3月10日は、1945年に米軍B29爆撃機344機による東京大空襲がおこなわれた日で、歌手の松田聖子が生まれた日(1962年)だが、ツイッターの共同創業者ビズ・ストーンの誕生日でもある。

ビズ・ストーンは、1974年、米国マサチューセッツ州ボストンで生まれた。本名は、クリストファー・アイザック・ストーンだが、小さいころ、クリストファーは自分の名前をうまく発音できず、「ビズアーバー」と言っていたのを母親がおもしろがり、彼のことを「ビズ」と呼びだし、それが彼の愛称として定着した。
加えて、彼の父親も同じ「クリストファー」という名前で、クリストファー・ジュニアの両親が離婚した後、母親は元夫の名前を聞きたくないという理由から、余計に息子のことを「ビズ」と呼び習わした経緯もあったようだ。
高校時代、新規のクラブであるラクロス部を創立し、演劇公演を自分で開催するなど、進取の気質と行動力に富んでいたビズは、奨学金を得てボストンのノースイースタン大学に入学したが、学業に身が入らず、1年ほどでマサチューセッツ大学へ移った。しかし、そこでも学業に興味を覚えず、20歳のころからボストンの出版社で働きはじめた。
出版社での仕事は社内の荷物運びだったが、あるるとき、社内に誰もいないのを見計らって、パソコンをいじり、新しい本のカバーデザインを作り、グラフィックデザイナーの作品のなかに忍ばせておいた。すると、彼のデザインが採用された。
「これは誰が作ったものか?」
作者さかしがはじまり、ビズが名乗り出ると、彼はブックデザイナーへと異動した。
出版社に3年ほど務めた後、ビズは友人とネット上のブログ支援サイト「ザンガ(Xanga)」を立ち上げた。これは画像や音声の入ったブログを作成できるサービスで、ザンガは若者のあいだで流行し、急成長した。しかし、事務所の移転をめぐり仲間と衝突し、ビズは会社へ行くのがいやになり、辞めてしまった。
彼は母親の家の地下室に引きこもり、「天才ビズ・ストーン(Biz Stone, Genius)」と銘打ったブログをひとりで書きつづけた。このブログが縁で、29歳のころ、パイラ・ラボという会社の経営者エヴァン・ウィリアムズと電子メールをやりとりするようになり、二人は意気投合した。ウィリアムズの会社は「ブロガー」というブログをかんたんに作れるソフトを提供して成功していたが、ウィリアムズはこの会社をグーグルに売却した。売却の条件にのなかに、ウィリアムズはグーグルの社員となって、ブロガーの指揮をとりつづける旨の条項が入っていて、それにウィリアムズはビズも加え、グーグルに呑ませた。
グーグルには大学卒業者でないと採用しない規約があり、ウィリアムズもビズも大学中退者だったが、特例で二人はグーグル社員となった。
ビズは30歳のとき、グーグルを辞め、ウィリアムズがはじめた新しいウェブサービス企業「オデオ」に加わった。そこにジャック・ドーシーが加わり、2006年、ビズが32歳のとき「ツイッター」のサービスがはじまった。ツイッターは爆発的な人気を博した。
ビズは会社の方向性を明確にする精神的支柱となり、外部むけの「会社の顔」として活躍した。ツイッターはまたたく間に成長し、全世界に膨大な数の利用者を抱える巨大システムとなったが、2011年の時点でなお収益以上に支出が多く、赤字だった。
創立者のウィリアムズがツイッターの業務から手を引き、ビズも2011年、37歳でツイッターを離れ、ツイッターは経営陣を刷新して収益改善に取り組みだした。
ストーンはツイッターに関してはアドバイザー役にまわり、起業家の投資・支援をしながら、テクノロジーニュースの「ワイアード(WIRED)」の指揮をとった。また、Q&Aのプラットフォーム「ジェリー・アプ」を立ち上げ、また、妻といっしょに立ち上げたビズ・アンド・リビア・ストーン財団を通じて教育や自然保護の慈善事業にも活躍している。

ビズ・ストーンはこう言っている。
「前向きな社風は、次ことがらから生みだされる。つねに心にとめていること、同僚に敬意を払うこと、そして仕事に感情移入すること。(Positive culture comes from being mindful, and respecting your coworkers, and being empathetic.)」(Brainy Quote:http://www.brainyquote.com/)
自分の気持ちに正直に、感情移入できる仕事に取り組むこと。「よい」と信じられるものに取り組んでこそ、人はその力を発揮できる、そのことを彼の半生は教えてくれていると思う。
(2015年3月10日)



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