12月20日は、巨大タイヤ・メーカーの創業者、ハーベイ・ファイアストーン(1868年)が生まれた日だが、超能力者、ユリ・ゲラーの誕生日でもある。
自分がユリ・ゲラーをはじめてテレビで見たのは子どもの時分で、彼のスプーン曲げは日本中で話題になった。当時、ユリ・ゲラーほど日本で有名な外国人はいなかった。
ユリ・ゲラーは、1946年、イスラエルのテルアビブで生まれた。オーストリア・ハンガリー系ユダヤ人の家系で、誕生時の本名は、ジェルジ・ゲッレール。彼の父親は退役軍人で、母親は、精神分析学ジークムント・フロイトの親戚だという。彼は11歳のころ、家族とともにキプロスへ引っ越し、そちらの高校、大学に通い、英語で教育を受けた。
18歳のとき、イスラエル軍に入隊。退役後、22歳のころには、写真の男性モデルをしていたが、そのころからイスラエル国内のナイトクラブで「超能力ショー」と銘打った奇術ショーをはじめた。
27歳のころから、米国、英国のテレビ番組に出演して、超能力を披露。
28歳になる年から、来日し、テレビ出演するようになった。テレビ番組のなかでユリ・ゲラーは、スプーン曲げをやって見せ、テレビを通じてお茶の間に念を送り、全国の家庭で、壊れて止まっていた時計を動かすなどのパフォーマンスをおこない、全国に超能力ブームを巻き起こした。
多くのマジシャンによって、スプーン曲げや、隠れた図形を描いて見せる彼の「超能力」は、よくある手品の一種だと指摘されてきたが、彼は依然として、ヨーロッパのテレビ番組に出演しては「超能力」パフォーマンスを披露しつづけている。
その昔、ユリ・ゲラーは、日本のテレビの生放送に出演し、視聴者に呼びかけた。
「家にある、止まって動かなくなった時計を手にもってください。これからわたしが、時計が動くように念を送りますから、いっしょにあなたも動くように念じてください」
そのとき、自分もテレビを見ていたが、止まった時計も、鳴らなくなったラジオもなかったので、その実験には参加できなかった。テレビ局には、全国から、
「いま、時計が動きだしました」
「こわれてテレビが映りました」
といった報告の電話が寄せられていた。
このとき、評論家の小林秀雄が、友人の今日出海の家にいて、このテレビ番組を見ていて、おもしろがり、二人はこわれた時計をもちだしてきて、手にもったそうだ。すると、両人の掌中の時計はみごとに動きはじめ、とてもおもしろかった、と小林秀雄は語っていた。小林はこれについて、こういう意味のことを言っていた。
「あんなことは昔からよくある、当たり前のことであって、不思議でもなんでもない。ユリ・ゲラーみたいなまねをしていたら、すぐにああいう力はだめになってしまう」
自分はそれを聞いて、そういうものなんだぁ、と思った。
「超能力があったらなあ」
とは、自分も思うけれど、自分はリモコンスイッチなしではテレビをつけられないし、ときどきそのリモコンさえ見つからなくて、オタオタする。
最近では、たとえば、自宅で階段を上ってから、「はて、なにをしにきたのだったか」と首をひねることもよくあり、ごく日常の生活能力さえ危うい今日このごろで、もはや超能力どころではなくなっているけれど。
(2013年12月20日)
●おすすめの電子書籍!
『12月生まれについて』(ぱぴろう)
ファイアストーン、キース・リチャーズ、ベートーヴェン、ハイネ、ディズニー、ゴダール、ディートリッヒ、ブリトニー・スピアーズ、マリア・カラス、ウッディ・アレン、ニュートン、エッフェル、尾崎紅葉、伊藤静雄、埴谷雄高など、12月誕生の31人の人物評論。人気ブログの元となった、より深く詳しいオリジナル原稿版。12月生まれの取扱説明書。
http://www.meikyosha.com/ad0001.htm
自分がユリ・ゲラーをはじめてテレビで見たのは子どもの時分で、彼のスプーン曲げは日本中で話題になった。当時、ユリ・ゲラーほど日本で有名な外国人はいなかった。
ユリ・ゲラーは、1946年、イスラエルのテルアビブで生まれた。オーストリア・ハンガリー系ユダヤ人の家系で、誕生時の本名は、ジェルジ・ゲッレール。彼の父親は退役軍人で、母親は、精神分析学ジークムント・フロイトの親戚だという。彼は11歳のころ、家族とともにキプロスへ引っ越し、そちらの高校、大学に通い、英語で教育を受けた。
18歳のとき、イスラエル軍に入隊。退役後、22歳のころには、写真の男性モデルをしていたが、そのころからイスラエル国内のナイトクラブで「超能力ショー」と銘打った奇術ショーをはじめた。
27歳のころから、米国、英国のテレビ番組に出演して、超能力を披露。
28歳になる年から、来日し、テレビ出演するようになった。テレビ番組のなかでユリ・ゲラーは、スプーン曲げをやって見せ、テレビを通じてお茶の間に念を送り、全国の家庭で、壊れて止まっていた時計を動かすなどのパフォーマンスをおこない、全国に超能力ブームを巻き起こした。
多くのマジシャンによって、スプーン曲げや、隠れた図形を描いて見せる彼の「超能力」は、よくある手品の一種だと指摘されてきたが、彼は依然として、ヨーロッパのテレビ番組に出演しては「超能力」パフォーマンスを披露しつづけている。
その昔、ユリ・ゲラーは、日本のテレビの生放送に出演し、視聴者に呼びかけた。
「家にある、止まって動かなくなった時計を手にもってください。これからわたしが、時計が動くように念を送りますから、いっしょにあなたも動くように念じてください」
そのとき、自分もテレビを見ていたが、止まった時計も、鳴らなくなったラジオもなかったので、その実験には参加できなかった。テレビ局には、全国から、
「いま、時計が動きだしました」
「こわれてテレビが映りました」
といった報告の電話が寄せられていた。
このとき、評論家の小林秀雄が、友人の今日出海の家にいて、このテレビ番組を見ていて、おもしろがり、二人はこわれた時計をもちだしてきて、手にもったそうだ。すると、両人の掌中の時計はみごとに動きはじめ、とてもおもしろかった、と小林秀雄は語っていた。小林はこれについて、こういう意味のことを言っていた。
「あんなことは昔からよくある、当たり前のことであって、不思議でもなんでもない。ユリ・ゲラーみたいなまねをしていたら、すぐにああいう力はだめになってしまう」
自分はそれを聞いて、そういうものなんだぁ、と思った。
「超能力があったらなあ」
とは、自分も思うけれど、自分はリモコンスイッチなしではテレビをつけられないし、ときどきそのリモコンさえ見つからなくて、オタオタする。
最近では、たとえば、自宅で階段を上ってから、「はて、なにをしにきたのだったか」と首をひねることもよくあり、ごく日常の生活能力さえ危うい今日このごろで、もはや超能力どころではなくなっているけれど。
(2013年12月20日)
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ファイアストーン、キース・リチャーズ、ベートーヴェン、ハイネ、ディズニー、ゴダール、ディートリッヒ、ブリトニー・スピアーズ、マリア・カラス、ウッディ・アレン、ニュートン、エッフェル、尾崎紅葉、伊藤静雄、埴谷雄高など、12月誕生の31人の人物評論。人気ブログの元となった、より深く詳しいオリジナル原稿版。12月生まれの取扱説明書。
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