1月19日・エドガー・アラン・ポーのすごみ

1月19日は、文豪、森鴎外(本名・森林太郎)が生まれた日(文久2年)だが、米国の作家、エドガー・アラン・ポーの誕生日でもある。
自分は、エドガー・アラン・ポーよりも先に、江戸川乱歩を小さいころから知っていた。後で、エドガー・アラン・ポーという作家がいることを知ったとき、なんだか江戸川乱歩に似ているなぁ、と思ったが、乱歩のほうがポーの音にあてて漢字を並べ、ペンネームにしたのだと知って、なるほど、と思った。ポーはそれほどえらい作家である。

エドガー・ポーは、1809年、米国マサチューセッツ州のボストンで生まれた。両親はともに俳優だった。エドガーは3人きょうだいのまんなかで、上に兄、下に妹がいた。
エドガーが生まれた翌年、父親ば家族を捨てて出ていき、その後、母親が肺結核で没したため、エドガーは、ヴァージニア州リッチモンドに住む裕福な商人で、ジョン・アランという人の家に引き取られた。そこで彼は、エドガー・アラン・ポーという名を名乗ることになった。
ヴァージニア大学に1年ほど通った後、18歳のとき、年齢を22歳といつわって陸軍に入隊した。陸軍士官学校をへて、雑誌編集にかかわるようになり、編集者として辣腕をふるいながら、詩や短編小説を発表しつづけた。
ポーは、米国ではじめて著述によって生活を立てようとした作家と言われる。が、当時はまだ著作権が確立されておらず、経済的にはひじょうな困難を強いられた。
発表した作品は公表で、ヨーロッパでも高い評価を受けたが、経済的には恵まれず、貧しい生活のなかで執筆を続けた。
1849年10月、メリーランド州ボルティモアの路上で倒れ、うわごとを言っているところを発見されたポーは、病院に担ぎ込まれ、その4日後に没した。40歳だった。
作品に、世界最初の推理小説といわれる『モルグ街の殺人』、短編小説に『アッシャー家の崩壊』『黄金虫』『黒猫』、詩に『大鴉』などがある。

ポーの作品は拙著『名作英語の名文句』の1、2の両方で取り上げた。取り上げたのは『黒猫』と『メールストロムの旋渦』で、いずれも衝撃的で偉大な作品だと思う。

自分はポーよりも先に乱歩の名前を知っていた。のだけれど、話がややこしいが、乱歩の作品よりも先にポーのほうを先に読んでいた。
小学生のときに自分がはじめて読んだポーの小説は『メールストロムの旋渦』だった。そのときは、ポーの作品だと知らずに読んでいて、大人になって、ポーの作品だと気づいた。『死霊』を書いた埴谷雄高も、たしかこの作品を絶賛していた。
それは、船乗りが海で巨大な渦に巻き込まれた体験を語る話で、その人は機転をきかせてかろうじて助かったのだけれど、子どものときに読んでいて感じた、あのなんとも言えない恐ろしい印象は、いまだによく覚えている。この小説は、村上春樹の『スプートニクの恋人』に影響を与えていると、自分は思う。

ポーの書いたものには、なにか、人間のもつ重たい運命というものを、わしづかみにしてきて、どんっと、机の上に置いて見せた、そういうすごみがあると思う。
(2014年1月19日)


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