1月20日は、イタリア映画の巨匠、フェデリコ・フェリーニが生まれた日(1920年)だが、詩人、西脇順三郎(にしわきじゅんざぶろう)の誕生日でもある。
西脇順三郎は1894年、新潟県の小千谷町(現在の小千谷市)で生まれた。父親は銀行家で、順三郎は三男だった。順三郎は少年期から画家志望だった。黒田清輝主宰の画家団体「白馬会」に入会した。慶應義塾大学に進んだ西脇は英書をよく読み、卒業論文は全文ラテン語で書いた。大学卒業後は「ジャパンタイムズ」社に入社したが、ほどなくして退社。健康を害し、一時期郷里で静養していた。
25歳のとき、外務省に勤めだし、26歳で慶應大予科の教授になった。英語の詩を発表し、28歳で英国に渡り、オックスフォード大学に入った。英国では、英国の女性画家と結婚し、英語の詩集『Spectrum』を自費出版した。
その後帰国し、32歳で慶應大文学部教授に就任した。
西脇はその後、英語、フランス語、日本語で詩を書き、詩論を発表し、俳句の世界でも活躍し、油彩画や水墨画を描いた。
シュルレアリスムに接近し、日本の古典を研究し、日本の文学界から推薦され、いく度かノーベル賞候補となった。
言語の壁を楽々と乗りこえた創作活動を展開し、米国の詩人エズラ・パウンドや、イタリアの詩人ジュゼッペ・ウンガレッティほか、海外の文学者と親交を結び、世界的な詩人として活躍した。
詩集『Ambarvalia』『旅人かへらず』『第三の神話』などを発表した後、1982年6月、心不全のため小千谷の病院で没した。88歳だった。
西脇順三郎の詩を初めて読んだのは学校の教科書だった。西洋的な感性の詩、という鮮やかな印象を受けた。煽情的でもある。記憶が正しければ、それは「雨」という詩だった。
「雨
南風は柔い女神をもたらした。
青銅をぬらした 噴水をぬらした
ツバメの羽と黄金の毛をぬらした
潮をぬらし 砂をぬらし 魚をぬらした
静かに寺院と風呂場と劇場をぬらした
この静かな柔い女神の行列が
私の舌をぬらした」(『Ambarvalia』椎の木社「日本の詩101年 新潮11月臨時増刊」)
西脇順三郎の詩を読むと、極東の果ての日本生まれでも、その知力を鍛えれば彼方遠い西洋文明をおのれの血肉とすることができる、その根源である古代ギリシアの精神をタイムスリップして生き直すことが可能なのだと知らされる。知力を徹底的に発揮すれば、われわれはアキレウスが考え感じていたことがわかるはずだ、という確信である。知の力の証明、それが西脇順三郎の詩だといえる。
子どものころからギリシア神話を読んできた自分には特に感慨深いものがあった。知的な世界における西洋と東洋のひとつの美しい握手を見る思いがする。
(2023年1月20日)
●おすすめの電子書籍!
『世界大詩人物語』(原鏡介)
詩人たちの生と詩情。詩神に愛された人々、鋭い感性をもつ詩人たちの生き様とその詩情を読み解く詩の人物読本。ゲーテ、バイロン、ハイネ、ランボー、ヘッセ、白秋、朔太郎、賢治、民喜、中也、隆一ほか。彼らの個性、感受性は、われわれに何を示すか?
●電子書籍は明鏡舎。
https://www.meikyosha.jp

西脇順三郎は1894年、新潟県の小千谷町(現在の小千谷市)で生まれた。父親は銀行家で、順三郎は三男だった。順三郎は少年期から画家志望だった。黒田清輝主宰の画家団体「白馬会」に入会した。慶應義塾大学に進んだ西脇は英書をよく読み、卒業論文は全文ラテン語で書いた。大学卒業後は「ジャパンタイムズ」社に入社したが、ほどなくして退社。健康を害し、一時期郷里で静養していた。
25歳のとき、外務省に勤めだし、26歳で慶應大予科の教授になった。英語の詩を発表し、28歳で英国に渡り、オックスフォード大学に入った。英国では、英国の女性画家と結婚し、英語の詩集『Spectrum』を自費出版した。
その後帰国し、32歳で慶應大文学部教授に就任した。
西脇はその後、英語、フランス語、日本語で詩を書き、詩論を発表し、俳句の世界でも活躍し、油彩画や水墨画を描いた。
シュルレアリスムに接近し、日本の古典を研究し、日本の文学界から推薦され、いく度かノーベル賞候補となった。
言語の壁を楽々と乗りこえた創作活動を展開し、米国の詩人エズラ・パウンドや、イタリアの詩人ジュゼッペ・ウンガレッティほか、海外の文学者と親交を結び、世界的な詩人として活躍した。
詩集『Ambarvalia』『旅人かへらず』『第三の神話』などを発表した後、1982年6月、心不全のため小千谷の病院で没した。88歳だった。
西脇順三郎の詩を初めて読んだのは学校の教科書だった。西洋的な感性の詩、という鮮やかな印象を受けた。煽情的でもある。記憶が正しければ、それは「雨」という詩だった。
「雨
南風は柔い女神をもたらした。
青銅をぬらした 噴水をぬらした
ツバメの羽と黄金の毛をぬらした
潮をぬらし 砂をぬらし 魚をぬらした
静かに寺院と風呂場と劇場をぬらした
この静かな柔い女神の行列が
私の舌をぬらした」(『Ambarvalia』椎の木社「日本の詩101年 新潮11月臨時増刊」)
西脇順三郎の詩を読むと、極東の果ての日本生まれでも、その知力を鍛えれば彼方遠い西洋文明をおのれの血肉とすることができる、その根源である古代ギリシアの精神をタイムスリップして生き直すことが可能なのだと知らされる。知力を徹底的に発揮すれば、われわれはアキレウスが考え感じていたことがわかるはずだ、という確信である。知の力の証明、それが西脇順三郎の詩だといえる。
子どものころからギリシア神話を読んできた自分には特に感慨深いものがあった。知的な世界における西洋と東洋のひとつの美しい握手を見る思いがする。
(2023年1月20日)
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