1月26日は、ソニーの創業者のひとり、盛田昭夫が生まれた日(1921年)だが、タレント・ミュージシャンの所ジョージの誕生日でもある。
テレビをつければお笑いタレントの顔が映る、現代はお笑いタレント全盛の時代だけれど、クリエイティブ(創造的)な才能を感じさせるお笑いタレントはそう多くない。そんななかでも、強いクリエイティビティーを感じさせる個性派タレント、それが所ジョージだと思う。

所ジョージは、1955年、埼玉県の所沢で生まれた。出生時の名は、角田隆之(かくたたかゆき)といった。
彼は大学に進学したが、授業にまったく出席せず、学費滞納により除籍になった。
宇崎竜童が率いるダウン・タウン・ブギウギ・バンドの雑用係となり、ライブハウスでは、ブギウギ・バンドの前座を務めた。「所ジョージ」という芸名は、宇崎が命名したもので、出身地の所沢と、ミュージシャンの柳ジョージをかけたものだという。
22歳のとき、「ギャンブル狂想曲/組曲 冬の情景」でデビュー。
フォークギターを抱え、漫談をしゃべりながら、コミック・ソングを歌うシンガー・ソング・ライターとしてしだいに活動の場を広げ、ラジオ、テレビの人気者になった。

自分は、所ジョージのデビュー曲はよく覚えている。高校の友人が「冬を情景」を口ずさんでいて、おもしろい歌だなあ、と感心した。同じころ、「寿司屋」という曲もよく聴いた気がする。「あのねのね」の後継者というか、発展形という気がした。当時、所ジョージはラジオの深夜番組をやっていて、それで受験生など深夜族を中心に所人気は高まっていったように思う。

所ジョージの歌や本、発言は、自分にはどれもおもしろく愉快だけれど、自分がいちばん感心したのは、テレビのバラエティー番組にゲスト出演した所ジョージが、新しい漢字を考えた、と紙に書いて紹介したときだった。これは、見た方も多いかもしれない。

ふつう、漢字には、「かんむり」とか「にょう」とかいった部首があり、「音読み」と「訓読み」のふた通りの読み方がある。
所ジョージが考えた新漢字は、ふつうとはちょっと変わった部首があって、読み方が「かよー読み」と「じゃねーの読み」のふた通りがあるという。

たとえば、「京」の部首は「なべぶた」だが、「なべぶた」の上にブタの鼻のようなものを書き加えて「ブタぶた」という部首を作る。その「ブタぶた」の下に「肉」という字を書くと、これが彼の新漢字で、読み方は、
「かよー読み」が「また肉かよー」、
「じゃねーの読み」が「野菜とかも食べたほうがいいんじゃねーの」。

あるいは、「道」の部首は「しんにょう」だが、しんにょうの左部分にかたつむりのカラを描き加えて、「でんでんにょう」とする。それで、たとえば「遅」の「にょう」部分を「でんでんにょう」に変えて新漢字とし、読み方は、
「かよー読み」が「まだ来ねーのかよー」、
「じゃねーの読み」が「もう来ねーんじゃねーの」。
(文章で説明すると、わかりにくいかもしれませんが)

と、うろ覚えなので、正確ではないのかもしれないが、こういった新しい漢字を次から次へと発表して見せたのだった。自分はそのとき、
「ああ、才人というのはいるものだ」
と感嘆した。パロディでも改造でもなんでもやって、とにかく新しいものをどんどん創り出そうとするそのクリエイト魂に打たれた。
(2014年1月26日)





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