6月25日は、建築家アントニ・ガウディが生まれた日(1852年)だが、漫画家、本宮ひろ志の誕生日でもある。「男一匹ガキ大将」「俺の空」「サラリーマン金太郎」の作者である。
本宮ひろ志(本名、本宮博)は、1947年、千葉県千葉市で生まれた。父親は縫製会社を経営していて、若い女性従業員が何人か家に住みこんでいたという。博は、酒飲みですぐ暴力をふるう乱暴な父親と、活動熱心な創価学会員の母親のもとで育った。
中学を出た博は、父親の横暴から逃れるため、少年航空自衛隊に合格、入隊したが、上官の命令がすべての規律にがまんできず、1年2カ月たったとき、
「マンガ家になります」
と宣言して除隊、実家へもどった。(本宮ひろ志『天然まんが家』集英社文庫)
それから、家で漫画を描いていた後、自動車部品工場で住みこみで働いたり、金属加工会社に勤めたり、あるいは志を同じくする仲間たちを頼ったりしながら、漫画家を目指した。漫画雑誌の新人賞に募集し、出版社への持ち込みを繰り返した末、21歳のころ、当時隔週雑誌だった「少年ジャンプ」に読み切り漫画がついに採用された。
その後、『男一匹ガキ大将』が同誌に連載され、「少年ジャンプ」は週刊化され、『男一匹ガキ大将』はテレビ・アニメ化されるにいたって、爆発的大ヒット作品となった。
連載がはじまった当初は同誌のなかでは、永井豪の『ハレンチ学園』が圧倒的な人気を誇っていたが、後に『男一匹ガキ大将』がそれを追い抜き、断然の人気を得るにいたり、その他の連載漫画と並んで、「週刊少年ジャンプ」の黄金時代を作り出した。「ジャンプ」は創刊時の10万部からぐんぐん部数を伸ばし、最盛期には650万部以上を刷る怪物雑誌となった。
その後も、『硬派銀次郎』『俺の空』『天地を喰らう』『サラリーマン金太郎』など、大ヒット・シリーズを放ちつづけている漫画界の巨匠である。
彼の出世作『男一匹ガキ大将』は、主人公の戸川万吉が、けんかに明け暮れながら成長していく物語で、全編暴力描写の連続だけれど、あっけらかんとした明るさがあった。現代のいじめのような陰湿な雰囲気は皆無だった。そしてなにより、ほとんどすべての登場人物に「男気」があった。
本宮ひろ志は、「ゴルゴ13」のさいとうたかをと同様、漫画製作をアシスタントとの分業体制でおこなっている。とくに、本宮が女流漫画家、もりたじゅんと結婚した後は、作品中の女性キャラクターをもりたじゅんが描いていて、本宮が28歳のとき連載がはじまった「俺の空」の成功の秘訣は内助の功であり、本宮夫妻のチームワークの勝利である。
本宮ひろ志は、こう言っている。
「子供にとって親なんてのはな、いい親だろうと悪い親だろうと、しょせんは乗り越えていくだけの存在よ」
「右へ行ったら右、左へ行ったら左で、力一杯やるしかねぇんだけどな。分岐点を振り返って、自分の失敗を悔やんでいたら、やっぱり負け犬だぞ」(本宮ひろ志『天然まんが家』集英社文庫)
(2025年6月25日)
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