至上の愛

sue!!!sue!!!

激おこぷんぷん丸な乙女たち

 

9月、新学期早々・・

 

東部の大学にいるアーネから、寄宿舎の三人娘宛に原稿と高級チョコの箱が届いた。

彼は以前、夏の暑い時期にミントチョコレートを贈ったことがあり、評判を落としたのだが

今回は合格点を貰えたようで、妹のセシルと従妹のララ、そして多分?恋人のコーラから

お礼の手紙が大学の男子寮へと届くのだ。それを同じ寮生たちに見せて楽しんでるらしい。

 

「チョコは嬉しんだけど、アーネの書いた面白くない小説はいらないのよね」

 

「アーネストお兄さま、出版社に応募するから私に小説の感想を厳しく

頼むって電話で言ってたけど、ありのまま正直にお返事していいのかしら?

今回もまた無駄に長くてつまらない上に、最後まで読み切れなかったって」

 

「小説の内容には触れないで、いい原稿用紙ね、

とか発色のいいインクを使ってますねってのはどう?」

 

「そうねぇ・・、アーネストお兄様には申し訳ないけど、

褒めるところ探すの難しいわ。チョコはとても美味しいけど」

 

コーラとララは、顔にありありと困惑を浮かべながら、

見るだけで読む気が失せる厚さの原稿用紙を押し付け合った。

 

「間違っても褒めちゃだめよ、図に乗ってますます送り付けて来るから!

うちのお兄ちゃんの小説なんて、大袈裟なセリフと・・・・・・・ばっかりで

読む価値ないわ。チョコのお礼とパッケージの感想を書いときゃ十分だわ」

 

恋人のコーラからは面白くないと言われ、従妹のララからは、

長くてつまらないと酷評され、妹のセシルからは読む価値なしと

罵られるアーネの新作小説。高級チョコのおまけつきだったのだが

どうやら今回も日の目を見ることはなさそうだ。

 

兵学校にいるジルからも、寄宿舎の三人娘宛に小包や手紙がよく届く。

今回は軍の缶詰が届いた。なんとララは缶詰を初めて自分の手で切ったらしく、

何に対しても要領よく器用な彼女にしては、缶切りにかなり苦戦していた。

コーラは「私ハイスクールに行かなかったら、軍需工場でこれ作ってたのよ」と

中身のソーセージを美味しそうに頬張った。添えられていた手紙は、学生は

軍検閲が緩いのか、日常の出来事やら割と好き勝手なことが書いてあった。

 

「ジルには申し訳ないけど、私の口には合わないわ」

 

「そう私は好きかも。ララの分、食べちゃっていい?

ねえ、クラッカージャック持ってない?交互に食べたい!」

 

「これ軍人さんが戦地で食べる物よねぇ?ジルってば怒られないのかしら?」

 

セシルは小首をかしげながら、温めた缶入りのソーセージにかじりついた。

ララは塩加減が口に合わないらしく一口でリタイア、コーラは気に入ったようだ。

 

さて、それぞれ、個別に宛られた手紙を読み始めた三人娘達。セシルには

6人目を妊娠中の母アニーへの気遣いや、小さな兄弟への思いが書かれていた。

そしてクリスマス休暇にはお土産を持って帰るとも、書いてあった。

 

「ジルもたまにはいい手紙書くわね。ああ見えて、家族思いだから・・」

 

と、ほろり涙ぐむセシル。大体ここでララとコーラも同調して、兵学校で厳しい生活を

送っているジルを思い、祈りの一つでも捧げるところなのだが、ララとコーラの様子が

明らかにおかしい。次第にピクピクと口端と眉尻が上がり、手紙を持つ手が小刻みに

震え出した。というわけで始まった乙女たちの不穏・・

 

「婚約者がありながら、ダンスパーティでチャーミングな女の子に

誘われて踊ったですって!許せない、ジルも泥棒猫も軍法会議ものよ!」

 

「ララ落ち着きなさいよ、相手は教官の「孫娘でまだ8歳でしょ!

ほら、深呼吸したらお茶飲んで。ちょっとクッション投げないでよ!」

 

「8歳はもう立派な女よ、ジルのこと狙ってるに違いないわ!

油断も隙もありゃしない。ジルもジルよ、デレデレ馬っ鹿みたい!」

 

「8歳と19歳じゃ間違っても恋愛関係にはならないでしょ!

ウチのパパとママじゃあるまいし、ララは心配しすぎだって」

 

手紙にギスギス荒ぶるララと、説得力のない持論でなだめるセシル。

ふと見ればコーラのほうも、相当頭に血が上ってるようだ。

 

「おばおばおば、大おばさま、おばおばおおばばバババ、

神経痛に気を付けてください??転んで骨折しませんように??

あの脳筋男、年下の女の子??つかまえて大おばさまですってぇーー!

訴えてやる、どこに訴えたらいいか分らないけど、絶対訴えてやる!」

 

握りこぶしをぎゅっと固め叫ぶコーラ。手紙にはコーラSブライトン嬢へと

書いてあり最初ちょっと嬉しかったのだが、内容はまさかの大おばさま扱いである。

 

「聞いてコーラ、なぜか我が一族では大おばさまが一番偉いの。

それにあなたブライトン家の正式な養女になって、アニーの妹に

なったんだから、ジルから見たら年下でも叔母様なのよ、だから

あなたも威張っていいからね、ね!」

 

「キィーー悔しい、ジルの浮気者!」

 

「この若さで、なんで、ジルの大おばさまなのよ!」

 

「二人とも暴れないで!!!」

 

ジルの浮気疑惑に荒ぶるララと、この若さで大おばさま扱いされ

憤慨するコーラ相手に立ち回るセシル。狭くはないが広くもない寄宿室は

噴出する乙女の怒りで、どこの戦場よりも壮絶な戦場に様変わりしてしまった。

 

「ちょっとあなたたち、廊下まで声が聞こえてるわよ。

浮気者の大おばさまが暴れてるっていったい何があったの?」

 

要領を得ぬとでも言いたげな顔でドアを開けて入ってきたのは、

寄宿舎の寮監となったパトリシア。聖職にある彼女の夫が,従軍牧師として

艦に乗り込んだため、パティは夫婦で住んでいたシカゴの牧師館をでて、

セシルたちが通う女学校の教師兼、寮監となったのだ。

 

「「パトリシア先生、聞いて下さい、ジルってば酷いの!」」

 

「ハイハイ、わかったから順番に話して頂戴!」

 

ララとコーラが顔を真っ赤にして、パティを取り囲んだ。教師兼寮監のパトリシアさん、

思春期発達心理学もバッチリ修めてるし、若いころは療養学校の教師も経験している。

実のところ乙女からの修羅場相談は得意分野らしくらしく、聖書からの引用で聞かせるか

古典文学か、または最近の流行歌からの引用で例えるか、素早く考え始めていた。

 

「はぁ~助かった。ちょっとJに電話してくる!」

 

セシルはホッとした様子で部屋の置き時計をみた。まもなく自由時間が

終わるころなので、隣州の寄宿学校にいるボーイフレンドのJと電話する

時間が無くなるんじゃないかと、実は気をもんでいたのだ。

 

「Jってばこの前、急に変なこと言いだしたの。高校を卒業したら

航空学科のある大学に進学したいとか、パイロットの養成所に

行きたいとか。ジルみたいに軍人さんを目指すつもりなのかしら?」

 

Jの話で子供の頃オートジャイロのパイロットになりたかったというのは

聞いたことはある。だがこんなご時世に航空学科やパイロット養成所に

行くだなんて思いもよらず、セシルとしては何とかして引き止めたいと思ってた。

 

「この戦争いつまで続くのかなぁ?それなのに航空学科だなんて。

アメリカだってどうなっちゃうか分らないのに、Jってば甘く考えすぎだわ」

 

寄宿室の部屋のドアが閉まり、遠ざかってゆくセシルの靴音・・・

パティは、一瞬の既視感に身体を固くした。セシルの呟きを聞いて娘時代に

味わった深い絶望感が不意に蘇ってしまったのだ。

同時に、艦に乗り込んだ従軍牧師である夫の安否。彼女と夫であるゴードン牧師の

間に手紙のやり取りはあるが、夫牧師がどの艦隊に乗り込みどの海域がにいるのか

軍機密の為、全く明かされてないのだ。

そして口には出せぬがほんの数年前まで暮らしていた神戸の街のこと。

かつて女学校で教えていた大和撫子たちの安否を思わぬ日はない。

パティの胸には不安が渦巻いていた。

 

「パトリシア先生、どうかされたのですか?」

 

「先生貧血??」

 

呆然と立ち尽くすパティの青白い顔を心配そうにのぞき込む、ララとコーラ。

冷静さを取り戻すよう軽く息をついたパティは、すぐ教師の顔になったつもりでいたが、

無理に微笑む眼鏡の奥は、あの頃の自分と同じ年の少女たちを、沈痛な思いで

見つめていた。

 

age body

言うべきか言わざるべきか・・

テリィの息子ジャスティスことJは、週末NYの自宅に帰省していた。
自分の思い描く将来を、父であるテリィと祖母エレノアに改めて伝えるためだ。

「父さんもエレノアも誤解しないで欲しい、俺は正直戦争なんかごめんだ。
軍人を目指すつもりもない。ただパイロットになるためには、これしかない」

ジャスティスは星条旗はためく表紙の冊子をテーブルの上に置いた。
テーブルの端にはスザナが早い時間に用意したジャスティスの夜食が、
手つかずのままあり、時計は間もなく日付を越えようとしていた。

「本当はオートジャイロのパイロットになりたかったんだけど
もう時代遅れだし、やはり航空学科のある大学に行きたいんだ」

テリィとエレノアは無言でジャスティスの話を聞いていた。話が切れたところで
テリィはやはり無言のまま席を立つと、隣の部屋から欧州の地図を持ってきた。
(縁は切れないもんだな)まだ少年らしさが残る我が子の肩や背を見やりながら
テリィは胸の内でつぶやいた。

「父さんはきみの夢を応援するよ、ただしジャスティス(正義)と名付けた
きみの母さんを悲しませるような真似はしないと約束してくれ、それが条件だ」

「私もあなたを誇りに思うわ。でも危険と
隣り合わせな仕事だということは忘れないで」

「誓うよ、ママにはスザナにはちゃんと話すつもりだ。でも
スザナは応援してくれるよ、俺小さな頃から何度も話してるから」

テリィとエレノアを前にし、ジャスティスは胸に手を当て誓いを立てた。
スザナは出産時の事故でジャスティスを産んだ記憶がなく、今も精神は
混乱したままだ。医者の勧めもあり産後のスザナと幼かったジャスティスは、
エレノアの手を借りながら、どこか仲の良い友人とでも例えるような距離で、
今日まで暮らしてきた。

「そうだったな、昔スザナが真剣な顔で話してたな、
操縦が上手になったら、10番目くらいに乗せてねって」

テリィは思い出し笑いの後、わずかにためらってからジャスティスが持ち帰った
数枚の書類にサインを記した。そんな二人を見ながらエレノアは頬杖をつき
かなり大きなため息をついた。そして、不意に笑った。

「不思議ね、ジャスティンには話したことなかったけど、大昔あなたのお爺様が
好きだったのよ飛行機。自分で操縦して領地の炭鉱や農園を飛び回っていたわ」

「俺は飛行機には興味なかったが、お前に遺伝したのかもしれないな」

「ええっ公爵が?」

父と祖母の話を聞いたジャスティスは、目に見えるくらい驚いた顔になった。
しばらく次の言葉が出ないくらいだった。その横で話をするテリィとエレノア。

「これだけ演劇に囲まれた生活をしてきてるのに、
ジャスティンはちっとも芸能には興味持たなかったしねぇ」

「お前をスカウトしたがってたロバート団長や、しつこい
映画関係者は、がっかりするだろうよ。ざまみろってんだ!」

「ああん、夢も希望も失せたわ、ジャスティンの舞台観たかった!」
 
「こればっかりは本人にその気がなければ、どうにもならないだろ!」

テリィは愉快そうに笑うがあわよくば孫を役者にしたがっていたエレノアは、
諦めん気味のため息をついた。しかも飛行機乗りになりたいとか言い出す始末、
嫌でも昔を思い出してしまう。

「だから昔から言ってるじゃないか、役者には興味ないって。
それよりびっくりしたよ。お爺様はいつごろ飛行機乗ってたの?」

「はぁぁ~、グランチェスター公爵、今思い出しても偉そうな名前よね。
若い頃の話よ、私がまだ若かった頃の話、えーといつごろだったかしら?」

「とぼけてないで思い出してよ、エレノア!
思い出してくれないと、お婆ちゃんって呼ぶぞ!」

「それはダメよ!」
 
突然予想外のことを知ったたジャスティスは、さっきから驚いてばかりだ。
その名と自分が浅からぬ関係だとは知っていた。とはいっても直接かかわりはなく
今日まであったことも無ければ声も聞いたこともない。顔も雑誌で見た程度だ。

「俺がパイロットになったら乗せたい人が増えたな。
そうだ、エレノアもグランチェスター公爵と一緒に乗るか?」

「公爵とですって、ブサイク好きの爺の隣なんかまっぴらごめんだわ!
そんな日が来てたまるものですか、私は今でも美貌で知れてるの、フンッ!」

「ハハハ、気の早い話だな。ほらせっかく欧州の地図持ってきたんだから
ジャスティスに話してやれよ、格納庫のボロ飛行機の事や公爵の若い頃の話」

「公爵は単なる珍しいもの好きなのよ、だからすぐ飽きるの。
でも、優雅で気品あふれるブタ好きは筋金入りじゃない?公爵夫人には
本当に敵わないわ、きっとご先祖は由緒正しき華麗なるブタ一族なんでしょうねぇ。
私なんて普通の美貌しか持ち合わせてないから、あちらとは不釣り合いですもの」

「うんまあ、よくわからないがおふくろ、相当根に持ってんだな・・」

エレノアが、美貌を強調しながら言うので、テリィはやれやれと苦笑いした。
同時に、自分の口の悪さは母親譲りだったのかと妙に納得した。

未だ思い出したかのように騒がれる公爵とエレノアの過去。そしてテリィとの関係。
誰に書かせたのかは知らぬが、つい先日もゴシップ誌で、優雅で気品あふれる
グランチェスター公爵夫人と、生まれも育ちも分らぬエレノアとの生い立ち比べの
忖度記事を面白おかしく書き立たれたばかりだ。

「フン、何が公爵夫人よ。同じ女としてあんな顔じゃあ気の毒に思うわ。大体
私だって木の又から生まれたわけじゃないわ、ミステリアスで売ってただけよ!」

エレノアの愚痴が延々と続く間と思われたが、不意に潮が引くよう静かになった。
目の前のテリィとジャスティスが、何やら楽しそうに話し込んでるからだ。
急に毒っ気が抜けたエレノアは、遅くなりそうだしコーヒーでも淹れようかしら?
などと思いあぐねながら湯を沸かしに立った。

「ねえ、何年ごろ作られた飛行機?、写真とかある?
機体設計は誰?当時の飛行計画書とか残ってるかなぁ」

「知らねーよ、俺より、シカゴのアーチーに聞いたほうが早い、アイツの兄貴が
物好きも修理したんだから。まあ、飛んだと思ったら、すぐぶっ壊れたけどな!」

「スゴイ、あ~、俺その場にいたかった!」

すでにテリィとジャスティスは地図をテーブルに広げており、二人の視線は
紙面のスコットランド上空を飛び回っていた。古い話と新しい話を混ぜながら、
時折ジャスティスの「スゴイ!!」という驚いた声も混ざりながら。


おまけのアードレー家・・

「この前ララに、家庭の看護術”って本を貸してあげたの。
で、覚えたからからって別の頼まれたのよ、英語じゃなくてドイツ語のを。
なんでもねぇ、学校の図書室にあるのも全部読んじゃったんですって!」
 
”フラニーハミルトンの家庭の看護術”

何年か前に発売された家庭の定番本なのだが、キャンディにとっては
かつてのルームメイトの著なので、手にするたび誇らしげな顔をする。
先々セシルが嫁ぐとき、必ず持たせたい物として二冊購入したほどだ。

「そういやララ嬢、ラガン氏捕まえて、
ハードカレンシーについて聞いてたらしい」

「銀行家の妻でも分からないことを、なぜララが知りたいのよ・・」

「大丈夫だ、本業の僕もよくわからないから・・」

「それは大問題ね」

ある日の夕方、仕事を早々と終え帰宅したアルバートは、秘書見習の
コーラから届いた報告書<娘セシルの学校生活について>を読みながら
顔をしかめたりニヤニヤしたりしていた。キャンディはというと、棚から
持ってきた本数冊を束ねているまっ最中であった。子供たちはそれぞれの
寄宿舎で暮らしているが、夫婦の会話は家にいずとも子供たちの事が多い。

「セシルは化学を、もう少し頑張らないといけないね」

アルバートはコーラからの報告書を見て、困ったもんだと苦笑いした。
他にも2つの落とし物と長電話で生活指導を食らったらしい。
キャンディは「あの子の落し物が多いのは父親譲りね」と笑った。

「でも頭が良すぎるのも大変ねぇ、誰似なの?やっぱりポンドルさん?
だってイライザとニール、悪知恵は人一倍働くけど、お勉強はゴニョゴニョゴニョ」

昔々を思い出し、言葉を濁しつつ首をひねるキャンディ。
話を聞いていたアルバートは、ふと思案顔になった、そして

「キャンディ、少し前から考えてるんだが、アードレー家の事業を
ララ嬢の頭脳に任せられないだろうか・・?彼女が一番適任だと思う」

「あらぁ偶然ねアルバートさん、実は私もそれを考えていたのよ!
頭脳派のララと、肉体派ジルの間に生まれる子も凄いわよきっと!」

「そうかっ、あの二人の子供か!アードレー本社ビルが見渡す限りの
草原になって屋上でハゲタカがキャッキャと飛び回る状態になっても、
ジルとララ嬢と、生まれてきた子供であっという間に撃退してくれそうだ!」

「そうよ、どんな絶望やも病も、世界恐慌も連鎖倒産も
乗っ取りも、ララとジルの機動力には敵わないわ、もう無敵!」

「おおおお、これでだあと100年は安泰だ!」

意気投合とばかり目を輝かせ、互いの発言に深くうなずくこの御夫妻。
夕食までに時間があるので、火の入った暖炉の端でビスケットウォーマーを
温めていた使用人のライラが、ムスっとした顔で立ち上がった。

「お言葉ではございますがウィリアムさま、キャンディスさま!
それぞれの大学で政治経済をお勉強されてるベンジャミンさまと
アーネストさまが聞いたら僻みますわよ。、セシル嬢ちゃんだって最近では
すっかりレディに仕上がってまいりましたわ。お二人は何を仰いますやら」

使用人と呼ぶより、乳母としての役目が多かった彼女にしてみれば
どこの優秀な子より、アードレー家の子供たちが一番大切なのである。

プンスカ怒りながら、テーブルの上の小瓶やカップを片づけるライラに、
すっかり慌てるアルバートとキャンディ
 
「冗談だって、ライラ!」

「そうよライラ、お願いだからビスケットとレモンカードしまわないで!」

「さて、お夕食の前にお二人には、荷物を
まとめるの、手伝っていただきましょうかねぇ」

暖かそうな毛糸の靴下10足、日持ちする果実のプリサーブ、コーヒーや茶葉。
他にもまだたくさんある。ライラは欧州の戦場にいる兵士へと届ける赤十字活動の
荷物をまとめ始めた。暖炉の炎が揺れる、アードレー家の穏やかな秋の夕暮れとは
反対に、世界はますます混乱を極めていた。


          つづく。

 

 

 

 

 

 

テリィパパのボロ飛行機エピソード、年代的に無理じゃね?

そりゃステアもスゴイ言うわ・・

作るだけ作って某ライトさんに先を越されたから絶賛放置中だったとか?