3月26日は、歌手のダイアナ・ロス(1944年)が生まれた日だが、米国の作家、エリカ・ジョングの誕生日でもある。
エリカ・マン・ジョングは、1942年、米国ニューヨーク市で生まれた。両親はともに東欧系のユダヤ人で、父親は陶器人形の製作会社の経営者だった。母親は画家で織物デザイナー。エリカは三人姉妹のまん中だった。
エリカは、コロンビア大学で18世紀英国文学を専攻し、卒業後、ニューヨーク市立大学で美術史を教え、詩集を出版した。
彼女は4度結婚していて、「ジョング」の姓は、2度目の夫だった中国系米国人の精神科医の姓からきたものである。彼女はこの2番目の夫と、1966年から約3年間、ドイツのハイデルベルクで暮らしている。このとき、英国人男性と不倫関係におちいり、その経験が彼女の自伝的小説『飛ぶのが怖い』となった。
1973年、31歳のときに発表された『飛ぶのが怖い』は、女性解放を志向した、セックスや不倫関係などスキャンダラスな内容によって一大センセーションを巻き起こし、600万部以上を売る世界的ベストセラーとなった。文豪ヘンリー・ミラーは、この本を出版直後から絶賛し、みずからすすんで外国の出版社に翻訳をすすめる手紙を書き送ったという。
著書はほかに『あなた自身の生を救うには』『ブルースはワイルドに』『五十が怖い』『セックスとパンと薔薇──21世紀の女たちへ』『エリカ・ジョング詩集』などがある。
米国を文化史的に見るのなら、エリカ・ジョングは、1970年前後に華やかだった米国の若者文化のスターのひとりである。
『アメリカの鱒釣り』を書いたブローディガン、
『いちご白書』を書いたクネン、
『緑色革命』を書いたライク、
そういった人たちと並んで立つ時代のヒロインである。
エリカ・ジョングのベストセラー小説『飛ぶのが怖い』は、ボーヴォワール、アナイス・ニンといった先駆者たちが、そこまで書くとさすがに自分が軽んぜられるとしてためらったタブーの領域まで、あえて裸足で踏み込み、全裸になって見せた書である。
「女にも性欲はある。そしてそれは悪いことではなく、当たり前のことだ」
と、声高らかに訴えた女性、それが彼女である。「王さまは裸だ」と叫んだのである。
エリカ・ジョングの名は若いころからよく知っていたが、その著作は長らく読まなかった。1990年代、米ヴァージニア州のコミュニティーで知り合った若い女性が『飛ぶのが怖い』を読んでいた。「ああ、いまでも、読む人がいるんだぁ」と、おもしろいか尋ねてみると、
「おもしろい、とっても」
と彼女がいう。それで帰国してから、読んでみた。果たして、すごくおもしろかった。『名作英語の名文句2』でも取り上げた。『五十が怖い』も、とても読み進みやすく、おもしろかった。文章がうまい。
男性である自分が「うんうん、そうだよなあ」と共感できる部分が多かった。
知的なのだけれど、セクシャル。セクシャルなのだけれど、俗に落ちない。ピュアでいつづける自由な魂。それがエリカ・ジョングである。
(2023年3月26日)
●おすすめの電子書籍!
『ここだけは原文で読みたい! 名作英語の名文句2』(金原義明)
「ポール・マッカートニー/メニー・イヤーズ・フロム・ナウ」「ガリヴァ旅行記」から「ダ・ヴィンチ・コード」まで、英語の名著の名フレーズを原文(英語)を解説、英語ワンポイン・レッスンを添えた新読書ガイド。好評シリーズ!
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平易で楽しい「読むフェミニズム事典」。女性の選挙権の由来をさぐり、自由の未来を示す知的冒険。アン・ハッチンソン、メアリ・ウルストンクラフトからマドンナ、アンジェリーナ・ジョリーまで全五〇章。人物事項索引付き。フェミニズム研究の基礎図書。また女性史研究の可能性を見通す航海図。
●電子書籍は明鏡舎。
https://www.meikyosha.jp


エリカ・マン・ジョングは、1942年、米国ニューヨーク市で生まれた。両親はともに東欧系のユダヤ人で、父親は陶器人形の製作会社の経営者だった。母親は画家で織物デザイナー。エリカは三人姉妹のまん中だった。
エリカは、コロンビア大学で18世紀英国文学を専攻し、卒業後、ニューヨーク市立大学で美術史を教え、詩集を出版した。
彼女は4度結婚していて、「ジョング」の姓は、2度目の夫だった中国系米国人の精神科医の姓からきたものである。彼女はこの2番目の夫と、1966年から約3年間、ドイツのハイデルベルクで暮らしている。このとき、英国人男性と不倫関係におちいり、その経験が彼女の自伝的小説『飛ぶのが怖い』となった。
1973年、31歳のときに発表された『飛ぶのが怖い』は、女性解放を志向した、セックスや不倫関係などスキャンダラスな内容によって一大センセーションを巻き起こし、600万部以上を売る世界的ベストセラーとなった。文豪ヘンリー・ミラーは、この本を出版直後から絶賛し、みずからすすんで外国の出版社に翻訳をすすめる手紙を書き送ったという。
著書はほかに『あなた自身の生を救うには』『ブルースはワイルドに』『五十が怖い』『セックスとパンと薔薇──21世紀の女たちへ』『エリカ・ジョング詩集』などがある。
米国を文化史的に見るのなら、エリカ・ジョングは、1970年前後に華やかだった米国の若者文化のスターのひとりである。
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エリカ・ジョングのベストセラー小説『飛ぶのが怖い』は、ボーヴォワール、アナイス・ニンといった先駆者たちが、そこまで書くとさすがに自分が軽んぜられるとしてためらったタブーの領域まで、あえて裸足で踏み込み、全裸になって見せた書である。
「女にも性欲はある。そしてそれは悪いことではなく、当たり前のことだ」
と、声高らかに訴えた女性、それが彼女である。「王さまは裸だ」と叫んだのである。
エリカ・ジョングの名は若いころからよく知っていたが、その著作は長らく読まなかった。1990年代、米ヴァージニア州のコミュニティーで知り合った若い女性が『飛ぶのが怖い』を読んでいた。「ああ、いまでも、読む人がいるんだぁ」と、おもしろいか尋ねてみると、
「おもしろい、とっても」
と彼女がいう。それで帰国してから、読んでみた。果たして、すごくおもしろかった。『名作英語の名文句2』でも取り上げた。『五十が怖い』も、とても読み進みやすく、おもしろかった。文章がうまい。
男性である自分が「うんうん、そうだよなあ」と共感できる部分が多かった。
知的なのだけれど、セクシャル。セクシャルなのだけれど、俗に落ちない。ピュアでいつづける自由な魂。それがエリカ・ジョングである。
(2023年3月26日)
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