1月13日は、「悲母観音像」を描いた画家、狩野芳崖が生まれた日(文政11年)だが、たばこの銘柄「ピース」の誕生日でもある。この日はピース記念日とされている。
ピースは1946年1月13日に発売された。当時、10本入り、7円で、日曜・祝日に1人1箱限定で販売という、なかなか買えない超高級たばこブランドとしてのデビューだった。

「ピーカン」という快晴を指すことばは、もともと映画業界の用語だそうだ。由来は、「ピントが完全」からきたとする説など諸説あるけれど、自分が聞いていたのは「快晴の空の色がピースの缶の色のように青い」という説だった。これがいちばんメジャーな説かもしれない。ピースには缶入りもあって、その缶が青色の地に、鳩がオリーブの葉をくわえているデザインで、その青を空の青にたとえているのである。でも、自分の思うには、ピースの青は、かなり濃い、暗い藍色で、むしろ夜空の色に近いと思う。

『ドリアン・グレイの肖像』を書いた芸術至上主義者、オスカー・ワイルドは言った。
「シガレットを吸わなくてはならない。シガレットは完全な快楽中のなかのもっとも完全なタイプだ。(You must have a cigarette. A cigarette is the perfect type of a perfect pleasure.)」

英国のロックスター、デヴィッド・ボウイはこう歌った。
「時がたばこを取り上げ、きみの口にくわえさせる。
 きみは指で、べつの指で、そしてまたつぎのたばこを吸う。
(Time takes a cigarette, puts it in your mouth
You pull on your finger, then another finger, then your cigarette)」(「ロックンロールの自殺者(Rock'n'roll Suiside)」)

亡くなった俳優の山城新伍さんは、かつてテレビ番組でこう言っていた。
「たばこの紙がからだに悪いというので、最近は葉巻を吸うようにしているんだ」
もちろん、葉巻のニコチンやタールが人体にいい影響を与えるはずもないが、紙巻きたばこの場合、紙が燃えるときに発生する一酸化炭素を吸うのがよくないという話は自分も聞いたことがあった。そんな覚えがあったので、山城さんが亡くなったとき、その死因に自分は注目した。肺ガンだったりしないかしら、と。
死因は、誤嚥性の肺炎らしい。年をとると、どうしても誤って飲み食いしたものが肺に入り、細菌が発生して肺炎を起こしやすくなる。かなり気をつけていても、誤嚥性肺炎になるのは、なかなか完全には避けづらい。
山城さんの場合、葉巻に変えて、正解だったのかもしれない。

自分も若いころはたばこをたくさん吸っていた。かぎたばこや、かみたばこ、葉巻、パイプなど、ひと通りは吸った。もうたばこをやめて、十五年以上になる。たばこをやめてから、人生がつまらなくなった気がする。
いまだに吸いたくなる。最近はたまに吸ったりする。
でも、吸ったからと言って、急に人生が楽しくなるわけでもない。そういうことが分かり、失望するだけである。それでもまたしばらくたつと、
「やっぱり、そこになにか『いいもの』がある気がする」
と、たばこのことを考えだす。自分は呪われた種族なのかもしれない。
(2014年1月13日)



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狩野芳崖、村上春樹、三島由紀夫、盛田昭夫、夏目漱石、ビートたけし(北野武)、ちばてつや、デヴィッド・ボウイ、エイゼンシュテイン、スタンダール、モーツァルトなど1月誕生の31人の人物評論。人気ブログの元となった、より詳しく、深いオリジナル原稿版。1月生まれの教科書。
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