6月3日は、ビートニク詩人、アレン・ギンズバーグが生まれた日(1926年)だが、映画監督、アラン・レネの誕生日でもある。
アラン・レネ監督作品というと自分は、映画史上もっとも難解な映画とされる「去年マリエンバートで」、それから、ジャン・ポール・ベルモンドがみずから制作、主演した「薔薇のスタビスキー」を思いだす。
アラン・レネは、1922年、仏国ヴァンヌで生まれた。父親は薬剤師で、彼はひとりっ子だった。アランは小さいころは病弱で、家に閉じこもって本ばかり読んでいる少年だった。
12歳のとき、親から8ミリカメラをプレゼントされ、それから映画に興味を覚えた。
第二次大戦中の21歳で映画学校に入り、兵役についた後、戦後、23歳ごろから映画を作りはじめた。
「ヴァン・ゴッホ」「ゲルニカ」「ゴーガン」といった、絵画芸術をテーマにした短編映画を撮った後、33歳のとき、ドキュメンタリー映画「夜と霧」を発表。これはナチス・ドイツによるホロコースト、アウシュヴィッツ強制収容所の問題に真正面から取り組んだ最初の映画のひとつで、カンヌ映画祭へ出品しようとしたが、外務省の西ドイツへの外交上の配慮から、コンペティションに参加できなかったといういわく付きの作品だった。
37歳のときには、初の長編映画「二十四時間の情事」。これは、日本の広島へロケでやってきたフランス人女優のヒロインが、岡田英次演じる日本人男性と知り合い、恋に落ち、情事を重ねる話で、そこに原爆の惨憺たる被害状況や、二人の背負った戦争の傷跡などが重ねて描かれる強烈な反戦映画だった。
そして、39歳で発表した長編第2作が「去年マリエンバートで」。過去と現在の記憶が交錯して描かれるこの作品は、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、その洗練されたスタイルと難解さによって、世界映画界に衝撃を与えた。
その後「ミュリエル」「恋するシャンソン」、そしてフランス政界を揺るがせた疑獄事件を扱った問題作「薔薇のスタビスキー」などを撮った後、2014年3月、パリで没した。91歳だった。
子どものころ、はじめて東宝の怪獣映画を映画館で観て以来、自分にとって映画鑑賞は特別な、芸術や人生と真正面から向き合う貴重な機会であり、ハリウッドの娯楽作品を除けば、いつも観るときは真剣勝負のような気持ちで観てきた。だから、映画館で眠るなどということはなかった。ロッセリーニの「無防備都市」やゴダールの映画を観ても寝たことはなかった。かつては。
そんな自分が、はじめて観ながら眠ったのは「去年マリエンバートで」だった。黒澤彰監督の「羅生門」に触発されて企画し、ロブ=グリエが脚本を書き、ココ・シャネルが衣裳デザインを担当したヨーロッパ文化の洗練の極致だということは感じたが、さすがに延々と繰り返される、現在だか過去だか未来だかわからない、似たような映像にもうろうとしてきて、数分間意識がなかった。
現在では、映画館では眠らないほうがめずらしいという体たらくで、もはや自分にとって映画は、一度目におおまかに観ておいて、二度目に観落とした部分を補足する、という二段構えで鑑賞するものとなっているが、そういう鑑賞法を教えてくれたのが、アラン・レネ監督だった。
硬派の前衛で、現実的で、かつ幻想的。すごい個性的な監督だったと思う。
(2014年6月3日)
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アラン・レネ監督作品というと自分は、映画史上もっとも難解な映画とされる「去年マリエンバートで」、それから、ジャン・ポール・ベルモンドがみずから制作、主演した「薔薇のスタビスキー」を思いだす。
アラン・レネは、1922年、仏国ヴァンヌで生まれた。父親は薬剤師で、彼はひとりっ子だった。アランは小さいころは病弱で、家に閉じこもって本ばかり読んでいる少年だった。
12歳のとき、親から8ミリカメラをプレゼントされ、それから映画に興味を覚えた。
第二次大戦中の21歳で映画学校に入り、兵役についた後、戦後、23歳ごろから映画を作りはじめた。
「ヴァン・ゴッホ」「ゲルニカ」「ゴーガン」といった、絵画芸術をテーマにした短編映画を撮った後、33歳のとき、ドキュメンタリー映画「夜と霧」を発表。これはナチス・ドイツによるホロコースト、アウシュヴィッツ強制収容所の問題に真正面から取り組んだ最初の映画のひとつで、カンヌ映画祭へ出品しようとしたが、外務省の西ドイツへの外交上の配慮から、コンペティションに参加できなかったといういわく付きの作品だった。
37歳のときには、初の長編映画「二十四時間の情事」。これは、日本の広島へロケでやってきたフランス人女優のヒロインが、岡田英次演じる日本人男性と知り合い、恋に落ち、情事を重ねる話で、そこに原爆の惨憺たる被害状況や、二人の背負った戦争の傷跡などが重ねて描かれる強烈な反戦映画だった。
そして、39歳で発表した長編第2作が「去年マリエンバートで」。過去と現在の記憶が交錯して描かれるこの作品は、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、その洗練されたスタイルと難解さによって、世界映画界に衝撃を与えた。
その後「ミュリエル」「恋するシャンソン」、そしてフランス政界を揺るがせた疑獄事件を扱った問題作「薔薇のスタビスキー」などを撮った後、2014年3月、パリで没した。91歳だった。
子どものころ、はじめて東宝の怪獣映画を映画館で観て以来、自分にとって映画鑑賞は特別な、芸術や人生と真正面から向き合う貴重な機会であり、ハリウッドの娯楽作品を除けば、いつも観るときは真剣勝負のような気持ちで観てきた。だから、映画館で眠るなどということはなかった。ロッセリーニの「無防備都市」やゴダールの映画を観ても寝たことはなかった。かつては。
そんな自分が、はじめて観ながら眠ったのは「去年マリエンバートで」だった。黒澤彰監督の「羅生門」に触発されて企画し、ロブ=グリエが脚本を書き、ココ・シャネルが衣裳デザインを担当したヨーロッパ文化の洗練の極致だということは感じたが、さすがに延々と繰り返される、現在だか過去だか未来だかわからない、似たような映像にもうろうとしてきて、数分間意識がなかった。
現在では、映画館では眠らないほうがめずらしいという体たらくで、もはや自分にとって映画は、一度目におおまかに観ておいて、二度目に観落とした部分を補足する、という二段構えで鑑賞するものとなっているが、そういう鑑賞法を教えてくれたのが、アラン・レネ監督だった。
硬派の前衛で、現実的で、かつ幻想的。すごい個性的な監督だったと思う。
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