12月16日は、『金色夜叉』を書いた尾崎紅葉(慶応3年)が生まれた日だが、SF作家のフィリップ・K・ディックの誕生日でもある。SF映画「ブレードランナー」「トータル・リコール」「マイノリティ・リポート」などの原作者である。

フィリップ・キンドレド・ディックは、1928年、米国イリノイ州のシカゴで、政府役人の息子として生まれた。フィリップは双子として生まれ、もう一方の妹は誕生後しばらくして死亡した。彼の小説に、双子のまぼろしのイメージが登場するのはこのためだと言われる。
ディックは、大学を中退した後、働きながらSF小説を書いた。
そうして、35歳の年に、SF小説『高い城の男』でヒューゴー賞を受賞し、一躍その名を知られた。
以後、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』『流れよ我が涙、と警官は言った』『暗闇のスキャナー』などを書き、人間存在について深く考察する独特の作風で、SFというジャンルを越えて高く評価された。
生涯に5度結婚し5度離婚し、1982年3月、脳卒中で没した。53歳だった。
彼の遺灰は双子の妹と同じ墓に葬られた。

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』は、拙著『ここだけは原文で読みたい! 名作英語の名文句2』で取り上げた。SF映画の名作として知られる「ブレードランナー」の原作である。

この『電気羊』には、感服した。人間より人間らしいアンドロイドたちが、人間社会のなかにまぎれて暮らしている未来の話だけれど、まず、文章の密度が濃い。ハードボイルド・タッチの探偵小説を読んでいるようにおもしろく、ずんずん読み進めるうち、
「血が通っていれば、人間か?」
「人間である最低限の条件とは、なにか?」
「人間とはなにか?」
「おまえは、はたして人間か?」
などと、小説がこちら読者の胸倉をつかんで揺さぶってくる。問い詰められる。
重たいものを受けとらされる小説である。
すごい才能の作家で、まだ読んでいない方は、おすすめです。
人間らしく、生きたいなあ、と。
(2017年12月16日)



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