8月26日は、1789年のこの日、フランス人権宣言が採択された人権宣言記念日。この日は、「神の愛の宣教者会」を創立したマザー・テレサが生まれた日(1910年)だが、仏国の詩人、アポリネールの誕生日でもある。
自分は学生のころ、アポリネールの詩「ミラボー橋」を読んで好きになり、そのころからのつきあいで、なんだか昔なじみという感じがする。
ギヨーム・アポリネールは、1880年、イタリアのローマで、ポーランド貴族の娘が産んだ私生児として誕生した。モナコやカンヌ、ニースの学校に通ったアポリネールは、19歳のとき、仏国パリへやってきた。
パリでは、家庭教師をし、春本の原稿を書きながら、ジャリ、マチス、ピカソ、ジャコブ、アンリ・ルソーなどの芸術家たちと交友を深め、雑誌に詩を発表した。
27年のとき、ピカソの紹介でマリ・ローランサンと出会い、恋に落ちた。句読点をすべて排除した詩集『アルコール』や、文字を図形状に配置した詩集『カリグラム』など、前衛的な詩を発表し話題を集めた。『アルコール』に収録された、ローランサンとの別れをうたった「ミラボー橋」はシャンソンにもなった。
1914年、第一次世界大戦が勃発すると、34歳のアポリネールは志願入隊し、砲兵隊に配属された。失恋の痛手から志願したとも言われる。
35歳のとき、戦場で頭部を負傷。開頭手術を受けた。
まだ戦時下だった1918年、詩集や戯曲を出版し、結婚したが、大流行したスペイン風邪(インフルエンザ)にかかり、同年11月に没した。38歳だった。
ダダイズムからシュールレアリスムへ移るころの人気詩人、アポリネールは、ルーヴル美術館など「燃えてしまえ」と言ったことがあるそうで、33歳のとき、ルーヴル美術館からダ・ヴィンチ作の絵画「モナ・リザ」が盗まれると、容疑がかけられ、逮捕、留置された。このときはピカソも疑われて、取り調べを受けたという。二人ともすぐに解放され、真犯人が捕まり、彼らの無実が証明されたが、この一件によって「モナ・リザ」はいちだんと有名になったらしい。大詩人のアポリネールが盗むかもしれないと疑われるくらいなら、それは傑作なのだろう、と。
詩「ミラボー橋」はこんな感じではじまる。
「ミラボー橋の下をセーヌ河が流れ
われ等の恋が流れる
わたしは思ひ出す
悩みのあとには楽しみが来ると
日も暮れよ 鐘も鳴れ
月日は流れ わたしは残る」(堀口大学訳『月下の一群』新潮文庫)
折々の心情を、伸びやかにうたうアポリネールの瑞々しい感性が、いいと思う。こんな世の中では、たまにはアポリネールを読まないと、正気でいられない、そんな気がする。
(2013年8月26日)
●ぱぴろうの電子書籍!
『ポエジー劇場 天使』
カラー絵本。いたずら好きな天使たちの生活ぶりを、詩情豊かな絵画で紹介。巻末にエッセイを収録。
www.papirow.com
自分は学生のころ、アポリネールの詩「ミラボー橋」を読んで好きになり、そのころからのつきあいで、なんだか昔なじみという感じがする。
ギヨーム・アポリネールは、1880年、イタリアのローマで、ポーランド貴族の娘が産んだ私生児として誕生した。モナコやカンヌ、ニースの学校に通ったアポリネールは、19歳のとき、仏国パリへやってきた。
パリでは、家庭教師をし、春本の原稿を書きながら、ジャリ、マチス、ピカソ、ジャコブ、アンリ・ルソーなどの芸術家たちと交友を深め、雑誌に詩を発表した。
27年のとき、ピカソの紹介でマリ・ローランサンと出会い、恋に落ちた。句読点をすべて排除した詩集『アルコール』や、文字を図形状に配置した詩集『カリグラム』など、前衛的な詩を発表し話題を集めた。『アルコール』に収録された、ローランサンとの別れをうたった「ミラボー橋」はシャンソンにもなった。
1914年、第一次世界大戦が勃発すると、34歳のアポリネールは志願入隊し、砲兵隊に配属された。失恋の痛手から志願したとも言われる。
35歳のとき、戦場で頭部を負傷。開頭手術を受けた。
まだ戦時下だった1918年、詩集や戯曲を出版し、結婚したが、大流行したスペイン風邪(インフルエンザ)にかかり、同年11月に没した。38歳だった。
ダダイズムからシュールレアリスムへ移るころの人気詩人、アポリネールは、ルーヴル美術館など「燃えてしまえ」と言ったことがあるそうで、33歳のとき、ルーヴル美術館からダ・ヴィンチ作の絵画「モナ・リザ」が盗まれると、容疑がかけられ、逮捕、留置された。このときはピカソも疑われて、取り調べを受けたという。二人ともすぐに解放され、真犯人が捕まり、彼らの無実が証明されたが、この一件によって「モナ・リザ」はいちだんと有名になったらしい。大詩人のアポリネールが盗むかもしれないと疑われるくらいなら、それは傑作なのだろう、と。
詩「ミラボー橋」はこんな感じではじまる。
「ミラボー橋の下をセーヌ河が流れ
われ等の恋が流れる
わたしは思ひ出す
悩みのあとには楽しみが来ると
日も暮れよ 鐘も鳴れ
月日は流れ わたしは残る」(堀口大学訳『月下の一群』新潮文庫)
折々の心情を、伸びやかにうたうアポリネールの瑞々しい感性が、いいと思う。こんな世の中では、たまにはアポリネールを読まないと、正気でいられない、そんな気がする。
(2013年8月26日)
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カラー絵本。いたずら好きな天使たちの生活ぶりを、詩情豊かな絵画で紹介。巻末にエッセイを収録。
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