6月24日は、『悪魔の辞典』を書いた作家アンブローズ・ビアスが生まれた日(1842年)だが、英国のギタリスト、ジェフ・ベックの誕生日でもある。

ジェフ・ベックこと、ジェフリー・アーノルド・ベックは、1944年に英国ロンドンのウォリントンで生まれた。6歳のとき、ジェフはラジオから流れてくる、レス・ポールが弾くエレキギターの音を聞いて、母親に尋ねた。
「これはなに?」
「エレキギターっていうくだらないものよ」
すると、ジェフはこう言ったという。
「これは、ぼくのためのものだ」
10歳で教会の合唱隊に入っていたベックは、やがて、葉巻の箱をボディにして弦を張り、ギターを自作しては弾くようになり、見るに見かねた母親に、ついに本物のエレキギターを買ってもらった。
16歳でウィンブルドン芸術カレッジに入学したベックは、学校の仲間とバンドを組み、地元のクラブで演奏するようになった。
18歳のころ、姉を通じて、同い歳のギター少年ジミー・ペイジと知り合い、意気投合した。
カレッジを出て、塗装・内装作業員、ゴルフコースの作業員、自動車塗装員などをした後、19歳のとき、本格的にバンドのリードギタリストとして活動をはじめ、レコード録音のセッションに参加するようになった。
20歳のとき、ヤードバーズというバンドに加入した。これは、以前そのバンドのギタリストだったエリック・クラプトンが脱退したため、ベックがその後釜として入ったもので、
その後、彼はヤードバーズや、ジェフ・ベック・グループのリードギタリスト、あるいはソロのギタリストとして録音、ライブ活動を続け、様々なアーティストとのセッションに参加し、ロック・ミュージック界最高のギタリストのひとりとして、広く尊敬を集める存在となった。英国内の複数の芸術大学から、名誉博士の称号を受けた後、2023年1月、細菌性髄膜炎のためロンドンで没した。78歳だった。

アルバムに「ブロウ・バイ・ブロウ」「ゼア・アンド・バック」「ギター・ショップ」「ジェフ」「エモーション・アンド・コモーション」などがある。
「孤高のギタリスト」ジェフ・ベックのストイックなかっこよさは、独特である。「ワイアード」など、数えきれない回数聴いた。

ジェフ・ベックには、つねに前進しようとする姿勢があった。たしか1980年代だと思うが、すでにギタリストとして神格化されていた彼が、30代後半にいたりそれまでピックを使って弾いていたのを急に指で弾きはじめた。その理由を彼はこう語っていた。
「五本の指を使うことで、ギター演奏の可能性がさらに広がると思うから」

ジェフ・ベックはクルマいじりが大好きで、いつも爪が油汚れで真っ黒だったそうだ。世界的なロックスターの爪が油汚れでまっ黒。すてきな人だった。
(2025年6月24日)


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