専門家のママからママたちへのメール(1) | とりあえず

職場の同僚のママ友に原子力の専門家がいらっしゃり、先日来の彼女からのメールを送ってくださいました。


数日分の疑問がその時々のベストソリューションとして書かれていますので、数回に分けてアップします。ご本人の承諾を得ているとのことなので、メールの文章を以下にそのまま掲載させていただきます。


●第1通目● 315417分送信 


私の専門や仕事について、御存知の方も御存知じゃない方もいらっしゃるかと思いますが、諸事情といいますか、歩んできた道のせいで(ふらふらと大学や学部を渡り歩いていたので)、すっきりと説明できないのですが、私の肩書のひとつには「原子力有識者(原子力に関連する技術や知識についての「知りたい」に応える)」です。


その「原子力有識者」という一専門家(のはしくれ)として、今回の地震による東京電力の福島第一あるいは第二における状況を一専門家として予想できなかったことに、深い責任を感じる中、ちょっと長くなりますが、お伝えしたいことがありメールしました。


少々身勝手にも感じますが、よろしければご一読ください。



まず、原子力発電所に関する件ですが、私がいくつかみなさんに解っていて欲しいということを以下に3点書きます。


ž 放射線は、測定する機器の感度が大変に高いため、少しでも感知されます。数値が通常の○倍、あるいは、「被曝」といった情報が流れますが、その数値が実際に健康上心配するべきものであるかの議論は全く別の次元です。

 

ž たとえが適切かはわかりませんが、塩分の取り過ぎはよくないといわれる一方で、塩分を取らなければ死んでしまうのと同じように、人も被曝なしでは生きられない=普段から宇宙線や大地から、あるいは食料からなど、誰でも被曝をしています。またレントゲンの撮影などでは、医療のためとはいえ、通常の状態からすれば、大量の被曝を瞬間に受けていることになります。避けなければならないのは健康に害をもたらすような大量の被曝です。すでに発電所職員をはじめとする「被曝」の情報がありますが、いずれも健康に害をもたらすレベルではありません(とはいえ、余計な被曝はさけるために、身体を洗うといったような「除染」という作業が行われています。福島県双葉町にある双葉厚生病院で自衛隊のヘリコプターによる搬送を待っていた方3人が被曝なさいましたが、彼らにも除染作業が行われました)。被曝については、人体実験がなされたことはありませんが、原爆を含む過去の経験で、どのあたりまではどういった症状がでるのか/でないのかの知見は十分に積まれています。


ž 避難指示の20km圏内という数値は、過去の事故(1979年のアメリカスリーマイル島)などを参考にしながら、より安全を取る数値として、気象データなども含む予測線量を基づき国が決めました。被曝は風で運ばれる放射性物質によって引き起こされますが(よって、遠くなればなるほど放射能は薄まります)、福島と東京のあいだは200km以上離れています。


みなさんの中には被災地あるいは原子力発電所による避難地域が御実家という方もいらっしゃるかと思われます。


もし、質問などあれば遠慮なくお送りください。

私もすべてわかるわけではありませんし、忙しさの中で回答できないこともあるかと思いますが知人、友人が原子力発電所の現場あるいはその対応に命を懸けて取り組む中、今私にできることのいちばんは、少しでも多くの方の質問、疑問に応えることではないかと思っています。


むやみに安全であると繰り返すつもりもありません。

ただ、東京という被災も少なく、被曝の危険も少ない土地で、少しでも問題を整理して冷静に考えるために役立てればと考える次第です。



以上