至上の愛

We Bring You Home

 

ベンジャミン、婚約者を連れ帰国する・・

 

大西洋を越えアメリカ領海目前になると、客船は航行速度を落とした。帰還する軍人の

渡り乗りが洋上で行われるようで、船内は少々騒がしくなった。それを誤魔化すためか

甲板に流れる船内ラジオの曲が場違いなほど明るくなった。アメリカ人なら誰でも

知ってるに南部の軽快な民謡だ。途中付き添って航行していた警備艇に、別れを

告げる人々が小雪舞う甲板で旗を振っていた。

 

「昔は楽団が国歌演奏した後、シャンパンがふるまわれたり

ダンスしたりして大騒ぎしてたんだけどな、なんか遠い昔のようだよ」

 

楽団のいない客船・・

婚約者ウナ・クルースを連れ帰国の途にあるベンジャミンが、

ほんの数年前のことをため息を交え、懐かしそうにつぶやいた。

 

「私、クリスマス休戦なんて噂だろうと思ってたけど、こうしてアメリカまで無事

渡れたわ。情報収集してくれたあなたのお父様や秘書に改めて感謝しなきゃね」

 

「でも現実は戦争中なんだ、ほらみて、

横付けの病院船から軍人たちが乗り込んできた」

 

「まあ、本当だわ」

 

二人は船に架けられた鉄橋脚を見下ろした。航行しながら係留された客船と

軍の病院船に渡された橋脚では数人の若い軍人が忙しく行きかっていた。

しばらくすると従軍牧師が姿を見せ、その後ろには国旗に包まれ白薔薇とともに

船倉へと運ばれる棺がいくつかあった。甲板には無事領海へと入ることを

喜び合う人々がいたが、その光景に一瞬で静まり、皆胸に手を当て鎮魂の祈りを

捧げた。その間にも担架に乗せられた傷病人や疲労の色が濃い軍医看護婦数名、

大型の通信機や軍用犬たちがこちらの船へと渡ってきた。

 

「牧師様もいらっしゃるわ。あの軍人さんは

酷いお怪我されたのかしら、大事ないといいけど」

 

「そうだね」

 

ベンはウナの言葉に重々しくうなずくと、目の前の光景に胸を痛めた。

傷ついた軍人の姿がどうしても兵学校にいる従弟のジルを連想させてしまうからだ。

 

「こちらでしたかベンジャミン様、間もなくアメリカ領海へと入りますことを

ご両親皆様にお伝えして参りました、それとウィリアム様より電報にてございます」

 

ベンの執事スチュワートが少し顔をこわばらせながら

「シカゴより急ぎの用だそうです」と付け加えた。

 

「ありがとう、何事もなければ明日には54番埠頭だね。ニューヨークは雪かな?

きっと今頃シカゴの家では、僕が連れて帰る婚約者の到着を待ちわびてるはずだよ」

 

「ああやっと皆様に会えるのね、少し不安もあるけど楽しみの方が大きいの」

 

「うーん不安というのは、以前話した庭に住んでる野生のスカンクのことかな?」

 

ベンは場を和ませるよう冗談を言いながら、秘書スチュワートから受け取った

電報用紙を読んだ。読み終わるや否や表情をがらりと変え、先ほど見降ろしていた

橋脚をもう一度見やった。場はすでに補給物資の積み込みに代わっていた。

 

「二人は今、乗り込んできたあの中にいるのか!」

 

「はい、電報に御座いますように、先ほど棺の付き添いでこちらの船に乗り込んだ

従軍牧師なのですが、どうやらゴードン牧師のようです。それと訓練航海中でした

ジョエルさまも、病院で治療を受けるため、こちらにご乗船された模様です」

 

「ジルが負傷したとあるが、相当悪いのか?」

 

血の気が引いたベンは先ほど目にした、担架で運ばれる軍人を咄嗟に思い出した。

もっとよく見ておけば、従弟と分かったのだろうか・・

 

「ゴードン牧師につきましては、宗派の交代による

クリスマス休暇と伺いましたがが、ジョエル様のご容態は」

 

「知ったからには居ても立っても居られない。なんとしてでも

ジルとゴードン牧師に面会できるよう、取り計らってりくれないか」

 

「では軍関係者と交渉してみます、しばしお時間を」

 

スチュワートはシカゴからの報告を終え下がろうとしたが

ベンは周囲をはばかるような低い声でもう一度呼び止めた。

 

「アードレー家の名を出しても構わない、必要なら金を握らせろ」

 

「承知いたしました」

 

若き主人に命じられたスチュワートは踵をそろえ恭しく頭を下げたが、

内心驚きを隠せなかった。アードレー家の双子の長男ベンジャミンは、

どちらかといえば温和な性質を持つ好青年で、かつて仕えていた

ニールと比べれば高圧的な態度はみじんの欠片もない。だが一瞬、

柔和な雰囲気が一切消えた表情をしたのだ。歳若き主人が垣間見せた

意外な一面に、留学期を傍で仕えてきたスチュワートは、己の目と耳を疑う

ほどの衝撃を憶えた。反面、誇らしくもあり嬉しくもあり複雑な心境にもなった。

 

スチュワートの姿が見えなくなるとベンは、心配顔で成り行きを見守っていた

婚約者ウナに、シカゴから届いた電報の内容と経緯をかいつまみ説明した。

 

「まだ詳しいことはわからないけど、従弟のジョエルは兵学校の生徒でね、

航海訓練で出港した艦で負傷したらしい。かなり重症らしいんだ。その艦の

従軍牧師さんが、両親の結婚式や僕たちの洗礼を司式してくださった方で

牧師さんの奥さんと僕の母親は、若いころからの友人なんだ」

 

「そうでしたの、早くお二人のご無事が確認できるといいわね」

 

「ごめんよ、不安にさせてしまって。まったく

ジルのやつ、アニーを悲しませたら許さないからな」

 

従弟のジルや、ゴードン牧師と母の友人パトリシアについて話すベンジャミン。

容態のわからぬ従弟と、彼の母親であるアニーの顔を思い浮かべ身震いする

ベンの手を取とると、ウナは真剣なまなざしをベンに向けた。

 

「今度は私があなたを支える番よ、出来ることなら何でも言ってベン。

必要ならあなたの従弟さんの看病もさせてもらうわ、意外と得意なの」

 

彼女の親代わりであった後継人スミス氏の死を乗り越えられたのは、

そばで支えてくれたベンジャミンの存在だった。やがてベンからの求婚を

受け入れたウナは大学卒業後、弁護士クリス氏の助言もありベンジャミンの

婚約者としてアメリカ行きを決意した。

 

「二度とない人生を二人で歩もうって言ったのはベンよ。

それにベンの従弟なら、私にも近しい親族になるのだから」

 

ウナはベンからのプロポーズの言葉を口にした。ベンはyesの

返事を貰った時の感動を思い出し、天にも昇る心地だったのだが・・

 

「ウナ、きみの気持ちは嬉しいが、僕の従弟ははいい奴なんだけど

類まれなる女好きで、しかも自他ともに認める美丈夫な、モテ男で・・」

 

「話には聞いてたけど、そんなに女好きなの?

聡明で美しい婚約者さんがいらっしゃるんでしょ?」

 

ウナは自分の周りにはいなかったタイプの人間に興味津々で

次から次へと質問を繰り出した。

 

「婚約者はいるけど、根は変わらないと思う。なんというか女性を見たら

口説くのが礼儀だと思ってる節が。いや、ジルは本当にいいやつなんだよ」

 

「いくら女好きでも、従弟さん重病なんでしょ、そんな気力ないんじゃない?」

 

「う~ん、多分ウナを一目見れば、世界中の

良薬を束にしたくらいの効き目があるとは思うんだが」

 

口ごもりながらベンジャミンは悩んだ。自分の従弟のことを心配してくれる

ウナには申し訳ないが、あのジルのことだ、重傷を負おうが、重病だろうが、

美人を目の前にしたら即座に立ち上がり、バラの花と歯の浮くようなセリフが

飛び出すのは、安易に想像できた。しかも男だらけの兵学校生活が長い。

美女出現に舞い上がった挙句、場合によっては体調を悪化させてしまう

=もうすぐ6人目を出産予定のアニーを悲しませてしまう。

 

「うーーん、しかしなぁ、確かにウナを紹介すれば

たちまち元気になるとは思うけど、心配事も増すわけで」

 

ベンは困ったぞ、と腕を組みしばらく悩んだ。ジルとは長い付き合いだ。

婚約者のララこそ二歳年下だが、本来は年上の綺麗なお姉さん好きだ。

ベンはさんざん悩んだ挙句、今はジルとウナを絶対会わせちゃいけない!

という結論に達した。

 

 

米軍ラジオ放送・・

 

夕方のことだった。軍の複雑な手続きは後回しにして、

とりあえずジルとゴードン牧師との再会叶ったベン。

 

「なあ死にかけたやつが、なんで歩けるんだよ・・」

 

「まあ、そこは俺だからな」

 

怪しむベンの問いにジルは事も無げに言った。電報にあった状態より

はるかに体調は良さそうだが、ジルに付き添ってベンの客室まで来た

ゴードン牧師の説明によればどうやら”一度死んだらしい”

 

「突然待遇が良くなったから、ウィリアムのおっさんだろうと察したがベン、お前かよ。

急に個室に移れだなんてどんな手を使ったんだよ、さっきまで棺と同室だったんだぜ、俺」

 

「残念ながら個室じゃなくて俺と同室だよ、早速

ルームサービス頼んで、肉食った奴が文句言うなよ」

 

急遽ベンジャミンの客室に一台ベッドを運び入れジルを呼んだのだが

久しぶりの従弟から聞いた再会の言葉は「焼き肉と炭酸水くれ!」だった。

 

「兵学校の飯は悪くはないんだが、軍と合流してからは

ジャガ芋とハムばかりで飽きてたんだよ、あとレバーパテ」

 

テーブルクロスのかかったテーブルの上の肉料理とケーキをペロリを

平らげ満足顔のジルは、気が緩んだのか大あくびをした。

 

「五日間意識不明で死の淵をさまよった人間とは思えない態度だな。

ゴードン牧師からは、まだ絶対安静と聞かされてたんだが、まあ安心した」

 

「あのぐらいで死んでたまるか」

 

ジルからそんな返事が返ってきた。さらにジルは

「もうすぐ生まれる兄弟の顔見ないで死ねるか」と笑った。

 

「ハハハ、6人兄弟の長男なんだから皆の手本となるよう

付け合わせのインゲンも残さず食えよ、本当に昔っから

青野菜には愛情ない奴だな。帰ったらアニーに言いつけるぞ」

 

「それは勘弁!ああ夢にまでみた

キャメル毛布、手足を伸ばせるっていいな」

 

服装こそ兵学校の制服だが、重たい皮ベルトや規則装備を次々と外し

悠々とベッドに横たわり腕を伸ばすジル。指導官の目がないためか

「船内ベッドはアードレー家の食品棚より狭いんだ」などと軽口も飛び出した。

シカゴにいるときと変わらず母親に頭の上がらぬ従弟に思わず苦笑いをするベン。

だがジルの片腕は固定され動かせない。そして枕もとのラジオから流れてるのは、

各地の戦況を伝える米軍ラジオ放送だった。

 

「ジル、率直に聞くがその身体で厳しい兵学校に戻れるのか?」

 

ベンからの問いにジルは動く方の手を胸元にやると、

兵学校の制服の校章に指で触れた。

 

「まず無理だろうな、配置換えの話はあるだろうが俺が志てたものと違う。

それに肩や腕が派手にイカレてるらしくて、長いリハビリが必要らしい。

戦場で名誉の負傷したんじゃないんだ、、救助に駆り出された学生が

不注意で感電傷負っただけだよ、代わりの人間はいくらでもいるさ」

 

「そうか・・」

 

ベンは投げやりな言い方をするジルにうなずくほかなかった。

 

「俺は兵学校では学教科も技術訓練もつねに優秀な成績だったんだ。

俺には躓く石なんてないと思ってた。仮に怪我が治ったとしても戦地じゃ

役立たずの足手まといになる。思い描いていた理想とずいぶん変わった。

何事も引き際が肝心なのはわかってるが、こんな情けない話はない」

 

高校アメフトではクォーターバックのポジションにいた男だ。

情けない・・辛そうにその言葉を吐き出したジルの顔は、

不甲斐ない自分に対して怒りを感じてるかのようだった。

今、己が口に出した言葉が、納得できないようなそんな表情もした。

 

ゴードン牧師の話によれば、攻撃され損傷を受けた帰還艦が洋上で

航行不能にとなり、近くにいた兵学校の曳航船が急遽応援に向かった。

攻撃を受け損傷激しい艦に乗り込み、傷病人の手当てや艦の修理に

駆り出された学生たち。艦がぐらり揺れたその瞬間、どこかで爆発音がし

バチバチと火花散る高電ケーブルがジルに襲い掛かったらしい。ジルは

衝撃で吹っ飛ばされると、その場で気を失い五日間意識が戻らなかった。

 

「艦にゴードン牧師が乗っててくれたおかげで助かったんだ。

後から聞いた話だと俺、事故直後は心臓もとまってたらしいから」

 

「心臓が止まってただと!!」

 

「ついでに、呼吸もな」

 

「だからなんでお前、生きてるんだよ!

クォーターバックってそんなに有能なのかよ」

 

呆れるやら驚くやらのベンをよそに、

ジルは自分の心臓を指さしニヤッと笑って見せた。

 

事故から五日後、意識が戻ったジルが最初に見たのは

従軍牧師として艦に乗り込んでいたゴードン牧師の顔だった。

ジョエルは私が洗礼を受けさせた教え子だからね、何が何でも

シカゴのご両親のもとへ、連れて帰らなければと思ったんだ。

だから私は、初めて神と交渉した、いや神を脅したといった方が正しい。

この子をそちら側へ連れて行くことは大きな間違いだ。決して許さないと。

 

ゴードン牧師の交渉が成立したのかどうかは

神のみぞ知る処だが、結果ジルに死は訪れなかった。

 

「目覚める直前だと思うが、俺を揺さぶりながら起きろだの帰れだの

言ってる誰かの声が聞こえてさ、瞼を開けたら病院船のベッドの上で、ピクリとも

身動きできないし牧師先生に聞いても、他の学生たちのことは教えてくれなかった」

 

艦内では強面で屈強な軍人でさえも泣き喚き、母や恋人の名を口にしながら

息絶えた者もいた。正直なところジルの記憶は途切れていたし彼自身、全身に

稲妻を受けたかのような衝撃と、気を失う前に見た艦内中に噴き出す蒸気や

火花散る凄惨な現場からどう生還したのかを知らない。そして一緒にいた

兵学校のほかの学生たちや教官たちの生死も教えられてはいない・・

 

「これ以上は話せないが、今は家に帰りたくて仕方がない」

 

その通りなのだろう、ジルはやや遠い目をすると、

手帳を取り出し貼ってある何枚かの写真を眺め始めた。

 

「毎晩家族のことやベンやアーネと遊んだ子供時代のこと、

セシルやコーラ、なによりララのことを考えていた。手紙も何通も

書いたよ、自分がこんなに筆まめな男だなんて初めて知ったくらいだ。

兵学校に入る前に盛大に送り出してくれた高校のクラスメイトや、

アメフトのチームメイトとも会いたいな、奴らに笑い飛ばして欲しいよ」

 

「そうか、じゃあ俺と一緒にシカゴに帰ろう」

 

ベンは慈愛に満ちた顔でジルを見つめ言った。ゴードン牧師ではないが

負傷した従弟をシカゴに連れて帰るのが、使命のように感じたのだ。

ところがジルはベンの発言を手で制すと、

 

「いや、帰る前にニューヨークにしばらく滞在する、軍事務もあるが

ララの実家のハーバート家で、少し静養させてもらうことになったんだ」

 

「はあ!?」

 

「イライザおばさまが、今ニューヨークに来ているサヴィル・ロウの

腕利きテーラーを呼んで、俺の新しい背広仕立ててくれるってさ」

 

イライザの嫁ぎ先であるハーバート家は、一人娘ララの婚約者

ジルを気に入っており、将来の婿のために至り尽くせりなんだとか。

そしてなぜか昔っからイライザを、一族一の美人と褒め讃えているジル。

 

「俺サヴィル・ロウの紳士服憧れてたんだ!イライザおばさまは

容姿が美しいだけでなく、何事においてもセンスがいいからなぁ」

 

自分の言葉にうんうんと何度もうなずきながら、顔を輝かせるジル。

どうやらイライザの好意が、本気でうれしいらしい・・・

 

「おい、軍関係はわかるが、なんでララの実家なんだよ。

アニーが心配して待ってるだろう、まっすぐシカゴへ帰れよ!」

 

「待て待て、考えてもみろよ、この傷が治らないうちに

家に帰ったらママ失神するだろ、もうすぐ出産なんだぞ!」

 

「わかってるなら帰れ!」

 

「怪我のことママにバレたくないんだよ。大変な時期なのに

心配かけたくないんだ。それにキャンディの目はごまかせない」

 

「バレたくないってすでにバレバレだろ!」

 

出産を控えてる母アニーに対し、妙な気づかいをするジル。

ベンはこれ以上の呆れ顔ができないとでも言いたげな表情だ。

 

「あと10日あれば何とか誤魔化せるまでに回復してみせる。

お前の妹やコーラ嬢にも土産選んでやりたいし、それよりベン、

お前、婚約者連れて帰国なんだろう?同じ客室じゃないのか?

どこにいるんだ会わせろよ、あ~こんな格好じゃ失礼だよな!」

 

「同じ客室なわけないだろ!彼女はイギリスから連れてきたメイドと

別の部屋にいるよ、大体お前浮かれるだろ、絶対会わせないからな!」

 

やはりというか、毎度の女好きの性分が出てきたジルに、

ベンはもう一度「会わせない!」と力強く念押しした。

 

「ジル、お前の女好きは病気だぞ!」

 

「バカ言え、長所だスタミナ源だ!確かに短所だと人は言うが

俺からモテ要素を取ったら残るのは、賢さと筋肉と整ったこの顔と甘い声と、

輝くような金髪だけじゃないか!さあ、婚約者がいる部屋に案内しろよ。

今夜はパーティーだな、俺とベンの婚約者との初めての出会いに乾杯だ!」

 

「結局自慢かよ、ついでに不死身も加えとけ!!」

 

大怪我をし衰弱した従弟と思っていたから、ベンの目は

いつもと違う見方でジルを見てしまったのだろう。ところがいつも通り

いつもと同じく自信過剰なジルに、安心するやら本格的に呆れるやら。

 

「もういい、俺今夜は忙しいんだ。実はゴードン牧師に彼女を婚約者として

紹介したら突如、結婚前教育を受けさせられることになった。俺なんか悪いことした?

自慢じゃないが清く正しい交際してるんだぜ、ああ、船旅最後の夜なのに・・」

 

ベンは婚約者ウナとの船旅最後の夜に、ロマンチックな計画を立てて

いたのだが、まさかの牧師同席の夕食会に変わってしまい、落ち込み気味だ。

 

「いや、俺もララに連絡付けてもらうのゴードン牧師に頼んだんだが、

必ず性教育を受けるのを条件に出された。条件を飲まなければ

即シカゴに連れて帰り、俺の身柄は教会で預かると脅されたんだぜ!」

 

「ジル、お前はちゃんと受けろ!、ああ波間に沈む夕日、囁くような

冬の星座たち、二人の愛を語り合う優雅な夜になるはずだったのに」

 

「そりゃ残念だったな、軍ラジオ放送では今夜から明日いっぱいこの

海域じゃ雪予報だ。船揺れるから、雰囲気に任せてデッキに出るなよ」

 

軍ラジオ放送から流れてくるのは各地の戦況、天気予報にクリスマスキャロル、

そしてこの船が着岸するニューヨークは、以外にも雪が積もってないとのこと。

 

「チェ、つまんねーな、今年はグリーンクリスマスかな?

俺ホワイトクリスマス以外は、どーも信仰深くなれないんだよな.。

大体クリスマスなんて、寄付金集めと寄付金配りの集大成じゃん?」

 

悪態をつきながら、ベッドサイドに

置かれている果実に手を伸ばすジル。

 

「おい、言葉を慎めジル!!!」

 

ひゅっと首をすくめ客室のドアに視線を送るベン。その先にいた人物に

気づいたジルは「うわ、ヤバ!!!」と小さく叫んだ後、かじっていたいた

ハタンキョウを飲み込み、急いでキャメルの毛布に潜り込んだ。

 

「ではジョエル、小さな子供向けのお祈りのおさらいと

聖書物語からご降臨をお話してあげましょうか、みっちりと」

 

ベッドに寝転がりながら、何やら罰当たりな発言を繰り返すジルに

いつの間にか客室へと入ってきたゴードン牧師が、にっこり微笑んだ

 

翌朝、軍に合流するからと兵学校の制服制帽をきちんと着用したジル。

ベンはわが従弟ながらその姿に見惚れてしまうのだが、調子に乗るので

褒めないでおこうと思った。

 

「今度会うときは家だな、口裏は合わせといてやるから早く帰れよ」

 

ベンは今夜のニューヨーク着岸まで、この客室にいることを進めたのだが、

見送りたい人や、会うのが最後になるかもしれない人がいるからとジルは断った。

また今日の正午、甲板を借り軍と兵学校合同による弔いの儀仗を捧げるらしく、

兵学校の生徒も参列するとのことで、ミーティングがあるらしい。

 

「雪降ってるのに、儀仗やるのか?」

 

「軍の楽隊が来れないんだよ。で、バグパイプ持ってる乗船客がいてさ

借りれることになったんだ。俺、吹けるだろ。だから急遽、奏者役が

回ってきたんだ。多分これが俺の兵学校最後の務めになると思う・・」

 

多分、俺に最後の花を持たせてくれるつもりなんだ・・

ジルは胸の内で小さくつぶやいた。

 

「そうか、俺がパイプの奏者役を代わってやれりゃいいんだけど、

軍人しかできないからな。まあ、後悔しないよう存分に役割果たせよ」

 

ベンは片手が不自由なジルの代わりに、持ち込まれたばかりの

バグパイプの組み立てや、管調整を手伝ってやりながら言った。

 

「他人のバグパイプって初めて吹くんだよな、随分違うんだな。

片腕だけでやれるかな。大体これトランペットの楽譜じゃないか?」

 

朝食の席でも、急遽渡された楽譜とにらめっこしていたジル。

今度会うときは、婚約者紹介しろよと不満げな顔で軍へと帰っていった。

 

 

                 つづく

 

 

長い間放置しててすまんね!生存確認もありがと

一応言い訳しときますと、昨年秋ごろノートPCが壊れたんよ

んで娘にタブレットでも書けるからそっち買えばいいじゃんと

そそのかされたんですが、私にはあれで長文書くの無理だった。

今年の夏前にようやく自分のPC新調して現在に至ります。

久しぶりに二次書くとダイアログとモノローグの割合が掴めんし

アメブロずいぶん変わっていて参考元のショッピング貼れないし。

 

PCが壊れると同時期にずっと応援していた漫画が佳境を迎えつつ

あったんですよね、ご存じの方も多いでしょうが、白泉社の花とゆめに

連載されていた俺様ティーチャー、高嶺と花、もう自分の二次どころじゃ

なくて「花ちゃんカッコイイ高嶺さんアホ可愛い、おかモン幸せになれよ!!」な

毎日でした。ちなみに俺ティでは地元組と忍者ときょんきょん番長推しです。

墜落JKと廃人教師も過去編に突入し目が離せませんやん。まあなんだ、

最近の付録はドラマCDとか楽しいざんす。

 

というわけで、鬼滅の映画チケット取れたので週末観てくるわ♪

あはは、最近漫画しか見てねえな・・・

 

意味ふオリキャラは好まれない傾向にあるのは読者側としても

承知いしてますが懲りずに次号はジルの新たな扉探しです

アルバートさんやアーチーにも活躍してもらわなきゃ!

※後日手直しします、お立ちよりありがとうございました