8月12日は、猫のたとえ話で有名な理論物理学者、シュレーディンガーが生まれた日(1887年)だが、神智学を開いたブラヴァツキー夫人の誕生日でもある。
「ブラヴァツキー夫人」の名前は、自分は若いころから知っていた。自分の場合は、クリシュナムルティのことを読むうちに、神智学協会を知り、その創設者である彼女のことを知った。

ブラヴァツキー夫人は、エレーナ・ペトローヴナ・フォン・ハーン として、1831年、現在のウクライナのドニプロペトロフシで生まれた。父親はドイツ貴族の血をひく軍人で、母親は上流出身だった。
エレーナは、18歳になる年に、彼女よりずっと年上の政治家、ニキフォル・ブラヴァツキーと結婚し、ヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキーとなった。しかし、彼女はすぐに年輩の夫から逃げだした。彼女は旅に出、エジプト、フランス、ギリシア、東ヨーロッパ、インド、チベットなど、世界を何年間も放浪した。彼女の居どころを知っていた父親がときどきお金を送っていたらしい。
42歳のとき、米国ニューヨークに着いた。夫とは別れたもののブラヴァツキー夫人を名乗る彼女は、米国での降霊会で知り合った米国人ヘンリー・オルコット大佐と意気投合し、1875年、彼女が44歳のとき、ニューヨークで「神智学協会」を創設した。
神智学協会とは、人種や信条、性別、階級、皮膚の色のちがいにとらわれず人類の普遍的同胞愛の中核となること、そして、宗教、哲学、科学の比較研究を促進し、未知の自然法則や、人間の潜在能力を研究することを目的とした私設の国際組織である。
彼女が48歳のとき、神智学協会は本部をインドへ移した。その後、ブラヴァツキー夫人は『シークレット・ドクトリン』『神智学の鍵』など神智学に関する膨大な書を著し、1891年5月、インフルエンザのため、没した。59歳だった。

彼女の死後、ルドルフ・シュタイナーが神智学協会の会員となり、ドイツ支部を設立する。その後、神智学協会の幹部が、インド人少年、クリシュナムルティを、キリストの再来として担ぎ上げ、クリシュナムルティを教師と仰ぐ「星の教団」を結成する。この動きに反発したシュタイナーは協会を脱退し、彼は人智学協会を創設し、別の道を歩みはじめる。一方、クリシュナムルティは、心理は集団で追求するものではないと、星の教団の解散を宣言する。

自分は、ブラヴァツキー夫人の書いたものを、一、二度、読もうと試みたことがあるけれど、挫折して、いまだちゃんと読めていない。キリスト教やヒンドゥー教など、いろいろな宗教と、その宗教から異端視されたオカルトの考えを集めて煮込んだシチューのような神秘哲学、というぼんやりした印象があるだけである。
オカルトとは、もともとラテン語で「隠されたもの」という意味のことばで、科学的に明らかにできない分野の問題を研究しているものである。
自分は、歴史学は科学的でありたいと考える者だけれど、科学の方法論だけではこの宇宙の神秘はとらえきれないだろうと見通しを立てている者でもある。

ブラヴァツキー夫人の著作について、自分は『シークレット・ドクトリン』みたいな理論書から入ろうとしたのがまちがいで、『インド幻想紀行』みたいな紀行文から入るべきだったかもしれない。またトライしてみたいと思う。
(2013年8月12日)



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