9月15日は、元「敬老の日」で、いまは「老人の日」。祝日の「敬老の日」は9月の第三月曜日に引っ越した。この日は、『東方見聞録』を書いたマルコ・ポーロが生まれた日(1254年)だが、「ミステリーの女王」アガサ・クリスティの誕生日でもある。
自分は中学生時代から、アガサ・クリスティの名はよく知っていた。「灰色の脳細胞」をもつ名探偵、エルキュール・ポアロや、近所のうわさ話を聞いて推理し事件を解決してしまうミス・マープルの生みの親である。
アガサ・メアリ・クラリッサ・クリスティは、1890年、英国イングランドのトーキーで生まれた。父親は裕福な米国人で、母親は北アイルランド出身。アガサの上には、11歳上の姉と、10歳上の兄がいた。母親の強い信念によって、アガサは小さいとき、学校に行かず、家庭で母親によって読み書きや数学、音楽などを教わった。
彼女が11歳のとき、病弱だった父親が心臓発作で没し、12歳のとき、女学校に入った。
大人になったアガサは、婿さがしのかたわら、戯曲や詩や音楽を書いた。そうして、小説を書くようになった。
アガサは、貴族の屋敷で開かれたダンスパーティーで出会ったアーチボルド・クリスティーと恋に落ち、婚約。やがてはじまった第一次世界大戦のさなか、二人はアガサが24歳クリスマスイヴに結婚した。こうして彼女は「アガサ・クリスティー」となった。
以前からシャーロッ・ホームズものなどを読んでミステリー小説が好きだったアガサは、口ひげをたくわえ、たまご型の頭をしたベルギー人の探偵、エルキュール・ポアロ
が登場する『スタイルズ荘の怪事件』を書き、出版社に持ち込んだ。するとある出版社が、結末を変えることを条件に出版に応じ、アガサは変更を承諾した。そして、彼女が
30歳のときに本が出版された。
36歳のとき、『アクロイド殺し』を発表。奇抜なトリックをめぐってミステリーファンのあいだに論争が巻き起こり、アガサは一躍ベストセラー作家になった。
38歳のとき、アーチボルドと離婚し、40歳のときに14歳年下の考古学者と再婚。彼女はこの再婚についてこういうジョークを飛ばしている。
「考古学者は女性にとって最高の伴侶だわ。だって、女性が年代ものになっていくほど、彼は興味をひかれていくのだから。」
以後、『ABC殺人事件』など、現在でも読み継がれているミステリーの名作を書き、「ミステリーの女王」と呼ばれた。
1976年1月、オックスフォードシャー州で没した。85歳だった。
アガサ・クリスティの作品のうち、自分が読んだのはわずかだが、『オリエント急行殺人事件』『そして誰もいなくなった』の意匠の鮮やかさは、いまでも強く印象に残っている。トリックといい、人物造形といい、目指しているレベルが高い、という感じがした。『オリエント急行殺人事件』は、拙著『名作英語の名文句』でも取り上げた。
長編だけでも六十編以上、短編はそれ以上を書き、80歳をすぎてもまだ書き続けていた彼女の頭にある、くめども尽きぬ創作の泉の豊かさには、ただただ感嘆するほかない。
どこでミステリーのアイディアを考えるかについて、アガサはこう言っている。
「本のプランを考えるもっともいいときは、お皿を洗っているときよ。(The best time to plan a book is while you're doing the dishes.)」
(2013年9月15日)
●ぱぴろうの電子書籍!
『ここだけは原文で読みたい! 名作英語の名文句』
「オリエント急行殺人事件」「風と共に去りぬ」から「ハリー・ポッター」まで、英語の名作の名文句(英文)を解説、英語ワンポイン・レッスンを添えた新読書ガイド。
www.papirow.com
自分は中学生時代から、アガサ・クリスティの名はよく知っていた。「灰色の脳細胞」をもつ名探偵、エルキュール・ポアロや、近所のうわさ話を聞いて推理し事件を解決してしまうミス・マープルの生みの親である。
アガサ・メアリ・クラリッサ・クリスティは、1890年、英国イングランドのトーキーで生まれた。父親は裕福な米国人で、母親は北アイルランド出身。アガサの上には、11歳上の姉と、10歳上の兄がいた。母親の強い信念によって、アガサは小さいとき、学校に行かず、家庭で母親によって読み書きや数学、音楽などを教わった。
彼女が11歳のとき、病弱だった父親が心臓発作で没し、12歳のとき、女学校に入った。
大人になったアガサは、婿さがしのかたわら、戯曲や詩や音楽を書いた。そうして、小説を書くようになった。
アガサは、貴族の屋敷で開かれたダンスパーティーで出会ったアーチボルド・クリスティーと恋に落ち、婚約。やがてはじまった第一次世界大戦のさなか、二人はアガサが24歳クリスマスイヴに結婚した。こうして彼女は「アガサ・クリスティー」となった。
以前からシャーロッ・ホームズものなどを読んでミステリー小説が好きだったアガサは、口ひげをたくわえ、たまご型の頭をしたベルギー人の探偵、エルキュール・ポアロ
が登場する『スタイルズ荘の怪事件』を書き、出版社に持ち込んだ。するとある出版社が、結末を変えることを条件に出版に応じ、アガサは変更を承諾した。そして、彼女が
30歳のときに本が出版された。
36歳のとき、『アクロイド殺し』を発表。奇抜なトリックをめぐってミステリーファンのあいだに論争が巻き起こり、アガサは一躍ベストセラー作家になった。
38歳のとき、アーチボルドと離婚し、40歳のときに14歳年下の考古学者と再婚。彼女はこの再婚についてこういうジョークを飛ばしている。
「考古学者は女性にとって最高の伴侶だわ。だって、女性が年代ものになっていくほど、彼は興味をひかれていくのだから。」
以後、『ABC殺人事件』など、現在でも読み継がれているミステリーの名作を書き、「ミステリーの女王」と呼ばれた。
1976年1月、オックスフォードシャー州で没した。85歳だった。
アガサ・クリスティの作品のうち、自分が読んだのはわずかだが、『オリエント急行殺人事件』『そして誰もいなくなった』の意匠の鮮やかさは、いまでも強く印象に残っている。トリックといい、人物造形といい、目指しているレベルが高い、という感じがした。『オリエント急行殺人事件』は、拙著『名作英語の名文句』でも取り上げた。
長編だけでも六十編以上、短編はそれ以上を書き、80歳をすぎてもまだ書き続けていた彼女の頭にある、くめども尽きぬ創作の泉の豊かさには、ただただ感嘆するほかない。
どこでミステリーのアイディアを考えるかについて、アガサはこう言っている。
「本のプランを考えるもっともいいときは、お皿を洗っているときよ。(The best time to plan a book is while you're doing the dishes.)」
(2013年9月15日)
●ぱぴろうの電子書籍!
『ここだけは原文で読みたい! 名作英語の名文句』
「オリエント急行殺人事件」「風と共に去りぬ」から「ハリー・ポッター」まで、英語の名作の名文句(英文)を解説、英語ワンポイン・レッスンを添えた新読書ガイド。
www.papirow.com