リレー小説その3 | Papytat~東京農工大学生協読書部~

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昨日、「プレデターズ」観に行ったナカムラです。ダニー・トレホの扱いに大満足。
うん、ああいうキャラだよね。


リレー小説、というか「お題リレー」ですね、これ。
「迫りくるもの」ということで、書きました。
会話で分量が膨らんでますが、他の二人と比べると短いねえ。





 この町にも「奴ら」が来た。

 一度侵入を許してしまえば、抗う術はない。町は「奴ら」の狩り場と化した。被害者は刻一刻と増え続けるが、警察も自衛隊も助けにきてはくれない。

「お母さん!鈴木さんの家がやられたみたい!電話が途中で切れちゃった」
「すぐそこじゃない!」
「なにか、準備できるものないの?!」
「今からじゃ何も…」
「に、逃げようよ!」
「でも、おばあちゃんを置いていくわけにはいかないし…」

 ドタドタと階段を駆け下りる音がして、小学生の弟が居間に飛び込んできた。
「大変だよ!もうそこまで来てる!」
 母と姉は窓際に走り、カーテンの陰から外を覗いた。
「そんな…、加藤さんが」
「取り込まれたのよ」

 街灯の下、ふらふらと進む不気味な集団がいた。その先頭には、見慣れた顔がある。これが「奴ら」の常套手段だ。襲った家の人間を次々と取り込み、あっという間に被害は拡大する。来ると判っていても、見知った顔を前にして抵抗する気力を失う人間も多い。

「今からでも、電気を消して隠れればいいじゃない!」
「だめよ…、もう見られてる。むしろ引きつけるだけよ…」
 煮え切らない母親の態度に、娘はついに立ち上がった。
「もういい!私一人でも逃げるからね!アヤちゃんとこなら、きっと大丈夫なはずだもん!」
「待ちなさい!」
 母親の制止も聞かず、娘は廊下に飛び出し、玄関の扉を開けて外へ出ようとした。しかし、その瞬間、なにかが扉にぶつかる鈍い音がした。

「ひっ!」
 怯える娘を下がらせ、母親はインターホンのカメラのボタンを押した。モニターに映し出されるのは、「奴ら」に取り込まれた加藤さん。そして、手に巨大な木製の「へら」を持ち、薄ら笑いのような表情を浮かべた中年男の顔だった。その口が開き、おぞましい言葉を紡ぐ。
「『突撃!となりのばんごはん』です…」