3月14日は、円周率のゴロ合わせから「数学の日」だが、独国生まれの物理学者、アルベルト・アインシュタインの誕生日でもある。
自分が子どものころ、「頭がいい」と聞くと、アインシュタインの名が真っ先に浮かんだ。
大人になってからは、「頭がいい」とはどういうことかわからなくなってしまったが、それでも、自分がアインシュタインより頭がいいとは、夢にも思わない。
現代でもなお、
「自分はアインシュタインより頭がいい」
と正気で言える人は、おそらくいないのではないか、と思う。

アルベルト・アインシュタインは、1879年、ドイツ南部の町、ウルムで生まれた。アインシュタイン(「ひとつの石」の意)の名でも明らかなように、ユダヤ人で、父親はセールスマン、技術者だった。
アイシュタインは5歳ごろまでほとんどしゃべらない子どもだった。一説に、彼はディスレクシア(難読症、読字障害)だったと言われる。ダ・ヴィンチやトマス・エジソン、ジョン・レノンなども同じ障害を抱えていたとされる。
話しはじめは遅かったが、学業成績はよく、とくに数学系が秀でていた。
21歳でチューリッヒ連邦工科大学を卒業したアインシュタインは、保険外交員や家庭教師のアルバイトをして暮らした。
翌年、スイス国籍を取得し、彼はスイスの特許庁に勤める役人になった。
そして「奇跡の年」と呼ばれる1905年がやってくる。
26歳のこの年、アイシュタインは、「特殊相対性理論」「光量子仮説」「ブラウン運動の理論」「特殊相対性理論」に関連する5つの重要な論文を立て続けに発表した。
「特殊相対性理論」はもともと博士号をとるための博士論文として書かれたものだったが、むずかしすぎて受け入れられず、仕方なくアインシュタインはべつの論文を用意したという。彼の「相対性理論」が発表された当時、これを理解できる人が世界にいく人いたか。
31歳の年にプラハ大学教授、33歳の年に母校、チューリッヒ連邦工科大学の教授に就任。
37歳のとき、一般相対性理論を発表。
彼の物理学説に理解を示す学者がしだいに増え、国際的名声が高まってきた47歳のとき、アインシュタインは来日している。日本へ向かうその船上で、彼はノーベル物理学賞の受賞の報せを受けとった。はたして、来日したこの天才学者を迎える日本人の熱狂ぶりはすさまじく、アインシュタインの日本での一般講演の切符は、オペラの最上席なみの値段だったにもかかわらず、人々はこぞって買い求め、のべ約1万4000人の日本人が彼の講演に聞き入ったという。
その後、ナチス・ドイツがユダヤ人を迫害したため、アインシュタインはヨーロッパを脱出し、米国に帰化した。
アインシュタインは、第二次大戦がはじまると、米国大統領への、原子力の軍事兵器への利用をうながす科学者たち連名の手紙に署名した。が、ヒロシマ、ナガサキの原爆投下に衝撃を受け、戦後は、一転して核兵器の廃絶運動に力を注いだ。
1955年4月、動脈瘤の破裂のため、ニュージャージー州プリンストンにて没。76歳だった。

アインシュタインはこう言っている。
「男性がきれいな女性と1時間いっしょにいたとする。それは1分くらいに感じられるだろう。しかし、彼を熱いストーブの上に1分間すわらせてみたまえ。それは1時間よりもっと長く感じられるだろう。これが相対性である」
(When a man sits with pretty girl for an hour, it seems like a minute. But let him sit on a hot stove for a minute, and it's longer than any hour. That's relativity.)

生きていることに疲れ果てることが、自分にはときどきある。いや、しょっちゅうかもしれない。疲れやすい人間なのだ。
そんなとき、自分を勇気づけてくれる方程式が、ここにある。アインシュタインが書いた質量とエネルギーの関係式で、以下のごとくである。
「E=mc²」
E はエネルギー、m は質量、そして、c は高速をあらわしている。
どういうことかというと、手にのるほどの軽い、小さな物体でも、それのもっている核エネルギーをすべて燃やすことができたなら、その重さに、高速の2乗を掛け合わせたのに相当する莫大なエネルギーを、生みだすことができる、という意味である。
たとえば、手にのせた、ひとかたまりの石炭のかけらのもつすべてのエネルギーを燃やしたら、米国全土で消費する何カ月かぶんの電力がすべてまかなえるだけのエネルギーが得られる、ということである。
「もう、だめかな」
落ち込んだとき、自分はこの方程式を思いだす。そして、自分も、このからだがもっている全エネルギーを燃やしつくしたら、とんでもないことがしでかせるはずであることを、思いだす。そうして、もうすこし前に歩いてみようと考える。だって、まだ自分の体重に高速の2乗を掛け合わせただけの仕事を、自分はまだしていないだろう、と。
(2013年3月14日)

著書
『新入社員マナー常識』
メモ、電話、メールの書き方から、社内恋愛、退職の手順まで、新入社員の常識を、具体的な事例エピソードを交えて解説。

『コミュニティー 世界の共同生活体』
ドキュメント。ツイン・オークス、ガナスなど、世界各国にある共同生活体「コミュニティー」を具体的に説明、紹介。

『1月生まれについて』
三島由紀夫、ビートたけしなど、1月に誕生した31人の人物評論。ブログの元となったオリジナル原稿版。1月生まれの教科書。

『12月生まれについて』
ゴダール、ディズニー、ハイネなど、12月誕生の31人の人物評論。ブログの元のオリジナル原稿収録。12月生まれの取扱説明書。

『ポエジー劇場 子犬のころ』
カラー絵本。かつて子犬だったころ、彼は、ひとりの女の子と知り合って……。愛と救済の物語。

『ポエジー劇場 子犬のころ2』
カラー絵本。かつて子犬だったころ、彼は泣いているリスに出会って……。友情と冒険の物語。