ジュゼッペ・タルティーニは、1692年、ヴェネツィア共和国(現在はスロベニア領)のピランで生まれた。彼ははじめ僧侶になる勉強をしていたが、後にヴァイオリン演奏家の道に進んだ。剣の名人でもあったという。
20代前半のころ、タルティーニは、フィレンツェ生まれのヴァイオリンの名手、フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニの演奏をはじめて聴き、そのみごとさに圧倒され、また、自分の技量のなさを恥じた。彼はそれからしばらくのあいだ、公衆の面前から姿を消し、閉じこもって練習に励んだ。そして、以前より太い弦を、長い弓で弾く、みごとな技術を身につけて再登場した。ヴァイオリンの名手となったタルティーニは、29歳のころ、パドヴァのイル・サント礼拝堂付きの指揮者となり、以後、長らくその職にいて作曲をし、音楽理論についての論文を書いた。
34歳からヴァイオリン学校を開校すると、ヨーロッパじゅうから生徒が詰めかけた。
多くのヴァイオリン協奏曲やヴァイオリンソナタを書いた後、1770年2月、パドヴァで没した。77歳だった。
タルティーニが友人に書いた手紙によると、50代のころ、タルティーニが夜、ベッドで寝ているとき、こんな夢を見た。
彼は悪魔と契約し、悪魔は彼の召使となり、彼のどんな願いをもかなえてくれるのだった。夢のなか、彼は悪魔にヴァイオリンを手渡してみた。悪魔がどんな美しい音を出すのか興味があった。ヴァイオリンを受けとった悪魔は、それを弾きだした。巧みな技量、知性のあふれた魅力的な演奏に、タルティーニは圧倒された。
タルティーニは息をぜいぜいさせながら目覚めた。
すぐにヴァイオリンを手にとり、いま夢のなかで聴いたフレーズの小片なりとも再現できないかと弾いてみたが、だめだった。
せめて、あの演奏に近いものを、と作曲したのが、ヴァイオリン・ソナタ ト短調で、終楽章は「悪魔のトリル」と呼ばれる。
タルティーニは手紙のなかで書いている。
「でも、それはあの、自分を圧倒した曲には遠く及ばない。あれが自分のものにできるのなら、わたしのヴァイオリンをたたき壊して、わたしが二度と音楽ができなくなってもかまわないとさえ思うのに」
アンドルー・マンゼが弾く「悪魔のトリル」を聴いた。
ヴァイオリンが自分はよくわからないのだけれど、いかにも弾くのがむずかしそうな曲だということはわかった。さまざまな高度なヴァイオリン・テクニックがないと弾きこなせない難曲なのだそうだ。
ビートルズのポール・マッカートニーが、夢のなかで着想を得て「イエスタデイ」を書いたのは有名な話だけれど、すてきな悪魔が出てくる夢を、一度でいいから見てみたい。
(2016年4月8日)
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