソファーに座り、本に目を落としている。


「……すみません、もうそろそろ行きますね。」


菜月がおもむろに、和雄に声をかける。

その声に、和雄が本から顔を上げる。


「……もう、部屋に戻るのか?」


「……はい。 本を貸してくださり、ありがとうございました。」


「……。」


菜月は部屋を出ようと、ドアの前まで進む。


「(……でも、本当は………、本当は出ていきたくない。

離れたくない……!)」


思いを噛み締め、その場に立ち尽くす菜月。

その姿を、和雄は黙って見つめる。


「……何とも解せない。」


「……え?」


和雄の声に驚いて振り向く菜月。


「……当たりか。」


「……あなた様は、私の心を読める力をお持ちなのですか?」


「……いや、あくまで予想に過ぎない。」


「……あなたの読み通り、です。」


しばし見つめ合う二人。


「……出て行きたくないのなら、ここにいればいいじゃないか。」


和雄の言葉に動揺する菜月。


「……和雄さん、何をおっしゃいますか……あなたという人は!」


菜月の語気が強くなる。


「……落ち着け。」


「お、落ち着けるわけないでしょう。 あなた様だって分かっているでしょう!?

御曹司とメイドが二人きりで、長く同じ部屋にいるということが、どれだけ……許されないことか。」


「……お前、また泣きそうな顔をしている。」


「……!」


「……また前に言っていた、周りの目というやつか。」


「……そうですよ……。」


菜月は複雑な思いを胸に、和雄を強くにらみつける。


「……あなた様はやはり分かって下さらない、いつまで経っても。」


「……。」


「……あなた様と私では、やはりお立場が違うのです。 だから……遠い。

あなたとの距離は、あまりにも遠いのです。」


「……?」


「私がどんな思いで、部屋から出て行こうとしているのか……。」


「……やはり、解せない。」


「まだ、おっしゃいますか。」


菜月はそう言い、部屋を出て行こうとドアに向きなおった。


次の瞬間。


和雄は、菜月の背後にたたずんでいた。


吐息も、心臓の音でさえも聞こえてしまいそうなほど、すぐ近くに。


「……こんなに近くにいるのに、どうして遠いんだ……?」


和雄の言葉に、驚くより先に涙がこみ上げる菜月。


「……。」


「……お前の望みは何だ……?」


その和雄の思いがけない言葉に、菜月の中で何かが切れたような気がした。

そして、ある思いに支配された。


今までに抱いたことのない、どす黒い感情に。


「……私の望みは、あなたです。」


涙が菜月の、頬を伝う。


「あなたを、手に入れたい。」


そう言って振り向いた菜月の目は、強く和雄を見つめていた。


「……では、お前の望み、叶えてやろう。」


そう言って、和雄はゆっくりと菜月を抱え、ベッドに運ぶ。

この時の菜月の表情は、一体どれほど恍惚としていただろうか。


外は雨が激しく降りしきる中、和雄は言葉通り菜月の望みを叶えた。


菜月は和雄を、肉体的に手に入れたのである。


一夜を共にした二人。


この先二人を待ち受ける困難など、この時はまったく、知る由もなかったのであった。



To be continued



ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

物語の続きを、どうぞ楽しみにお待ちください。



~追伸~

TATSUさん、メッセージありがとうございます花束

白石監督が仮面ライダーですかびっくり

どんなふうになるか楽しみですねルンルン



カメrurikaカメ