6月23日は、サッカー選手ジネディーヌ・ジダンが生まれた日(1972年)だが、米国の作家、リチャード・バックの誕生日でもある。『かもめのジョナサン』の作者である。
リチャード・バックは、1936年、米国イリノイ州のオークパークで生まれた。当地はヘミングウェイの生誕地でもある。バック本人は、自分は音楽の父ヨハン・ゼバスティアン・バッハの末裔だと主張していた。
学校を出た後、バックは米空軍の予備役に入り、24歳のころには仏国に駐屯していた。
彼は根っからの飛行機好きで、空軍予備役や、その後に入ったニュージャージー・ミリシャ(国民軍)でさまざまな戦闘機を操縦した。曲芸飛行気乗りをしていた時期もあり、飛行機会社の技術書を書いたり、飛行機雑誌の編集をしたりと、さまざまな職を転々とした。
1970年、彼が34歳のとき、『かもめのジョナサン(Jonathan Livingston Seagull)』を発表。これはジョナサンというかもめが、食べ物を求めて生きる生き方に飽きて、純粋に飛ぶことを追求することに目覚めるという寓話で、著者の飛行体験や人生哲学がそのなかに凝縮されている。
この短い本は、ハードカバーとして出版されると、驚異的な売り上げを示し、それまで『風と共に去りぬ』がもっていたハードカバーの売り上げ記録を塗り替えてしまった。
その後、バックは『イリュージョン』『ワン』などの作品を発表。これらは日本語にも訳出されている。
2012年、76歳のバックは、飛行機を着陸させようとして事故を起こした。天地さかさまに着陸して、頭部と肩に重傷を負ったが、生命に異状はなかった。彼は、この事故によって『かもめのジョナサン』の続編のインスピレーションを得たという。2013年には『パフとの旅(Travels with Puff)』を発表した。
『かもめのジョナサン』『イリュージョン』などの傑作を読んで自分は、もしもリチャード・ブローディガンが分裂的でなかったら、こういう現代の神話と呼ぶべき物語を書いただろうと想像した。
リチャード・バックは、空を飛ぶことに、人生の意味を投影して、物語を編んでいく、独特の軽みをもった作家である。
彼は自分の日常生活をおおやけにせず、露出を避け、なるたけ読者から距離を置き、正体を隠そうとしてきた作家である。しかし、その作品は、とても暖かく人間的で、逆に読者にとてもやさしく、近しい。彼の作品には、生を愛する心があり、自由への憧れがあり、人を許す包容力があると思う。
(2015年6月23日)
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『ここだけは原文で読みたい! 名作英語の名文句2』(金原義明)
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リチャード・バックは、1936年、米国イリノイ州のオークパークで生まれた。当地はヘミングウェイの生誕地でもある。バック本人は、自分は音楽の父ヨハン・ゼバスティアン・バッハの末裔だと主張していた。
学校を出た後、バックは米空軍の予備役に入り、24歳のころには仏国に駐屯していた。
彼は根っからの飛行機好きで、空軍予備役や、その後に入ったニュージャージー・ミリシャ(国民軍)でさまざまな戦闘機を操縦した。曲芸飛行気乗りをしていた時期もあり、飛行機会社の技術書を書いたり、飛行機雑誌の編集をしたりと、さまざまな職を転々とした。
1970年、彼が34歳のとき、『かもめのジョナサン(Jonathan Livingston Seagull)』を発表。これはジョナサンというかもめが、食べ物を求めて生きる生き方に飽きて、純粋に飛ぶことを追求することに目覚めるという寓話で、著者の飛行体験や人生哲学がそのなかに凝縮されている。
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その後、バックは『イリュージョン』『ワン』などの作品を発表。これらは日本語にも訳出されている。
2012年、76歳のバックは、飛行機を着陸させようとして事故を起こした。天地さかさまに着陸して、頭部と肩に重傷を負ったが、生命に異状はなかった。彼は、この事故によって『かもめのジョナサン』の続編のインスピレーションを得たという。2013年には『パフとの旅(Travels with Puff)』を発表した。
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彼は自分の日常生活をおおやけにせず、露出を避け、なるたけ読者から距離を置き、正体を隠そうとしてきた作家である。しかし、その作品は、とても暖かく人間的で、逆に読者にとてもやさしく、近しい。彼の作品には、生を愛する心があり、自由への憧れがあり、人を許す包容力があると思う。
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